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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

国産大麻の復活を目指す動き

《ネット記事はいつの間にか消滅しているので備忘のためメモ》

■大麻栽培農家への過度な規制を緩和へ厚労省が都道府県に9月通達(東京新聞2021.08.26)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/126891

栽培の在り方が議論されている産業用大麻について、厚生労働省は合理的な指導を超えた規制を緩和するよう、9月中旬に都道府県へ通達を出すことを決めた。併せて、10月から厚労省と都道府県、栽培農家の3者協議の場を設ける。
国内の大麻栽培農家は、都道府県から免許を得て、幻覚成分の「テトラヒドロカンナビノール(THC)」の含有量が極めて低い品種を栽培し、神事用の繊維などを生産している。しかし、畑への監視カメラやフェンスの設置、見回りなどについての厳しい規制が問題になっている。
また、三重県では生産した神事用繊維を県外に販売できず、栃木県では後継者を育てるための研修を中止させられたケースもある。厚労省監視指導・麻薬対策課の田中徹課長は「過去には監視カメラのデータを5年分保存させるケースもあった。(薬物大麻の解禁論者に)誤ったメッセージを与えてはいけないが、明らかに行き過ぎた規制もある」と説明している。
規制緩和に向けた方針は23日、栃木、三重、岐阜県や北海道などの栽培農家の代表らが厚労省医薬・生活衛生局の鎌田光明局長を訪ねた際、田中課長が伝えた。農家側は、薬物としての大麻を「マリフアナ」などと表記して産業用大麻と区別することなどを求める要望書を提出した。

■伊勢ブランドで国産大麻復権を規制緩和で期待三重(朝日新聞2022.08.13)
https://www.asahi.com/articles/ASQ8D7KXKQ83ONFB011.html

神事用の大麻の生産をめぐり、県がこれまでの厳しい栽培規制を大幅に緩和し、生産拡大に道を開いた。神事や医療への国産大麻の活用を図る国の方針に沿った転換で、県内唯一の生産法人「伊勢麻」(南伊勢町)の関係者は「伊勢ブランドの大麻で、国産大麻の復権のきっかけになれば」と期待を込める。
伊勢神宮内宮から車で30分ほど行った山奥にある約60アールの大麻畑。7月初旬から、週末は県外からのボランティアの手を借りながら、高さ2メートルほどに育った大麻草の刈り入れが行われている。
収穫した大麻からは、乾燥や発酵などの作業を経て、茎の表皮で作る「精麻(せいま)」と芯部分の「麻幹(おがら)」ができる。精麻は神事で広く使われ、奈良晒(ざらし)などの高級織物や大相撲の横綱の綱などにも使用される。麻幹は合掌造り集落・白川郷(岐阜県)などでかやぶき屋根の下地に使われる。
伝統ある国産大麻だが、戦後は衰退の一途をたどり、厚生労働省によると、全国の栽培面積は最大だった70年ほど前の約5千ヘクタールから2020年は約7ヘクタールにまで減った。
株式会社「伊勢麻」は、国産大麻の衰退を伊勢ブランドの麻で食い止めようと、地元有志が16年に起業した。生産するのは「無毒大麻」と呼ばれる幻覚成分がほとんどない品種「とちぎしろ」だが、栽培や出荷はこれまで県から厳しく規制されてきた。
畑は人目につかない非公開の場所に限られ、高さ2メートル以上の柵と監視カメラの設置を義務づけられたほか、栽培に携わる人は中毒者ではないことを証明する医師の診断書が必要だった。出荷先も県内の神社のみに限られてきた。
伊勢麻の麻職人の谷川原健さん(41)は「診断書が必要と言われ、息子らに収穫を手伝ってもらうこともできず、柵やカメラはまるで栽培が犯罪行為であるかのようだった。悔しい思いをしてきた」という。
そもそも谷川原さんは、県から助成金を得て、16年までの2年間、栃木県の麻農家で栽培と加工技術を学んだ。しかし厳しい規制により、これまで大麻生産で収益を上げるのは難しく、「はしごを外された思いだった」と話す。
大麻の栽培規制をめぐり、潮目が変わったのは昨年9月。コロナ禍で神事や祭りが中止となる中で、厚労省が「国産大麻繊維を使用する伝統文化の存続、栽培技術の継承などが課題になっている」として、栽培や出荷の規制を緩めるよう各都道府県に通知した。さらに今年3月、柵や防犯カメラを合理的に運用するよう重ねて求めた。県薬務課の担当者は「これまでの国策からの大転換と受け止めた」と驚きをもって振り返る。
通知を受け、県は昨冬、余った精麻を県外の神社などに出荷することを許可する方針を伊勢麻に伝えた。さらに7月15日付で大麻栽培の指導要領を改定し、県内で採取された種子から育てた大麻については、栽培場所を原則自由とし、柵や防犯カメラの設置や診断書提出の義務、外部からの研修・見学の受け入れといった規制を除外した。
厚労省は、来年の通常国会にも大麻取締法などの改正案を提出し、乱用への「使用罪」を設けると共に、神事など伝統的な利用や大麻成分の医薬品への活用を目指す考えだ。一見勝之県知事は7月の会見で「神事用ということで伊勢はブランドでもあり、無用な規制をしていく必要はないと考える」と述べた。
有識者らでつくる「伊勢麻振興協会」理事の新田均・皇学館大教授(神道学)は「伊勢麻が国産大麻の安全性への誤解を解き、日本人の衣食住を支えてきた作物の復権につながれば。今後、医薬品やプラスチックの代替品などとして用途が広がれば、南勢地域の有力な作物になり得る」と期待を込める。

