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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

台風19号「ハギビス」記録その1

【台風19号】異常な降水量、防水施設の想定も「防災能力追いつかず」(産経新聞)

台風19号の通過による猛烈な降雨で各地では堤防が決壊するなどして河川が氾濫。貯水量が増えたダムは流入量と同じ水量を下流に流す「緊急放流」を行うなど重大な事態が相次いだ。専門家は「気候が大きく変動し、20世紀に想定した降雨をはるかに超え、防災施設の能力が追いつかない状況」と背景を説明する。

国土交通省によると、国や県が管理する少なくとも計17の河川で堤防が決壊。赤羽一嘉国交相は、13日朝の省内の災害対策本部会議で「決壊は今後も増える可能性がある」とした。長野市の千曲川では堤防決壊により住宅地で大規模な洪水が起き住民らが孤立した。

ダムでは急速に貯水量が増え、12日夜前後から緊急放流を実施。荒川水系の二瀬ダム(埼玉県)や相模原市の城山ダム、茨城県の水沼ダム、栃木県の塩原ダムで相次いで行われ、下流域で水位が増す恐れがあることから国や自治体が警戒を呼び掛けた。

大規模災害対策をめぐり国が進める「国土強靱化」では今年度、昨年発生した西日本豪雨を教訓に、河川堤防の強化と迅速な住民避難を重点課題とされた。大きな被害が懸念される全国の河川では、堤防の強化やかさ上げを急ぐ一方、自治体に対して、最大級の被害を想定してハザードマップを作成し防災訓練をすることなどを促している。

水害対策は、各河川ごとに水量を想定し、人命や経済面などの重要性をも加味した上で優先度を決め、整備が進められてきたが、水防などに詳しい新潟大の安田浩保准教授(河川工学)は「想定をはるかに超える極端な降水が同時多発的に起こることで、水があふれ出した」と指摘する。

安田氏は、日本の水防について「世界的に見ても高水準で工事の技術も高い」と分析。ただ、「想定した施設の能力が現実にそぐわなくなっている。計画中の工事を一刻も早く完了させ、降雨や浸水の想定を改めて進め、予測の精度もあげるなど、各方面で対応を急ぐ必要がある」と強調した。


八ッ場ダム、一気に「満水まで10m」…台風で54m上昇(読売新聞)

国が来春の運用開始を目指し、今月1日に貯水試験を始めた八ッ場ダム(群馬県長野原町)の水位が、台風19号による大雨で急上昇した。国土交通省関東地方整備局の速報によると、13日午前5時現在の水位は標高573・2メートルとなり、満水時の水位(標高583メートル)まで10メートルほどに迫った。台風によるダムの被害は確認されていない。

八ッ場ダムでは、満水にした後に最低水位の536メートルまで下げていき、ダム本体や周辺の斜面の安全性を確かめる試験湛水(たんすい)が始まっている。国交省は、最高水位に達するまで「3~4か月かかる」とみていたが、周辺では11日未明から13日朝までに累計347ミリの雨が降り、山間部から流れ込んだ水でダム湖の水位は約54メートルも上昇した。水没予定地に残された鉄橋も11日時点では見えていたが、完全に水の底に沈んだ。

満水時の水位に近づいたことから、国交省は「今後は水位維持の操作に移る」としている。


日降水量の国内最高記録(共同)

大型の台風19号は関東を縦断して福島県付近から太平洋に抜け、13日正午の観測で日本の東で温帯低気圧に変わった。気象庁によると、神奈川県箱根町では12日の降水量が国内最高記録を更新。そのほかの地域でも各地の観測史上1位の記録を相次いで更新、大雨の記録を塗り替えた。

神奈川県箱根町では12日の降水量が922.5ミリに達して国内最高記録を更新した。従来は高知県馬路村で2011年7月19日に観測された851.5ミリが1位だった。

気象庁によると、他に12日の日降水量は静岡県伊豆市が689.5ミリ、埼玉県秩父市は635.0ミリ、東京都檜原村は602.5ミリ、静岡市葵区は597.5ミリ、相模原市緑区は595.0ミリで、各地点で観測史上1位の記録を更新した。

13日は岩手県普代村で1時間に95.0ミリの雨が降り、同地点の史上最高記録となった。

降水量の観測史上1位を記録した観測点は12時間降水量で宮城県丸森町(13日午前1時半に517.5ミリを観測)など120地点、24時間は茨城県北茨城市(13日午前0時40分に457.0ミリを観測)など103地点。過去に経験したことがない雨に襲われた人が多数いたことがうかがえる。

