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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

2019.04.27ホームページ更新

『シド・フィールドの脚本術』

脚本を書く前に考えることは、
(1)エンディング
(2)オープニング
(3)プロットポイントI
(4)プロットポイントII
――の4つで、しかもこの順番である。プロットポイントとは、ストーリーのアクションを加速させ別の方向へと行き先を変えるような事件、エピソード、出来事のことである。

随分と間が空いてしまいましたが、以下のページを更新しました。

★《特設セクション§物語ノ傍流》コーナー
http://mimoronoteikoku.tudura.com/astrolabe/x_uranote.html

▽目次ページを若干編集
▽コミック版『宿命の人 運命の人―雪白花風信―』完成(最終ページまで掲載&閲覧可)


《時事メモ》

【リュウグウ表面にクレーター確認 はやぶさ2、衝突実験に成功】

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は25日、探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウへ金属の衝突体をぶつける実験で、リュウグウ表面にクレーターができていることを確認したと発表した。はやぶさ2がリュウグウの高度1.7キロから観測した結果、直径10メートル以上にわたって穴のように地形がへこんで変形していることが分かった。小惑星へ人工的にクレーターを作ることに成功したのは世界初。
はやぶさ2は24日、高度20キロから降下を開始し、25日午前11時16分から約1時間半にわたり、高度1.7キロから衝突装置がぶつかったと考えられるリュウグウ表面の領域を観測した。その結果、計画で衝突体をぶつける予定だった地点から十数メートル程度離れた地点に、地形が大きくくぼみ、黒っぽく色が変化している場所があることが明らかになった。津田雄一・プロジェクトマネジャーは「まさに衝突装置で狙った地点に明らかな地形変化が確認された。衝突実験は大成功だ」と話した。
JAXAなどは事前にリュウグウのような小惑星に衝突装置をぶつけた場合にできるクレーターの大きさや形状を予測してきたが、実際は、予測の中で最も大きなサイズのクレーターが作れたとみられるという。事前のクレーター予測の研究に取り組んできた荒川政彦・神戸大教授は「7年間この日を待ちわびていた。想像以上に、はっきりとくっきりと立派な穴を確認することができ、人生最高の日だ」と話した。
はやぶさ2は今月5日、重さ約2キロの銅の球をリュウグウへ秒速2キロで撃ち込み、はやぶさ2から分離された小型カメラが衝突によって物質が飛び散る様子の撮影に成功していた。今年2月の着陸に続き、衝突実験もすべて計画通りに成功させた。今後、クレーターやその周辺への着陸を検討する。
小惑星表面は、太陽や宇宙線の影響によって、小惑星ができたころとは変質していると考えられる。表面を覆う物質の下には、影響を受けていない「生」の物質があるとみられ、はやぶさ2は衝突実験によって「生」の物質を露出させ、それを採取することによって、太陽系の初期の状況を解析することを目指している。
衝突実験は、約5キロもの爆薬を詰めた衝突装置をリュウグウの上空500メートルで分離し、タイマーによって40分後に爆発させ、その勢いで銅の球をリュウグウへぶつける。爆発などの破片にぶつからないようにするため、はやぶさ2は起爆までの間にリュウグウの陰へ隠れるという極めて高度な運用が求められた