■神事用大麻の栽培を三重大が研究 戦後国内初(中日新聞2022.11.25)
https://www.chunichi.co.jp/article/588557

三重大(津市)は24日、神事・産業用大麻の栽培を農学として研究するための専門チームを設置したと発表した。同大の担当者によると、農学分野での大麻研究機関の設立は戦後、国内初だという。
大麻は、日本では古来、「麻」として神事などに使われてきた。同大は、伊勢神宮がある県の大学として、研究に取り組むことを決め、6月、研究者用の大麻取扱者免許を取得した。
同大で取り扱うのは、向精神作用のある麻薬成分含有量が極めて低い大麻で、麻薬としての使用はできない。今後は、国内各地の神事・産業用大麻の種を集め、安定して供給できるように品種改良などを進める。
研究の中心を担う同大大学院地域イノベーション学研究科・生物資源学研究科の諏訪部圭太教授は、神事・伝統のための大麻産業を支えるのが目的だと強調しつつも「将来的には農学に限定することなく、医学、工学などの分野へも発展させていきたい」と話した。
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2023年1月こぼれ話:中国ゼロコロナ解除と渡航ビザのヒト悶着

将来なにかに役立ちそうな、こぼれ話:元ネット記事の消滅に備えて記録保存
「政治はアートなり、サイエンスにあらず」―陸奥宗光(外相)
※外交はアートなり、とも言えそう

「外交交渉を、やれ自主外交、やれ協調外交と区別するほど無意味なことはない。どの国の外交だって自主的でないものはない。だが他国と交渉するかぎり他国との意見の一致を得ようと努力しない外交もない。その点どの国の外交だって協調的ならざるを得ない」幣原喜重郎(首相)

「諸国民、とくに共和制をとる諸国民、または、大衆がその国の運命に影響を与え、あるいはそれを左右している諸国民の場合においては、彼らは利益によってよりも激情によって格段に甚だしく昂奮する」パーマストン子爵(英首相)


中国“報復解除”の理由…ビザ発給「ボタンの掛け違い」と日本の「ファインプレー」(ANN、2023.02.01)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000285652.html