最大瞬間風速は12日に東京・神津島で44.8メートル、横浜市中区と東京・葛西臨海公園で43.8メートル、羽田空港で42.7メートル、東京都心部で41.5メートル、千葉市中央区で40.3メートルを記録した。

台風19号は温帯低気圧になった時点で中心気圧980ヘクトパスカルだった。12日午後6時に「大型で非常に強い台風」から「大型で強い台風」に変わり、13日午前3時に「大型の台風」に変わっていた。


台風19号の名前「ハギビス(Hagibis)」は、フィリピンが提案した名称で、「すばやい」という意味の言葉が由来

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時事覚書:2019年末-2020年初イラン軍事

米、中東に3500人増派 イラクで新たな空爆か―イラン司令官殺害

米国防総省は2日夜、トランプ大統領による指示で、イラン革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官を殺害したと発表した。ロイター通信によると、米軍はイラクの首都バグダッドで空爆を実施。ソレイマニ司令官とイラクのイスラム教シーア派組織「カタイブ・ヒズボラ(KH)」の指導者アブ・マフディ・アルムハンディス容疑者が死亡した。

【イスラム教シーア派組織「カタイブ・ヒズボラ(KH)」】「神の党旅団」の意味

テロ組織に指定されている。米国防総省のホフマン報道官「イラン革命防衛隊の『コッズ部隊』と強く結び付いている」と指摘。

◇駐留米軍敵視で誕生

革命防衛隊は1979年、イラン革命直後、軍の反乱に対抗できる戦力で体制を守るために誕生した。その中でコッズ部隊は国外に展開して諜報(ちょうほう)活動を行うなど、対外工作を担う。
コッズ部隊のソレイマニ司令官は、イラクで10月から続く反政府デモの裏で暗躍が報じられてきた。シェンカー米国務次官補(中東担当)は12月6日、イラクにおけるソレイマニ司令官の存在は「異常であり、国家主権の重大な侵害だ」と強く非難している。
米政府は2009年、KHと、その指導者アブ・マフディ・アルムハンディス容疑者に資産凍結など制裁を科した。米財務省はこの時の声明で、同容疑者を「ソレイマニ司令官の顧問」と指摘している。
声明によると、同容疑者が07年、イラクで駐留米軍への攻撃を担う実動部隊として集めた民兵たちがKHだ。イランが支援するレバノンのシーア派組織ヒズボラから軍事訓練を受け、急速に戦闘力を上げた。イスラエル軍と交戦した06年のレバノン紛争直後でレバノンのヒズボラは実戦経験が豊富だった。

◇IS掃討戦で強化

イラクのシーア派最高権威シスタニ師は14年、占領地を広げていた過激派組織「イスラム国」(IS)に対抗して決起を呼び掛けた。これに応じたのがアルムハンディス容疑者で、KHを含むシーア派武装勢力の連合体「人民動員隊」が結成されていく。
米紙ワシントン・ポストはこの年の暮れ、IS掃討戦でシーア派民兵の存在感が増し「イランの軍事的な影響力がイラクで劇的に大きくなっている」と現地から報告している。記事の中で、取材に応じたKHの司令官の1人は、IS掃討戦を通じ兵力が3倍に増え、3万人以上を有していると主張した。
一方、米CNNテレビは19年6月、米軍がKHに対する大規模なサイバー攻撃を行ったと報じた。ホルムズ海峡で日本やノルウェーのタンカーが襲われた時期だ。ポンペオ米国務長官は12月13日、声明を出し「イラン、もしくはその手先による攻撃が米国や同盟国に損害を与えるなら米国は決然と対応する」と警告。同27日に米軍基地が攻撃されたことを受け、2日後にKH空爆を実施した。イラクを舞台に米イランの激しい対立が顕在化してきている。

サイバー攻撃?ホルムズ海峡封鎖?米による司令官殺害 イラン報復の選択肢

時事通信-【翻訳編集】 AFPBB News(2020.01.04)

