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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

色彩絵★テキスト系作品の女主人公

小説版『天球のアストラルシア―暁闇剣舞姫―』より

⇒公開URL《物語ノ傍流》より小説版・目次に飛べます。

★『小説家になろう』でも公開済(2017/8/25付,完結)=http://ncode.syosetu.com/n7707ec/

女主人公エメラルド隊士(後のリリフィーヌ)2017/10/22作成

竜人ゆえ耳の位置にあるのは「竜の角」。竜体に変身する途中で、角を生やし始めているところ。変身能力を持つ「亜人類」という設定です

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計都星に関する調査

◆出典◆『星の文化史事典』出雲晶子・編著(白水社2012)◆

計都(けいと)
インド神話に出てくる惑星神の一人で、彗星のこと、または日月蝕を起こす魔物である。密教の占星術に取り入れられ、九曜として羅睺(日蝕を起こす魔物の星)とともに、日月五惑星とともに惑星に加えられた。仏教の密教に取り入れられ、宿曜経の経典として日本に伝わった。インドではケイトゥと発音する。

計都(けいと)-コラム

計都は、辞典をひくと、インド神話の九惑星(ナヴァグラハ)の一つケートゥの密教における呼び名で、黄道(天球上の太陽の軌道)と白道(天球上の月の軌道)の二つの交点のうち降交点にある架空の惑星、または彗星のことであると書かれている。降交点と彗星ではかなり違うが、なぜこのようなことになったのだろうか。

六世紀インドの天文学者・占星術師のヴァラーハミヒラによるインド占星術書『ブリハット・サンヒター(大集成)』第十一章に「ケートゥの振る舞い」という項目がある。それによると、ケートゥは一種類の天体ではなく、天・中空・地に属する三種のケートゥがある。地上の動物や草木に火の色が見られるとそれが地のケートゥ、火のない方向に火の色が見られるのが中空のケートゥ、星宿にあるのが天のケートゥだという。ケートゥは1001種類あるという人もいれば、一つで形が変わるだけだという人もいる。

ケートゥは軌道計算などで出現を予測できないらしい。さまざまな形のケートゥが紹介され、1001種類のケートゥについて占いが述べられているが、ケートゥは基本的に尾をひくという。胴が短く、まっすぐで光沢があるケートゥが見えると豊作になる。それと正反対の形、特に二つか三つの冠(尾のことらしい)をもったケートゥは不吉である。丸く光線をもつケートゥは飢饉をもたらす。真珠の首飾りやジャスミンの花、オウムの色に似たケートゥもある。

金星の息子というケートゥは84種類、土星の息子は60種類、木星の息子は65種類、水星の息子は51種類、火星の息子は60種類。ラーフの息子というケートゥは33種類で太陽表面に見られる。西にあって冠(尾)の先端は南にあり北に動くにつれて長くなったケートゥ、北斗七星と北極星とアビジト宿に接触して引き返し空を半分進んで消えたケートゥ、同時に2個7日間見えたケートゥなど、彗星の見え方や動きを驚くほど忠実に描写している。インド天文学というと力学や暦が有名だが、観測もバッチリだったことがわかる。

ケートゥが星宿に現われた時の占いは物騒である。「バラニー宿にケートゥが現われるとキラータ国の王が死ぬ」とある。クリッティカー宿の場合はカリンガ国の王が、ムリガシラー宿の場合はウシーナラの王が、マガー宿の場合はアンガ国の王が、などと27宿いずれにケートゥがきた場合もどこかの王が死ぬという占いになっている。

インドのナヴァグラハ(九惑星)とは、日月五惑星とラーフ(密教の羅睺)とケートゥである。『ブリハット・サンヒター』では、ラーフは黄道と白道の交点にいて日月蝕を起こすとされる星で、巨大な竜の頭と尾を切断された姿としている。昇交点に頭が、降交点に尾があってその2つのラーフが日蝕、月蝕を起こすという。しかし同書は別に「月蝕においては、月は地球の影に入り、日蝕の時は太陽に入る」「ラーフは食の原因ではないと学問の真実が述べられた」とも記されている。

つまり、黄道白道の交点に浮かぶラーフという架空の星により日蝕、月蝕が起こされるわけではないということを、ヴァラーハミヒラらその時代のインド占星術師たちは知っていた。しかし科学的事実は事実として、それとは別に占星術の要素としてラーフを用いていたということは考えられる。

時代が後になるにつれ、次第にラーフは頭、つまり月軌道の交点のみになり、ケートゥは月の降交点(一部経典では月の軌道の遠地点)とする説が強くなっていった。ナヴァグラハでラーフと対になるものと考えられたからかも知れない。現在のインドや密教の占星術では、計都は月軌道の降交点ということで落ち着いている。さすがは魔星計都。「彗星」から「軌道の交点」という驚くべき変身をとげた。

古代インドの星宿メモ

◆出典◆『星の文化史事典』出雲晶子・編著(白水社2012)◆

★ブリハット・サンヒター

意味は「大集成」で、5世紀インドの占星術師・天文学者のヴァラーハミヒラによる、さまざまな占いを集めた書。ヴァラーハミヒラの一族はペルシア系でペルシア語文献に精通していたと言われる。内容は天体から気候、動植物、建物などの様子を何の前兆とするか、黄道12宮が地上の何に関連しているかなどで、天体については、日月五惑星、ラーフ、彗星、アガスティヤ(カノープス)、七仙人(北斗七星)の影響、星宿と地方の関連、惑星間と地上の戦争の関係、月と惑星が接近したときの占い、年と月の支配惑星について、惑星同士のアスペクトについて、月と星宿の関係について(ローヒニー、スヴァーティ、ウッタラ・シェーダーに月が来た場合)、朝焼けと夕焼け、太陽と月の暈、虹、幻日の現象、黄道12宮と星宿の対応、惑星と12位の関係についてなどである。

★ナクシャトラ

古代インドの27または28の黄道上にある星座。星宿。星宿は月が毎日留まる星座で、暦のための定点として月が動いていく白道(ほぼ黄道と同じ)上に並んでいる。月が天球を一周するのにかかる時間は約27.3日なので理論上は28宿・27宿どちらでもよく、タイッティリーヤ・サンヒターでは27宿、アタルヴァ・ヴェーダでは28宿となっている。

名前はアシュヴィニー、バラニー、クリッティカー、ローヒニー、ムリガシラー、アールドラー、プナルヴァス、プシャー、アーシュレーシャ、マガー、プールヴァ・パールグニー、ウッタラ・パールグニー、ハスタ、チトラー、スヴァーティ、ヴィシャーカー、アヌラーダー、ジェーシュター、ムーラ、プールヴァ・シェーダー、ウッタラ・シェーダー、(アビジト)、シュラヴァナ、ダニシュター、シャタビシャジュ、プールヴァ・バードラパダー、ウッタラ・バードラパダー、レーヴァティー。

27宿と28宿の違いはアビジトがあるか否かである。もともとのナクシャトラは黄道上から多少離れているものもあったが、数百年後にギリシア風の西洋占星術がインドに伝わり、その影響を受けてインド星宿は黄道上の帯のような部分を均等に27等分したものを指すようになった。それが仏教の僧が中国に持ち帰って漢訳される際、中国独自の28宿と対応して訳されたので、中国に伝わったものは28宿になっている。

ナクシャトラ占星術は27宿がそのまま一ヶ月の日に一定の規則で対応し、それぞれの宿の吉凶で占うもの(実際に月がいる星宿ではない)。ナクシャトラ占星術の原点はアタルヴァ・ヴェーダの拾遺(パリシシュタ)であるとされる。