2022年12月にゼロコロナ政策を撤回した中国で、1〜2カ月の間に起きた新型コロナのすさまじい感染爆発。感染した人の数は、14億人の総人口のうち、9億人とも11億人とも言われている。 2023年1月25日までの全世界の累計感染者数が6億6000万人強であることを考えると、3年間の全感染者数を優に超える人たちが、一気に感染したことになる。
懸念されるのが、変異株の発生で、当然各国は水際対策の強化に乗り出したが、中国当局は「差別的だ」と猛反発。
そこで起きたのが、日本と中国の、ビザをめぐる「せめぎ合い」だ。
だが、実はそれは、勘違いから始まり、日本側の“あるメッセージ”がきっかけで、何もなかったかのように修正されたと思われるのだ。
■口火を切ったのは日本 駐在の日本人に影響も
最初に口火を切ったのは日本だった。12月30日から、中国からの渡航者に対して抗原検査の実施を発表、陽性の場合は原則7日間の施設隔離とした。
この時点までに中国国内では、火葬場に行列ができるなど、コロナによる死者が急増していた。しかし、中国当局の発表する死者数はいつまでも1桁台。情報提供の姿勢に懸念が出るのは当然で、日本が自前で科学的な予防措置を取るのは合理的だといえた。
しかし皮肉にも、この措置で一番影響を受けたのは、正月の一時帰国を予定していた中国駐在の日本人だった。中国での隔離がなくなったと思ったら、母国で隔離されてしまうかもしれない不条理。日本に自宅があっても、原則は施設隔離という点も、不興を買った。隔離の影響で、中学受験ができなかった子供の話は、新聞でも大きく取り上げられた。
さらに、日本は1月8日から、検査のレベルを、PCR検査もしくは抗原定量検査に引き上げた。この措置はさらなる反発を呼び、今度は中国が「報復措置」に踏み切ることとなる。
■韓国から始まった報復 日本にはさらに厳しい「全面停止」
1月10日、まず報復措置が発表されたのは韓国に対してだった。韓国は日本と同じ到着時のPCR検査に加え、中国人に対する短期ビザの発給停止に踏み込んでいた。
そこで中国も、韓国人に対する短期ビザの発給を、同じく停止した。この時点までに、中国外務省は「差別的な」入国制限を行った国には「相応の措置」を取ると示唆していた。
私は日本が、中国人へのビザを停めていない以上、報復措置があるとしても、ビザの発給停止はないだろうと踏んでいた。しかし、その予想はあっさり裏切られた。
同じ日に発表された日本への報復措置は、長期も短期も含めた全ての「一般ビザの発給停止」という、韓国よりもさらに厳しい内容だったのだ。
「一般ビザ発給停止」の発表を受けて、北京駐在の日本人には、再びショックの波が押し寄せた。家族が呼べなくなってしまう…後任が来られなくってしまう…様々な不安の声が飛び交った。
なぜ、中国は日本に対して、ここまで厳しい措置を取ったのか、中国側の色々な人に聞いたが、はっきりした理由はわからなかった。しかし多くの人が誤解して口にしたのは「だって、日本だってビザを止めているでしょう?」という答えだった。繰り返すが日本は「ビザ発給」は停止していない。
もしかしたら、どこかでボタンを掛け違えたまま、不要な「せめぎ合い」をしているのではないか。そんな思いが確信に変わったのは、この言葉を耳にした時だ。
「中国のビザ、出ていますよ」
■非公式に出ていたビザ 振り上げた拳の行方
中国政府による「ビザ発給停止」の発表から数日たって、「実はビザが出ている」という話が、色々な筋から聞こえてきたのだ。商用ビザ、留学ビザ、就労ビザ…様々なビザが、政府の招聘状を用意するなど、一定の条件を満たせば、日本のビザセンターや領事館で通常通り申請できるという。ネット予約はできないが、窓口に行けば1月30日の発給再開の前でも受け付けてもらえたというから驚きだ。
中国経済が減速する中、日本との関係を悪化させたくないというのが中国政府の「本音」だろう。しかし、拳を大きく振り上げてしまった以上、「建前」としてはビザ停止を貫くしかなく、非公式に苦しい運用をしているのではないか?
そして、拳を大きく振り上げる原因となったのは「日本がビザを止めている」という、中国の人たちの誤解にあったのではないだろうか?
確かに現在、中国人に対する観光ビザの発行は、一部を除いて止まっている。しかしそれは、日本政府が止めているのではなく、中国側の文化旅行部が日本への観光旅行を認めていないため、代理店による申請ができない状態が続いているためだ。
そのあたりを誤解している中国の人たちの不満に応えるため「勇み足」で、中国政府が、全面的な「一般ビザの発給停止」に踏み切ったのではないかと、次第に思えるようになってきた。
■「ビザ再開」呼び水となった1行の通知
「ボタンの掛け違い」を感じていたのは、北京の日本大使館も同じだった。1月20日、春節休みを前に、日本大使館は不思議な一行の通知を出した。
「日本大使館はコロナの影響でやむを得ずビザ業務を縮小していたが、コロナの状況が変わり、ビザ業務はすでに正常に回復している」
実はこの一文は、一時期縮小していたビザの窓口が、今は元通りに戻っていますよと通知しただけのもので、新しい内容は何もない。事実、1月4日には、日本側は縮小していた窓口を元に戻し、通常通りの来館が可能としていたのだ。
しかし、大事なのは「正常に回復」という文言にあった。
日中関係筋によると、この文言の狙いは2つ。1つは、「日本はちゃんとビザを出していますよ」と、誤解している中国の人たちにアピールすること。そしてもう1つは、日本側から先にアクションを起こし、中国側が、振り上げた拳を下ろしやすくすることだ。
そして、その狙いは的中した。1月30日、中国側が「一般ビザの発給再開」を発表したのだ。再開の理由を問われた中国外務省の報道官は、「1月20日の日本大使館の通知」を挙げた。新しい内容は何もない通知が、発給再開への呼び水となったのだ。メンツを重視する中国側の心理を読んだ、日本側のファインプレーと言ってもいいだろう。
こうして、1カ月近くに及んだ「せめぎ合い」は、ひとまず幕を降ろした。中国の感染状況がこのまま落ち着いていけば、航空便は徐々に増便され、人々の往来も少しずつ回復していくだろう。コロナで止まっていた交流が再開し、改めてお互いを知る機会が増えることで、日中関係の基礎がしっかりと固まっていくことを期待したい。

