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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

twitter覚書:震災後の漫画

喜多野土竜先生に聞いた震災後の漫画について《http://togetter.com/li/114406》

東北地方太平洋沖地震が人々に与えた影響は大きい。それが今後の漫画の表現にどう影響してくるかを喜多野土竜先生に聞いてみた。日本敗戦~の興味深い考察。初めてとぅぎゃりましたのでご指摘ご指導ありましたらお願いします。

@mogura2001 突然失礼いたします。喜多野先生のご意見をお聞きしてみたいと思い、つぶやきをお送りする次第です。先程竹熊先生が森川嘉一郎先生のつぶやきをRTなさっていましたが、喜多野先生はこの震災を機に漫画の表現(物語や人間の描き方)がどのように変化していくとお考えですか?shown_file 2011-03-21 14:22:30

@mogura2001 私は、日常の癒しになるものと、社会性のあるシリアスな漫画の二極化が進み、内面的な物を描くフィクションが減る、受け入れられなくなるのではないかと考えています。shown_file 2011-03-21 14:23:59

@mogura2001 自分の考えは浅薄なものであるのは承知しております。お時間のある時で良いので、是非先生のお考えを聞かせて頂きたいです。shown_file 2011-03-21 14:25:43

@shown_file 例えば、日本は敗戦のトラウマを抱えて、それらが作品に反映されました。『宇宙戦艦ヤマト』は、日本が枢軸国ではなく連合国に参加し、ナチスのメタファーである敵を倒す、という捻れた内容でした。これに反発した富野由悠季監督や安彦良和氏は、機動戦士ガンダムを作ります。mogura2001 2011-03-21 14:39:46

@shown_file ガンダムも、コロニーの自治=植民地化された東亜開放、というメタファーです。ミノフスキー粒子による大艦巨砲主義の崩壊と、モビルスーツによる機動力を生かした戦いというのは、真珠湾攻撃以降の空母をベースとした航空機機動戦力時代のメタファー。ザクは零戦なのです。mogura2001 2011-03-21 14:43:38

@shown_file ジオン・ズム・ダイクンが唱えた、認識力が高まった人類(ニュータイプ)による共存というのは、実は八紘一宇です。ガンダムは企画段階ではガンボーイという名称でしたが、銃=アメリカのメタファー。ガンダムの配色が赤・黄・青・白なのはスーパーマンの服と同じ星条旗の色。mogura2001 2011-03-21 14:48:52

@shown_file ところがヤマトの批判として意図されたガンダムも、捻れが生まれます。アムロも企画段階ではアムロ嶺だったように、日系が多いホワイトベースのクルーが、鎧武者をモチーフにしたガンダムで、枢軸国と戦うという、ヤマトと同じモチーフが入り込みます。自虐と愛国心の捻れ。mogura2001 2011-03-21 14:53:43

@shown_file ガンダムでは、ジオンの理念は正しかったが、それをザビ家が歪めた…という態を取ります。では、その理念はどこに? キャスバル兄さんが受け継ぎます。彼のイメージカラーが赤なのは偶然ではなく、日の丸の赤。ガンダムが星条旗カラーなのに呼応しています。mogura2001 2011-03-21 15:00:05

@shown_file このような捩れの結果、ヤマトの反発から生まれたはずのガンダムは、核兵器を肯定できないという日本人の感情に逆らえなくなります。アメリカの『戦争を終わらすには原爆は有効だった』という論理は認めがたい。その結果、ガンダム世界ではジオン側が核兵器を使うことに。mogura2001 2011-03-21 15:04:29

@shown_file ソーラーレイは、巨大ですがただのレーザー光線なのに、アムロが「憎しみの光」と過剰反応するのは、それが原爆のメタファーだからです。枢軸国が原爆を使うという捻れた発想の原点は、たぶん波動砲が影響してるのでしょう。波動砲も核兵器と同じ、絶対的切り札ですから。mogura2001 2011-03-21 15:09:41

@shown_file そうやって、ヤマトへの反発から生まれたガンダムも、敗戦のトラウマを解消はできなかったため、ゼータが生まれます。連邦軍=連合国が勝利した後の、戦後世界の秩序の枠組みに対する異議申し立て、ですね。ハッキリ言えば、アメリカが主導する戦後秩序への反発。mogura2001 2011-03-21 15:13:20

