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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

詩歌鑑賞:ブラウニング「岩陰に」

岩陰に/ロバアト・ブラウニング(翻訳:上田敏)

ああ、物古(ものふり)し鳶色(とびいろ)の「地(ち)」の微笑(ほほゑみ)の大(おほ)きやかに、
親しくもあるか、今朝(けさ)の秋、偃曝(ひなたぼこり)に其骨(そのほね)を
延(のば)し横(よこた)へ、膝節(ひざぶし)も、足も、つきいでて、漣(さざなみ)の
悦(よろこ)び勇み、小躍(こをどり)に越ゆるがまゝに浸(ひ)たりつゝ、
さて欹(そばた)つる耳もとの、さゞれの床(とこ)の海雲雀(うみひばり)、
和毛(にこげ)の胸の白妙(しろたへ)に囀(てん)ずる声のあはれなる。

この教こそ神(かん)ながら旧(ふる)き真(まこと)の道と知れ。
翁(おきな)びし「地(ち)」の知りて笑(ゑ)む世の試(こころみ)ぞかやうなる。
愛を捧げて価値(ねうち)あるものゝみをこそ愛しなば、
愛は完(まつた)き益にして、必らずや、身の利とならむ。
思(おもひ)の痛み、苦みに卑(いや)しきこゝろ清めたる
なれ自らを地に捧げ、酬(むくひ)は高き天(そら)に求めよ。
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