検察の捜査指揮権66年で廃止 警察に権限一部委譲=韓国国会で関連法可決2020.01.13 21:55
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20200113004600882

韓国国会は13日の本会議で、刑事訴訟法改正案と検察庁法改正案を賛成多数で可決した。検察の権限の一部を警察に委譲する両法案が可決されたことで、警察は第1次捜査権と捜査の終結権が付与され、捜査における裁量権が大幅に増えた一方、検察は捜査指揮権の廃止により権限が縮小される。検察の捜査指揮権は1954年に刑事訴訟法が制定されてから66年で廃止となる。
従来の刑事訴訟法では検事を捜査権の主体とし、司法警察官は検事の指揮を受ける補助者と規定されていた。同法の改正で検察と警察の関係はこれまでの「指揮」から「協力」に変わる。
また、警察をもう一つの捜査主体と規定し、警察に第1次捜査権と捜査の終結権を付与する。警察は嫌疑が認められる事件のみを検察に送致し、嫌疑が認められないと判断した事件は終結できるようになる。
事実上、制限のなかった検察の直接捜査範囲も制限される。検察が直接捜査する事件は、腐敗犯罪、経済犯罪、公職者犯罪、選挙犯罪など大統領令が定める重要犯罪などに限定される。
政治家・政府高官らの不正を捜査する「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」設置法案に続き今回2法案が可決されたことで、文在寅(ムン・ジェイン)政権が目指す検察改革に関する立法は完了した。

(コメント)

「警察に第1次捜査権と捜査の終結権を付与する。警察は嫌疑が認められる事件のみを検察に送致し、嫌疑が認められないと判断した事件は終結できる」

政治家や自治体の首長が行政指導レベルで捜査や裁判ができる=自分に都合の悪いことは捜査を止めさせたり、逆に敵を告訴したりすることが可能

ナチス的国家の継承者と言われても致し方ないレベル。歴史上の中華帝国の類の方が、司法機関についてはもうちょっとマシだったかも知れないという指摘あり

半導体産業と消費電力・考、2022年

■発電設備と発電電力量(電気事業連合会)
https://www.fepc.or.jp/smp/nuclear/state/setsubi/index.html

2020年データ:年間発電力量10,008億kWh
発電方法:原子力4%、石油等6%、石炭31%、天然ガス39%、水力8%、地熱及び新エネルギー12%

なお2010年から2013年へかけて、原子力発電の割合は急低下(25%から1%へ、翌年2014年に0%になった)。2011年の東日本大震災の影響で、安全を取って、全国の原発が運転停止したため(福島原発の事故)。

半導体工場が建設された九州エリアは、電源構成がバランス良い状態。ロシア・ウクライナ戦争による燃料費高騰の影響を受けにくくなっているため、半導体産業にとっては、安定した電力事情が望める状態。ここに台湾の半導体企業TSMCの工場が誘致され、九州の経済活動を押し上げようとしている。