【やはり宇宙は加速している。より正確なハッブル定数の数値が判明】

こちらの画像は、ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された輝線星雲「LHA 120-N11」(単に「N11」とも)の姿。N11は地球から16万2,000光年先の「大マゼラン雲」に存在します。
今からおよそ138億年前のビッグバンによって始まったとされるこの宇宙は、現在も膨張を続けていると見られており、膨張する速度は「ハッブル定数」という値で示されます。名前の由来は、遠方の天体が地球から遠ざかっていることを見出したアメリカ合衆国の天文学者エドウィン・ハッブル。ハッブル宇宙望遠鏡もまた、彼にちなんで命名されました。
今回、ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡を使ってハッブル定数の再計算を行いました。チームを率いるのは、宇宙の膨張速度が加速していることを発見した功績によって2011年にノーベル物理学賞を受賞したAdam Riess氏です。
今回の計算を行うために、大マゼラン雲のなかにある70個の「ケフェイド変光星」がハッブル宇宙望遠鏡によって観測されました。ケフェイド変光星は明るさが周期的に変化する恒星で、絶対等級(恒星本来の明るさ)が明るいほど恒星の明るさが変化する周期も長い、という特徴があります。
そのため、変光周期から求めた絶対等級と地球から見た実視等級(恒星の見かけの明るさ)を比較すれば、地球からの距離を導き出すことができます。ケフェイド変光星のなかには別の銀河にあっても明るさの変化を識別できるものがあるため、銀河間の距離を測定する際にもケフェイド変光星は利用されます。
今回の観測による再計算で、ハッブル定数は74.03km/s/Mpcと算出されました。これは「1メガパーセク(=326万光年)あたり毎秒74.03kmずつ膨張している」ことを意味します。1光年あたりに換算すれば毎秒およそ22mmとごくわずかですが、宇宙は膨張しているのです。
ところが、他の観測によって求められたハッブル定数は、今回の数値とは異なります。欧州宇宙機関が2013年まで運用していた天文衛星「プランク」の観測データをもとに計算されたハッブル定数は、67.4km/s/Mpcでした。
プランクの任務は初期の宇宙の名残である「宇宙マイクロ波背景放射(CMB:Cosmic Microwave Background)」を観測することでした。先に触れた約138億年という宇宙の年齢も、プランクの観測データをもとに算出されたものです。つまり、宇宙の初期の時代と現在に近い時代を比較すると、膨張速度がおよそ9パーセント速まっていることになるわけです。
膨張速度が加速していること自体はすでにRiess氏らによって発見されていましたが、その原因を探るためには、過去と現在における膨張速度の差をなるべく正確に求める必要があります。「ハッブル定数の謎に挑むことは、今後数十年の間で最も興奮する取り組みかもしれません」と語るRiess氏は、定数と同じ天文学者の名を冠したハッブル宇宙望遠鏡による観測を、今後も継続していくとしています。
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制作プロットのメモ「神無月」

第四部トキサヤ@第二章「神無月」プロット

日付は全てストーリー上の架空の旧暦のもの

■10/08■

豊前街道、熊本宿。カモさん一行、黒之瀬戸から引き返して来ている。宿泊。時雨の降る夜。

(伏線)「光連衆」胡蝶御前グループの神紋はアンク十字架に両翼を付けた形に似る。翼を付けている事から明らかに「天の神」のほうで、胡蝶御前の種族の神の欠片であるもの。聖麻の神の台座に乗っける予定のため聖麻の民の耳では神名を「ウアス・アレ・アウラ」(音韻変化で、ウアス・アレ・サクラ)と認識する。

(伏線)「金斑衆」のうち、欠き眉の豹ロキシルの派閥の神名「ケートゥ・オウル・パンテーラ」。神紋は無く、神との契約の証として、身体に直接に刺青を施す。計都星=豹尾神の神話に相乗りし、大銭屋と協力して雨竜島の上で復活を狙ったが、邪魔が入ったため中途半端な状態。

(伏線)「金斑衆」のうち、紫銅ロンギルの派閥の神名「セートゥ・オウル・パンテーラ」。聖麻の残党・鏡ノ中光と結託、資金的には不自由なし。呪術師ヨシミ(故人)をよく見て、その術を吸収している。シャクラ(サクラ)=セトと音韻変化している方。

■10/09■

朝、カモさん一行、熊本宿を発つ。街道を北上する。道々「三要素」の神学について少し話。

やがて松風の関に到達する。往路の時にカモさん一行への襲撃や怪異事件があった現場で、怪異な死に方をした死体が魔除けされたうえで埋まっている。確かに埋まっているかどうか、念のため確認。死体の頭部が豹頭に変形している。タスキの故郷を襲った山賊と同じ死体変形と判明。

■10/10■

かきかけ

*****

伝統行事メモ
3/2若狭お水送り→3/12奈良お水取り 神話伝説
・漁に夢中:冬フグ,カニ…/縄文系,海の民,龍蛇,竜宮
・地下水脈:波斯カレーズ連想/雑密-天竺-波斯~習合
・遠敷:丹,不老不死,水銀を連想/神仙
・御香水:月信仰,変若水を連想/常世,こもりく

十一面観音:三昧耶形は水瓶,十一面悔過

・興津*静岡県>興津島姫命*宗像三女神*タギリヒメ
・清見潟*清見関-きよみがせき
更級日記「関屋どもあまたありて海までくぎぬきしたり」※鎌倉時代~勢力図変わり関所の機能なくなる
・清水湊
初出:日本書紀、西暦663
戦国時代:武田~徳川
・興津-身延道-甲府相生80km

トゥキュディデスの罠・米中冷戦の記事メモ

◆「トゥキュディデスの罠」にかかった習近平
/2018.12.27記事(日経ビジネス)

