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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

詩歌鑑賞:チュチェフ「おお夜の海よ」

◆チュチェフ(ロシア詩人、1865作品、無題)

おお 夜の海よ、お前はなんと美しいことか!
ここは燦々と輝き、かしこは暗く濃藍色、
月光を身に浴びて、海は生きもののように
歩み、呼吸し、きらめいている。

涯て知らぬ自由のひろがりの上に
閃々と光り、たゆたい、遠雷のごとく どよみ轟く
縹渺たる月光を全身に浴びた海よ、
人気ない夜の世界に、お前はなんと素晴らしいことか。

巨大なるうねりよ、海のうねりよ
お前はそんなにして誰の祭日を祝っているのか。
浪は轟き輝きつつ寄せて来る。
目ざとい星達が空にまたたいている。

この動揺のさなかに、この煌耀(きらめき)のさなかに、
夢見るごとく茫然と私は立ち尽くす。
ああ いかに心地よいことであろうか
この魅惑の中に魂を沈めることができたなら
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