(電源構成の資料・九州電力、2021年データ)https://www.kyuden.co.jp/rate_adj_power_composition_co2.html
原子力36%、火力36%(石炭21%+天然ガス15%)、石油等0.2%、FIT電気(うち太陽光12%)、再生可能エネルギー3%、水力2%、揚水2%、卸電力取引所6%、その他1%


■TSMCの最先端半導体製造に死角、途上国一国を上回る電力消費量(ブルームバーグ2022.08.26)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-08-26/RH73C8T0AFB401

EUV露光装置の消費電力、一世代前製品の10倍-環境に大きな負荷
自前の発電所建設なしでは半導体業界の電力需要満たせない事態も

世界最先端の半導体製造に用いられる機器は近代工学の奇跡と言える。極端紫外線(EUV)露光装置は人間の目では捉えられない非常に短い波長の光を用いてシリコンウエハーの表面に微細な回路パターンを焼き付ける。10万個の部品で構成され、価格は1億5000万ドル(約205億円)を超えるこの装置を製造しているのは世界でオランダのASMLホールディング1社のみだ。
EUV露光装置は、半導体の小型化・高性能化・省電力化の追求が製造プロセスを一段と複雑かつエネルギー集約的にしている状況も浮き彫りにする。同装置の定格消費電力は約1メガワットと、一世代前の装置の約10倍に増加した。最先端半導体製造でこれに代わる装置がないため、半導体業界は炭素排出削減を目指す世界的取り組みの大きな障害になる可能性がある。
EUV露光装置を最も多く導入しているのは半導体受託生産世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)だ。同装置を80台余り保有するTSMCは現在、台湾南部・台南市の新工場で回路線幅が3ナノ(ナノは10億分の1)メートルの「3ナノ品」用の新世代装置の導入を進めている。同社はこのプロジェクトに200億ドルを投じる計画。
EUV露光装置の運転には大量の電力を要することから、TSMCの電力消費は近く、人口2100万人のスリランカ全体の消費量を上回る見通しだ。2020年の同社のエネルギー消費量は台湾全体の約6%だったが、25年までに12.5%に拡大すると予想されている。
TSMCに加え、米メモリー製造大手マイクロン・テクノロジーも台湾西部の台中市の製造施設にEUV露光装置を少なくとも1台導入する計画。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、チャールズ・シュム氏によると、台湾の半導体受託製造(ファウンドリー)業界では向こう3年以内に全体の生産の4分の1がEUV露光装置を必要とするようになる見通し。
台湾中央大学の梁啟源教授(経営学)は半導体メーカーが自前の発電所を建設しない限り、台湾は電力を半導体業界に回す余裕がなくなるだろうと指摘。予想外の需要急増や供給面の混乱などで生じる電力不足を補う予備的発電能力の目安である運転予備力は当局が十分と見なす10%を年内に下回る可能性が高いと説明した。
半導体業界は台湾経済に不可欠なことから、電力不足が発生した場合は他の業界がより大きな打撃を受ける見通しだ。環境団体グリーンピースの気候・エネルギー分野キャンペーン担当者、トレーシー・チェン氏は「電力不足は必ず生じるだろう」とした上で、「TSMCは台湾のエネルギー供給の大半を消費し、他のセクターにしわ寄せが及ぶことになる」と指摘した。
TSMCの半導体製造が環境に及ぼす影響の大きさは、どのような電源を利用するかに左右される。ベルギーの研究機関IMECのサステナビリティ・プログラム責任者ラーシュオーケ・ラグナルソン氏は「半導体メーカーが電力消費量の極めて多い装置を稼働させているところでは再生可能エネルギーの活用が特に重要かつ急務になっている」と指摘した。
しかし台湾は化石燃料になお大きく依存している。7月公表の直近のエネルギー報告書によれば、21年末時点で再生エネは電力供給全体の6%にとどまった。これを受け、当局者は25年までの目標値を15%に引き下げた。16年に設定した当初の目標は20%だった。サムスン電子がある韓国もなお電力の60%強を石炭・天然ガスに頼っている。
一方、米インテルはアリゾナ、ニューメキシコ、オレゴンの各州の工場がグリーンエネルギーを活用できることも寄与して、21年には再生エネが消費電力の80%を占めた。ただ先端製造技術の利用により総消費電力は大幅に増えている。
ASMLは現在、かつてなく強い需要に直面している。米政府は最先端ではない半導体の製造装置についても中国への販売をやめるよう圧力をかけているが、BIの若杉政寛シニアアナリストによると、そうした中でもASMLの23年売上高は約260億ドルと、30%強増加する見込みだ。同社のロジャー・ダッセン最高財務責任者(CFO)は今年4月、25年のEUV露光装置の出荷目標台数を当初の70台から90台に増やす可能性を検討していると明らかにした。
環境面でよりサステナブルな手法で半導体を製造する方法を見つけることは可能だとしても、半導体業界の拡大自体にブレーキをかけようとする動きはほとんど見られないのが現状だ。IMECのラグナルソン氏は「われわれが取り組まなければならない問題があまりにも多い上に、それを行うには時間もコストもかかる」としながらも、「半導体業界は急速なペースで伸びている。われわれが何もしなければ、問題はさらに悪化するだろう」と指摘した。