将来の世界史の教科書は、2018年を「米中冷戦がはじまった年」と記述することになるでしょう。10月4日にトランプ政権の重鎮であるマイク・ペンス副大統領が、保守系外交シンクタンクのハドソン研究所で、中国に関する長時間のスピーチを行いました。
ペンスは19世紀以来の米中の友好の歴史を振り返ったあと、「改革開放」と称する中国の市場開放が、政治的自由、個人の人権の尊重、信教の自由に広がるだろうというアメリカの期待は裏切られたと語りました。
今は中国は不公正な貿易、米国企業が持つ知的財産権の侵害と軍事転用、南シナ海での際限なき軍拡、IT(情報技術)を駆使した検閲と監視システムの強化、チベットやウイグルでの少数民族弾圧、あらゆる宗教への政治介入、途上国への投資をてこにした軍事基地の建設、米国内の企業・大学・シンクタンク・マスメディアへの資金提供とプロパガンダ、米国の選挙への介入について実例を挙げてペンスは非難し、「トランプ大統領は引き下がらない。われわれの安全保障と経済のため、力強い態度を維持する」と明言したのです。

覇権国家と新興国との対立が大戦争をもたらす

古代ギリシアで陸軍国スパルタと海軍国アテネが約30年にわたって戦ったペロポネソス戦争。この戦争を記録したアテネの歴史家トゥキュディデスは戦争の要因について、新興国アテネが、旧覇権国家スパルタの地位を脅かしたことにある、と喝破しました。
米国の政治学者グレアム・アリソンは、このような覇権国家の交代が大戦争の要因になっているとして、「トゥキュディデスの罠」と名付けました。覇権国家イギリスに新興国ドイツが挑戦したのが第一次世界大戦、覇権国家アメリカに日本とドイツが挑戦したのが第二次世界大戦でした。
新旧両大国間で譲歩と妥協ができれば、この種の戦争を回避することができます。イギリスからアメリカへの覇権交代は、第一次世界大戦で疲弊したイギリスがワシントン会議で軍縮に応じた結果、平和的に実現しました。
第二次世界大戦後、東欧諸国と東アジアに勢力を拡大したソ連に対し、アメリカは圧倒的な核戦力でこれに対峙し(米ソ冷戦)、直接戦わずにソ連を崩壊へと導きました。

「トゥキュディデスの罠」にかかった帝国陸軍統制派

英・米はロシアの東アジア南下を防ぐため、防波堤としての大日本帝国を育てあげました。日本は日露戦争で英・米の期待に応え、英国は日英同盟、米国はポーツマス会議で日本をサポートしました。日本の戦時国債も、ロンドンとニューヨークで売りさばかれました。
日本は第一次世界大戦にも貢献して国際連盟の常任理事国になりました。しかし、その地位はあくまで東アジアの地域覇権国家であり、米・英に挑戦することは許されなかったのです。ワシントン海軍軍縮条約での米・英・日の戦艦保有率5:5:3はそのことを如実に示しています。日本の経済力を考えれば、この地位に満足すべきでした。
関東軍参謀・石原莞爾は、20世紀の後半に日米が太平洋の覇権を争って激突するという「世界最終戦論」を唱えました。米国との国力の差を縮めるために、満州を占領して工業化し、長期戦に耐えうる体制を確立しようとしました。満州事変(1931年)は、そのために起こしたのです。
しかし、二・二六事件(1936年)を機に日本陸軍の中枢を握った東條英機ら統制派は、石原のような遠大な構想も戦略も持ちえませんでした。補給も考えずに中国戦線を拡大し、日米関係を後戻りできないところまで悪化させ、準備不足のまま真珠湾を攻撃したあげく、4年で国を滅ぼしました。「トゥキュディデスの罠」にかかったのです。