米軍がイラン革命防衛隊(IRGC)の対外工作を担う精鋭部隊「コッズ部隊(Quds Force)」のガセム・ソレイマニ(Qasem Soleimani)司令官を殺害したが、中東の同盟勢力の結集から海上交通の要衝の封鎖、国境を越えてのサイバー攻撃まで、イランは宿敵・米国に報復する選択肢に事欠かない。
イランは、非対称戦争(戦力的にかなり優勢な敵に仕掛ける戦争)のメリットをイラン・イラク戦争(1980~88年)の死闘を通じて学んだ上、イラクやシリア、レバノンなどに強い影響力を有しているため、中東に駐留する米軍への対抗手段も複数ある。
イランがソレイマニ司令官殺害の報復として取り得る主な選択肢を以下にまとめた。

■代理勢力を利用

イエメンのイスラム教シーア派(Shiite)反政府武装組織フーシ派(Huthi)からイラクのシーア派武装勢力、レバノンのシーア派政党・武装組織ヒズボラ(Hezbollah)まで、イランは中東各地に大惨事をもたらし得る勢力を支援している。
主戦場はイラクになるとみられている。親イランのシーア派武装勢力は、駐留米軍の撤退を目指して活動したり、イラン政府を揺るがしたりすることで、新たな政治危機を生み出す恐れがある。
米シンクタンク「ワシントンインスティテュート(Washington Institute)」の対テロ活動、情報活動の責任者マシュー・レビット(Matthew Levitt)氏は、「イスラエルも標的となる可能性がある。イランはイスラエルを米国の手先にすぎないとみなしているからだ」と指摘する。

■サイバー攻撃

イランが取り得るより巧妙な対抗手段としてサイバー攻撃がある。専門家の見方によると、イランは欧米の主要なサイバーインフラストラクチャーを攻撃する能力を増強し、同国に忠誠を誓った「サイバー軍」さえ作り上げたという。
フランスの情報セキュリティー専門家団体CLUSIFを率いるロイク・ゲゾ(Loic Guezo)氏は、イランのサイバー攻撃の第一目標は、ダムや発電所といった産業基盤になるとの見解を示している。

■石油輸送の大動脈の封鎖

ソレイマニ司令官殺害により中東からの石油供給が寸断されるとの懸念から、原油価格は一時4%超急騰した。イランが世界的な海上交通の要衝ホルムズ海峡(Strait of Hormuz)を封鎖するのではないかという懸念は大きい。

■軍事攻撃

最も破局的なシナリオは、イランによる軍事攻撃だ。イランが中東の米国とイスラエル、サウジアラビア勢力に対し弾道ミサイルを使用すれば、中東での全面的な紛争に発展する恐れがある。
独立系シンクタンク「国際危機グループ(ICG)」のイラン専門家ネイサン・ラファティ(Naysan Rafati)氏は、イランが米国領を攻撃する可能性は小さいと指摘している。専門家の間では、イランがどんな措置を講じようと米国の存亡を脅かすことはないとはみられている。
ICGのイラクとシリア、レバノンのプロジェクト総括責任者ハイコ・ウィメン(Heiko Wimmen)氏は、「今のところは、米・イラン両国が直接的な戦争よりも相手が引き下がることを望んでいるというのが基本的な想定だ」と指摘した。
米首都ワシントンに拠点を置く中東研究所(Middle East Institute)のアレックス・バタンカ(Alex Vatanka)氏は、「チャンスがめぐってくれば、イランは乗じる」と述べ、イラン指導部は「自滅的」はなく「チャンスをうかがっている」との見方を示した。

時事メモ:巨大陥没穴,南極生物,国内の有翼神仏像

・シベリアの永久凍土にできた巨大陥没穴の謎、現地調査で解明 ロシア(2021-02-18)
・南極の厚さ900mの氷の下に生物…掘削調査で偶然に発見(2021-02-19)
・天使?天狗?40年前発見の石像「ウマンテラさま」再び脚光(2021-02-19)

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◆シベリアの永久凍土にできた巨大陥没穴の謎、現地調査で解明 ロシア(2021-02-18)

(CNN) シベリアのツンドラ地帯に昨年、突如として出現した巨大なクレーターの現地調査を行ったロシアの研究チームが、このほど科学誌に調査結果を発表した。何もない平原にできた円形の陥没穴は、地下にたまったメタンガスが噴出し、氷や岩石を吹き飛ばして形成されていた。

ロシア北極圏のヤマル半島とギダン半島に陥没穴が出現したのは、2013年に最初に発見されて以来、これで17個目だった。原因については気候変動との関係が指摘され、研究チームはドローンによる撮影や3次元立体モデルの作成、人工知能(AI)などを駆使して謎の解明に取り組んできた。