■「NILによる超微細半導体の省エネルギー加工技術」が「環境賞」を受賞(ITmedia、2022.05.10)
https://release.itmedia.co.jp/release/sj/2022/05/10/4c1fff59e889e7843526dc7aba622240.html

キヤノン株式会社
「NILによる超微細半導体の省エネルギー加工技術」が「環境賞」を受賞
最先端ロジック製造のパターン形成時における消費電力の大幅削減が可能
キヤノン株式会社(以下キヤノン)、大日本印刷株式会社(以下大日本印刷)、キオクシア株式会社(以下キオクシア)による「NIL(ナノインプリントリソグラフィ)による超微細半導体の省エネルギー加工技術」が、国立研究開発法人 国立環境研究所/日刊工業新聞社主催、環境省後援の「第49回 環境賞※1」で「優良賞」を受賞しました。
NIL技術を使用した半導体製造装置
「FPA-1200NZ2C」
キヤノン、大日本印刷、キオクシアは共同で、既存の半導体製造レベル(最小線幅15nm※2)のNILによるパターン形成に成功しています。これは、現在の最先端ロジック半導体製造レベル(5ナノノード※3)に相当します。NIL技術を半導体製造に適用することで、パターン形成時の消費電力を既存の最先端ロジック向け露光技術と比べて、約10分の1まで削減できます。
「環境賞」では、半導体製造時の消費電力削減に貢献し、今後のIoT社会の急速な拡大を支える技術として評価され、「優良賞」を受賞しました。
半導体露光装置は、半導体デバイスの高性能化に伴い、光源を短波長化することで微細化を達成する歴史が続いてきました。NILは、短波長化に代わる新たな技術として、さらなる微細化を目指しています。従来の露光技術が光で回路を焼き付けるのに対し、NILはパターンを刻み込んだマスク(型)をウエハー上に塗布された樹脂にスタンプのように押し付けて回路を形成します。光学系という介在物がないため、マスク上の微細な回路パターンを忠実にウエハー上に再現できます。複雑な2次元、3次元のパターンを1回のインプリント※4で形成できることもNILの特長の1つです。
キヤノンはこの受賞を励みに、今後も豊かさと環境が両立する未来のため、技術革新で貢献していきます。
※1環境賞の詳細は、ホームページをご覧ください。
https://biz.nikkan.co.jp/sanken/kankyo/index.html
※21nm(ナノメートル)は、10億分の1メートル。
※3半導体製造プロセスの技術世代の呼び名。
※4ナノインプリントを用いたパターニング工程。NIL(ナノインプリントリソグラフィ)の詳細はこちらをご覧ください。
https://global.canon/ja/technology/frontier07.html
<ご参考>
キヤノンテクノロジーサイト
NIL(ナノインプリントリソグラフィ)についてわかりやすく説明しています。
https://global.canon/ja/technology/frontier07.html
キヤノン露光装置サイト
NIL(ナノインプリントリソグラフィ)を含めた露光装置の仕組みや性能をイラストや動画で分かりやすく説明しています。露光の仕組みをやさしく紹介するキッズ向けページも用意しています。
https://global.canon/ja/product/indtech/semicon/50th/