習近平の中国は1930年代の日本と似てきた

中国も米国に育てられました。ペンス演説にもあるように、19世紀末に中国(清朝)が列強の勢力圏として分割されたとき、米国は常に中国の領土保全と門戸開放(自由貿易)を要求し、植民地化に反対してきました。大日本帝国が台頭すると一貫して中国の側に立ち、蒋介石政権を支援し続けました。第二次世界大戦後は、ソ連の脅威に対抗するため毛沢東の中国と手を結び(ニクソン訪中)、ばく大な対中投資を行なってきました。
中国は1970年代から太平洋進出を計画していました。2010年までに沖縄~フィリピン(第1列島線)から、2020年までに小笠原~グアム島(第2列島線)から米軍基地を撤収させ、中国海軍の内海にするというプランです。しかし鄧小平政権はこの野心を決して表に出さず、米中友好を演出してきました。「韜光養晦」(とうこうようかい)――能ある鷹は爪を隠す――戦術です。
ソ連崩壊(1991年)で「防波堤」としての中国の役割は終わりましたが、投資先として米国の金融資本を魅了し続けました。ばく大な対中投資は人民解放軍の軍備拡張に使われ、中国は米国本土を射程に収める核ミサイルを持つに至りました。
胡錦濤政権時代の2007年に訪中した米太平洋軍のキーティング司令官(当時)は、人民解放軍幹部から「太平洋を米中で二分しよう」と提案されたと証言しています。GDP(国内総生産)で日本を抜いて世界第2位となった中国。いまや習近平政権は、「米国恐るに足らず」と判断し、「韜光養晦」戦術をやめて公然と爪を研ぎ始めたのです。いまの中国は、1930年代の日本とよく似ています。
ともに核保有国である米中が、全面戦争になることはないでしょう。しかし核ミサイルが飛び交わなくても、サイバー空間における「真珠湾攻撃」はありえます。中国人民解放軍は1万人ともいわれる正規のサイバー部隊のほか、数百万人の民間人が「サイバー民兵」として軍に協力しており、米国の政府・軍・企業に対するサイバー攻撃はすでに日常化しています。もちろん日本も対象になっています。これに対して米軍のサイバー部隊は6000人、自衛隊のサイバー部隊は500人。安倍政権が防衛大綱を見直し、ようやくこれを見直そうという、お話にならないレベルです。

中国が「歴史に学ぶ」べきこと

中国人民解放軍とも繋がりの深い通信機器大手ファーウェイ(華為技術)の機器が、遠隔操作可能なマイクロチップを組み込んでいると報道され、トランプ政権は政府機関から同社の製品を排除する通達を出しました。英・豪・仏もこれに同調し、日本でも安倍政権が同社の製品を政府調達から排除しました。この問題の急展開も、米国がいかにサイバー戦争を警戒しているかの証(あかし)です。
米国はソ連に対して功を奏したような、長期的な「対中封じ込め」を行うでしょう。中国との貿易、対中投資は徐々に規制され、同盟国にも同調を求めてくるでしょう。トランプがはじめた「米中貿易戦争」はその始まりであり、これを単に米国の貿易赤字解消の手段と見るべきではありません。
習近平政権には、
(1)米国の軍門に下って臥薪嘗胆するか
(2)ソ連のように「封じ込め」に耐えながら徐々に衰退するか
(3)日本のように「真珠湾攻撃」に打って出て国を滅ぼすか
の3つの選択肢があります。
日本に対し、事あるごとに「歴史に学べ」と説教するのがお好きな中国の指導者たちが、まさか(2)・(3)の道を選ぶことはないであろうと私は期待します。(茂木誠)

◆中国の新興はトゥキュディデスの罠か?国際社会に差し迫る本当の脅威とは
/2018.06.08記事(JBPRESSより抜粋)

戦前の独英あるいは日米と現代の状況とを比較する際、決定的に異なる要素がある。当時は核兵器が存在しなかったのだ。核兵器が存在し、「相互確証破壊」(mutually assured destruction:通称MAD)が起きる潜在的可能性のある状況下では、国家間の全面戦争が起きるとは考えづらい(あくまで「理性的な」指導者を想定した場合だが)。
アリソン教授の事例研究もこの結論を裏付けるものだ。ヒロシマ以後の世界において、教授は2つの「トゥキュディデスの罠」を取り上げている。1つは、ソビエト連邦がアメリカ合衆国に対して世界の覇権を巡り挑戦した時代。もう片方は、統一ドイツが欧州最大の勢力となった1990年代だ。これら双方とも戦争には発展しなかった。これらは(アリソン教授の合計16の事例のうち)戦争が回避された4つのうちの2つだ(その他の2つは、15世紀末にポルトガルを追い越したスペインの例と、19世紀の初めにイギリスを追い越したアメリカだ)。
【結論:非対称性がより大きな難題を突きつける?】
このように、20世紀初頭から現代にかけては典型的な「トゥキュディデスの罠」との類似性よりも「違い」の方が際立っているといえよう。新興の中国と(相対的な)地位を落とすアメリカの対立が「hot war」に発展する可能性は低い。
実際のところ、「トゥキュディデスの罠」との違いが決定的なものとなるためには、指導者が理性的な判断をするという前提を置かなければならない。その点、中国の指導者は極めて理性的な戦略の持ち主といえる。私はアメリカの指導者に対しては中国の指導者ほどの信頼は置いていないが、彼は生涯、大統領であり続けるわけではない(習近平とは違い)。長期的には、アメリカの戦略も理性的なものになっていくだろうと私は考えている。
差し迫っている脅威は「トゥキュディデスの罠」によるものではない。核兵器が比較的小規模な国家、あるいは国家以外の組織によって保有されることによる危機だ。その非理性的な指導者たちは、自暴自棄や何らかの誤解で戦争への階段を上るかもしれないのである。核武装した北朝鮮の金正恩がまっさきに想起されるが、それが、同様に予想がつかないドナルド・トランプというリーダーと対峙しているのである。
米朝両国が置かれている状況を考えれば、両者が満足できる妥協点を見出すことは容易ではないと、アナリストの多くは考えていた。だが、トランプ大統領は北朝鮮との会談を中止すると一度は表明したものの、交渉と非核化に向けた会談への準備が進んでいる。ただし、予想不可の流動的な状況の中、確かに言えることは、現実的な準備もなく、いたずらに期待を高め、直後に裏切るという結末ならば、一連の急速な和解が起きる以前よりも国際情勢の行く末がいっそう危ないということだ。

