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〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)
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《豆知識&当時の国際情勢》

  • 東セム語=メソポタミア地方・・・アッカド語(アッシリア語・バビロニア語)
  • 西セム語=シリア・パレスチナ地方・・・アムル語、カナアン語、アラム語、古シナイ語
    (うち、カナアン語はウガリット語・フェニキア語・ヘブライ語・モアブ語を包摂)
  • 南セム語=アラビア・アフリカ地方・・・アラブ語、エチオピア語

当時の小アジア地方では印欧語系の言語が話されていた=ヒッタイト語。他に、系統不明だがフルリ語も話されていた。フルリ人はミタンニ王国などの小王国群を建国する。

ウガリット王国=東西交易路の要衝であったカナアンを押さえ、東西世界の結節点として栄えた商業王国。陸路・海路の中継貿易が盛んであった。古代東地中海の主要な貿易品として、錫、銅、金、銀、紫染料、ラピスラズリ、木材(レバノン杉)、馬、穀物、塩などが取引された。ウガリット王家は領内の商行為を保護し、それらの海上取引税、関税などは、ウガリット王国に莫大な利益をもたらした。

ヒッタイト、エジプト両帝国の間にあって、彼らの政治的抗争の中に巻き込まれざるを得ない環境の中にありながら、ウガリット王国は、他の周囲の小国群の動きにも同調せず、同時に、かなり自由のきく外交的ポジションを取る事が可能であった。ヒッタイト・エジプト両帝国が、商業貿易上に占めるウガリット王国の地位と働きとを認識せざるを得なかったから、これを利用していた故である(この当時のオリエント圏は、謀略と外交の渦巻く舞台であった。一つ間違えば国家消滅、まさに激動の時代である)。


【シュメール人の遺産・・・受け継がれた「死と復活」の神話】

シュメール人が語り継いできた「牧神ドゥムジ」、ないしは「タンムズ神」の物語は、「死と復活」の神々の物語として、その後の聖書神話・フェニキア神話・ギリシャ神話へ、大きな影響を及ぼした事が知られている。

前2000年紀から前1000年紀の古代オリエントでは、豊饒儀礼の整備に伴って、「死んで復活する神」の神話が広まっていた。冥界下りの神話として語られる物語群が、それである。

シュメール時代に好まれて『イナンナ女神の冥界下り』に語られた物語は、アッカド神話『イシュタル女神の冥界下り』として語られ、冥界の描写は『ギルガメッシュ』にも引用された。幾許かの例外はあるが、一連の冥界物語に、ドゥムジという複雑な神格の神(牧畜神/イナンナの夫)が登場するのである。

シナリオは様々であるが、イナンナとドゥムジは、半年間を基準として代わる代わる地上から居なくなる。これは季節の変動を暗示しているという説がある。牧神ドゥムジは次第に王と同化し、シュメールの王と女神官が各々ドゥムジとイナンナを演じて、豊饒を招来するための聖婚儀礼を行うようになったと言われている。

ドゥムジ神は、元々はシュメールの言葉で「ドゥズ」、より正確には「ドゥム・ジ・アブズ」、すなわち深淵の神エアの息子とされ、生長・繁茂の役割を持つ神とされていた。ドゥムジは、アッシリア・バビロニアに入って「タンムズ」と呼ばれるようになったが、ここでも同じ職能を担当し、半年間、冥界に閉じ込められるストーリーとなった。

豊饒儀礼に伴う「イナンナ、またはドゥムジ神の死と復活」の物語は、どの民族にも関心が高く、みるみるうちに神の名称と物語のシナリオを微妙に違えつつ、広範囲に広まったと推測できる。また、この物語は、古代牡牛信仰としての側面も持っており、ミトラ教との関連も深いと言われているのである。

ヘブライ語やアラム語でも、名前が訛ってタンムズ神と呼ばれた。メソポタミアからシリア・パレスチナに広まっていった「タンムズの死と復活」の神話は『旧約聖書』に取り入れられ、後にはアラブ世界にも取り入れられた。ユダヤ暦第4月、アラブ暦第4月の名前は、共に「タンムズ月」であり、古代には〝嘆きの儀礼〟が行なわれた事が知られている。

タンムズが地上に居る半年間は植物が繁茂し、動物が成育するが、タンムズが地下に居る半年間は成長が止まる。そこで泣き女たちが、タンムズが地上に戻るように、タンムズ月に「嘆きの儀礼」を行なうのである。地上に女たちが座って髪をふりみだし、胸を叩いて涙を流すという内容であり、春が到来する少し前の神話儀礼として、古代からオリエント圏では広く知られていたという事である。

「タンムズの死と復活」は、フェニキア地方に達し、キプロス・ギリシャへ伝播した。ギリシャに入ると、タンムズ神話はアドニス神話となる。「アドニス」とはセム語の呼格形「アドーナイ(我が主よ)」が訛ったものであり、タンムズの嘆きの儀礼で泣き女たちが発した呼び声が元となっていると言われている。

ついでながらギリシャ神話では、愛と美の女神アフロディテが美少年アドニスを愛したが、これを冥界の女王ペルセフォネに預けた事から争いが始まり、結局アドニスは半年ずつそれぞれの世界に身をおく事になった・・・というストーリーとなっている。なおアドニスは後には、森でイノシシに殺され、その血からアネモネが生じたとされているが、これはタンムズ神話の盛んだったレバノンで、春先にアネモネの赤い花々が一面に咲き乱れる事から現れた神話であろうと言われている。

イスラエル人は、バビロン捕囚の時代に、メソポタミア地方の標準暦(タンムズ月のある暦)を採用している。『聖書』はタンムズ信仰を偶像崇拝として非難しているが、このドゥムジ・タンムズに連なる「死んで復活する神」の系列が、「キリストの死と復活」の物語に影響を与えた事は否定できないと言われている。

※参考:『聖書(エゼキエル書)』に見るタンムズ儀礼への非難

8章14節:そして彼はわたしを連れて主の家の北の門の入口に行った。見よ、そこに女たちがすわって、タンムズのために泣いていた。
8章15節:その時、彼はわたしに言われた、「人の子よ、あなたはこれを見たか。これよりもさらに大いなる憎むべきことを見るだろう」。

・・・次回に続く・・・

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