「この新しいクレーターは保存状態が極めて良好で、我々が調査した時点ではまだクレーターの中に水はたまっていなかった。そのおかげで劣化していない『新鮮なクレーター』が調査できた」。現地調査に参加したスコルコボ科学技術研究所・炭化水素回収センターのエフゲニー・チュビリン研究員はそう解説する。

クレーターの内部をドローンで撮影したのも初めてだった。ドローンは地下10~15メートルの深さに到達し、これによってメタンガスがたまった地下の空洞の形状を把握できた。

現地調査は2020年8月に実施した。研究チームはドローンを使って約80枚の画像を撮影。これをもとに、深さ約30メートルの陥没穴の3次元立体モデルを作成した。

論文を執筆したロシア科学アカデミー石油・ガス研究所のイゴール・ボゴヤブレンスキー氏はドローンの操縦を担当。深い陥没穴の前で腹ばいになり、穴の縁から両腕を下に伸ばして操縦したという。

立体モデルの作成によって、クレーターの下部に異常に大きな空洞があることが分かった。研究チームは、氷の中の空洞にメタンガスがたまって地面が隆起、この隆起が大きくなって爆発を起こし、氷などの破片をまき散らして巨大なクレーターが形成されるという仮説を立てていたが、この仮説がほぼ立証された。

ただ、メタンガスがどこから来たのかはまだ分かっていない。地中の深い層で発生した可能性も、地表近くで発生した可能性も、その両方の可能性もある。

永久凍土は天然の巨大メタン貯留場でもあり、熱を閉じ込めて地球を温暖化させる威力は二酸化炭素よりはるかに大きい。北極圏は世界平均の2倍のペースで温暖化が進んでおり、蓋(ふた)の役割を果たす凍土層は、夏の温暖化の影響で緩んでガスが放出しやすくなっていた。

永久凍土の土壌は大気中の2倍もの炭素を閉じ込めているとの推計もあり、この地域の地球温暖化対策は極めて重要とされる。

「気候変動は、当然ながら、北極圏の永久凍土にガス噴出クレーターが出現する可能性に影響を与えている」(チュビリン氏)

衛星画像の解析で、このクレーターができた時期も判明した。研究チームは隆起した地表が2020年5月15日~6月9日の間に破裂したと推定する。クレーターが上空から初めて目撃されたのは同年7月16日だった。

チュビリン氏によると、1年の中でもこの時期は太陽光エネルギーの流入が多く、それが原因で雪が解けて地面の上層部が温暖化し、土壌の性質や挙動が変化する。

クレーターが出現しているのは非常に人口が少ない地域だが、先住民や石油・ガスのインフラに危険を及ぼす可能性もある。陥没穴は大抵が、上空を飛ぶヘリコプターや、トナカイ飼育の遊牧民によって偶然発見されている。

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◆南極の厚さ900mの氷の下に生物…掘削調査で偶然に発見
Feb. 19, 2021, 07:30 AM TECH INSIDER
https://www.businessinsider.jp/post-229720

南極の厚さ900メートルの氷の下で、偶然、生物が発見された。
生命が存在できないと考えられていた場所で、2種類の未確認生物が見つかった。 次の課題は、この生物を確認するために接近する方法を見つけることだ。 南極の厚さ900メートルの氷の下で生物が発見された。これまで、そこには生命は存在できないと考えられてきた。

科学者はこれまで、非常に低い温度と、光や食糧が不足していることから、生物が存在することは不可能だと考えてきたのだ。

その生物は、南極のフィルヒナー・ロンネ棚氷の下で氷に付着していた。イギリス南極観測隊(British Antarctic Survey:BAS)の専門家が、氷を約870メートルの深さまで削ったときに発見した。

「氷棚の下は、おそらく地球上でほとんど知られていない生息環境のひとつだ」と、この生物を発見した科学者の1人、ヒュー・グリフィス(Huw Griffiths)は、ツイッターの動画で語った。

「海綿動物のような生物が見つかるとは思っていなかった」

極端な環境に住む生命を偶然に発見! 南極 #Antarctic の棚氷のはるか下には、予想以上に生命が存在する。BASの海洋生物学者、ヒュー・グリフィス博士の説明。