◆「トゥキュディデスの罠」中国、北の暴挙で米国対峙も夢に
/2017.09.21記事(SankeiBiz)

紀元前5世紀、古代ギリシャの歴史家トゥキュディデスは『戦史(ペロポネソス戦争の歴史)』を著した。ペロポネソス戦争とは当時の覇権国スパルタに対して勃興するアテネが挑戦した戦争である。これについて、米ハーバード大学のグレアム・アリソン教授(政治学)は「台頭する国家は自国の権利を強く意識し、より大きな影響力(利益)と敬意(名誉)を求めるようになる。チャレンジャーに直面した既存の大国は状況を恐れ、不安になり、守りを固める」とし、覇権国に対する勃興国の挑戦を「トゥキュディデスの罠」と呼び仮説を立てた。彼の近著によると過去500年間のうちでこうしたケースは16回あり、そのうち12回で大きな戦争になっているという。
その中で現代に近い事例では、ちょうど100年前に起きた第一次世界大戦がこれにあたる。当時はパクス・ブリタニカ(イギリスによる平和)と呼ばれた大英帝国の覇権に対して、急成長してきたドイツが挑戦し、国際社会に対して影響力と敬意を求めた。イギリスはこれを恐れ、戦争になったという見立てである。
この「トゥキュディデスの罠」が最近注目を浴びている。アメリカが覇権を握り、曲がりなりにもパクス・アメリカーナとして世界平和を実現しているところに、勃興国である中国がより大きな影響力(利益)と敬意(名誉)を求め始めたからである。習近平国家主席は「中国の夢」として「中華民族の偉大なる復興」を掲げて、これは中国共産党の統治理念ともなっているから、正面から堂々と「トゥキュディデスの罠」を設定し、チャレンジを宣言しているようなものだ。
しかし、過去の歴史もそうであったように現実は分かりやすいモデルに集約できるほど単純ではない。ここで北朝鮮というワイルドカードが登場してきた。もし中国がパクス・シニカ(中国による平和)の覇権国(地域覇権としてもだ)として、影響力と敬意を求めるのであれば、地域の平和を保障しなければならない。
その際には、今まで衛星国のように扱ってきた北朝鮮が今では核保有国である。今の状況が続けば、アメリカから見た以上に中国にとって目障りな国になるはずだ。
第一次世界大戦後、新興国アメリカが台頭したために、イギリスもドイツもどちらも覇権を持てなかった。ところが、アメリカは当時覇権国の立場にありながら国際連盟に参加せず、世界平和を保つための公共財(平和)の提供をしなかった。これが第二次世界大戦を引き起こす原因となったという仮説も最近話題になっている。これを国際政治学者のジョセフ・ナイが有名な経済学者の名前をとって「キンドルバーガーの罠」と呼んだ。
もしも中国が十分に強力であれば、アメリカに覇権喪失の恐怖を呼び「トゥキュディデスの罠」に陥るが、もし中国が弱いまま覇権の責務を顧みず中途半端に夢を追えば「キンドルバーガーの罠」を呼び起こす。
中国は果たして北朝鮮をコントロールできるのか。北朝鮮は38度線の緩衝国としての存在意義から、今では目の上のたんこぶへと代わりつつある。これこそが、今現在の中国の「偉大なる復興」への一番大きな課題である。