フィルヒナー・ロンネ棚氷は、南極大陸から伸びる、海に浮かんだ巨大な氷床だ。150万平方キロメール以上の広さがあるが、これまで氷の下の調査はほとんど行われてこなかった。

巨大な氷山が棚氷が割れて流出することがある。2020年12月には、そのような巨大な氷山の1つがアザラシやペンギンの繁殖地に接近する危機があった。

科学者たちは、生物を探すためにここに来たのではなかったと話している。

彼らは海底からサンプルを採取するため、氷に穴を開けた。が、そうではなく、カメラは氷の塊にぶつかった。映像を確認すると、今回の発見が明らかになった。

「そこに生物がいるとは考えていないので、百万年経っても生物を探そうとはしなかっただろう」と、 グリフィスはガーディアンに語った。

BASの映像には、2種の未確認生物が映っている。赤く印をつけた生物は長い脚を持ち、白い印の生物は丸い形をした海綿動物のようだ。

これらの生物は、外洋から250キロメートル離れた地点で発見された。

「我々の発見は、『どのようにしてそこに辿り着いたか?』『何を食べているか?』『どのくらいの期間そこにいるのか?』など、答え以上に多くの疑問をもたらす」と、 グリフィスはプレスリリースで述べた。

彼は、次のステップはこれらの生物が本当に未知の生物なのかを確認することだと述べている。

「その疑問に答えるためには、我々はこれらの生物とその生息環境に近づく方法を見つけなければならない」

以前、Insiderで紹介したとおり、南極の研究基地での生活は容易ではない。

そこは遠く離れているので、この大陸で最初にCOVID-19の症例が報告されたのは、2020年12月になってからだった。

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◆天使?天狗?40年前発見の石像「ウマンテラさま」再び脚光(2021-02-19)
西日本新聞

熊本県天草市河浦町崎津集落近くの山中で約40年前に発見された、翼のある石像「ウマンテラさま」が、同町の「崎津資料館みなと屋」に昨年夏から展示され、再び脚光を浴びている。潜伏キリシタンの歴史を踏まえ、「カトリックの大天使ミカエルではないか」という説を唱える専門家がいる一方で、天草地方には金毘羅神など烏天狗の翼を付けた像が多く祭られていることから否定的な見方もあり、研究者の見解は割れている。

石像は1981年12月の発見当時、崎津集落と隣り合う今富集落西側の尾根で、金毘羅大明神などと一緒にまつられていた。高さ45センチ程度の石に浮き彫りされており、両肩に翼のようなものがあり、右手に剣を持って何かを踏みつけている。

ただ、銘文はなく、伝承も残されていない。発見当時の報道で、潜伏キリシタン研究の第一人者だった田北耕也氏(故人)が「実物を見ていないので断言は避けるが、ローマにある聖ミカエル像そっくりだ」とコメントし、話題となった。

石像はその後、「天草キリシタン研究会」会長の浜崎献作さん(76)の父が地元の人から譲り受け、運営していた資料館「サンタマリア館」で展示。2017年の閉館後、地元で管理できる人がいないことから、「みなと屋」でキリシタン資料として昨年7月から展示されるようになった。

ただ、浜崎さんは「天使の羽」とする説に否定的だ。フランス人宣教師のフェリエ神父が1882年ごろに書いた「天草についてのノート」の中で、石像がまつられていた近隣集落にいたキリシタンの信仰指導者「水方」8人のうち、3人が山伏だったとしていることに着目。天草地方には元々、三社宮(天草市本町)のように「翼のある御神体」が多いこともあり、修験道とつながりのある「翼を持つ金毘羅神、馬頭観音などと一緒に崇拝していた」とみる。

一方、発見当時の調査団に参加した波平恵美子・お茶の水女子大名誉教授(文化人類学)は「水方が山伏だったのであれば、聖ミカエル像を(翼がある火除けの神様の)秋葉様の形で祭ったとも考えられる。二重の役割をしながらキリシタン信仰を守ったと考えれば合理的だ」と話す。

修験道に詳しい慶応大の宮家準名誉教授(宗教学)は潜伏キリシタンも民俗宗教と考える立場。「占いや祈祷きとうは山伏など民間宗教者の活動の特徴。水方が隠れみのとして山伏を名乗ることはあり得る。金毘羅権現は天狗ともされているが、(ウマンテラさまは)聖ミカエル像とするのが正しいと思う」という見解だ。

天使の羽か、天狗の翼か。確証が見つかるまで、論争は続きそうだ。