@shown_file ゼータガンダムが星条旗カラーから変化したのも当然ですね。もっともゼータでも「理念は正しかったが、それを歪めてしまった悪人がいた」というプロットが繰り返されます。連合国が発展した国連は気に食わないが、国連中心主義しか選択肢はない以上、常任理事国に文句を言う。mogura2001 2011-03-21 15:17:37

@shown_file 事ほど左様に、敗戦のトラウマは大きなものです。それはアメリカも同じで、ベトナム戦争は本土が無差別爆撃で蹂躙されたわけでもない、形の上では勝ちはしなかったが負けてもいないのに、深い敗北感を残します。さらにこれに、ウォーターゲート事件が追い討ちをかけます。mogura2001 2011-03-21 15:21:03

@shown_file こうしてアメリカではベトナム戦争物と呼ばれるジャンルが生まれます。『地獄の黙示録』カラーから『ランボー』に『プラトーン』などなど。しかし、最大のベトナム戦争物映画と言えば、実は『スターウォーズ』でしょう。あれはSF娯楽大作ではないかと思われるでしょうが。mogura2001 2011-03-21 15:24:47

@shown_file 『ランボー怒りの脱出』のノベライズ版は、第一作の原作者であるデイビッド・マレルが執筆しています。その中で、仲間をヘリに載せて脱出するランボーがベトナムの捕虜兵に、おまえらアメリカに帰ったらスターウォーズを観ろビックリするぜと語るシーンがあります。mogura2001 2011-03-21 15:27:44

@shown_file そこでランボーは忽然と気づきます。スターウォーズは、負けたベトナム戦争のやり直しだったと。悪の帝国に正義の民主主義勢力が勝ち、戦場で失った腕も完璧に復元されたら、自分達ベトナム帰還兵はどんなに救われた事だろう、と。実はヤマトやガンダムと同じ構造です。mogura2001 2011-03-21 15:30:31

@shown_file ガンダムが鎧武者のイメージでありながら、西洋風の盾とM16をモチーフとしたビームライフルを持つように、ルークは東洋のイメージを濃厚にまとっていますね。ルーカス監督が黒澤明のファンというだけでなく、己が敗れた相手の文化を取り込むというのは、よくある現象です。mogura2001 2011-03-21 15:34:44

@shown_file 9.11テロは、そういう意味ではもうひとつのエポックでもありました。直接的にあのテロを描いた作品も多々ありますが、あの事件によってアメリカ人もようやく、ゴジラという作品が持つ意味を理解できたのではないでしょうか。夜に上陸するゴジラは夜間空襲のメタファー。mogura2001 2011-03-21 15:38:11

@shown_file 『クローバーフィールド』という作品が、エメリッヒ版ゴジラとは全く異なる表現を見せたのも、9.11テロの影響でしょう。そして、9.11テロ物と言える作品の決定版が、実は『スーパーマン・リターンズ』です。一見関係内容に思えるジャンルに、本質が宿るのでしょう。mogura2001 2011-03-21 15:43:15

@shown_file ガンダムと同じ星条旗カラーに身を包むスーパーマンは、アメリカの象徴。スーパーマンの原作者はユダヤ系で、スーパーマン自体のモチーフが川に流されたモーセを下敷きにしています。クリストファー・リーブ版では時間を逆行させたように、神のメタファーでもあります。mogura2001 2011-03-21 15:46:55

@shown_file 『リターンズ』では、スーパーマンが9.11テロを救ってくれなかったのは、クリプトン星に帰っていたから…という理由がついています(劇場版ウルトラマンでも、なぜ阪神淡路大震災でウルトラマンが助けてくれなかったかという理由の説明という形で試みられていますね)。mogura2001 2011-03-21 15:57:35

@shown_file リターンズでは、レックス・ルーサーがクリプトナイトを使って新しい国土を作ろうとするのを、スーパーマンが阻止するという内容ですが、これはアメリカの拡大主義への批判でしょうか。預言者は故郷で容れられないように、クリプトナイトで力を失ったスーパーマンは敗れます。mogura2001 2011-03-21 16:01:00

@shown_file その敗れかたが、脇腹をクリプトナイトで刺されて致命傷を負うという、キリストの磔刑がモチーフ。実際、宇宙から墜落するスーパーマンは両手を広げて十字架にかけられたよう。死の淵を彷徨い復活するというのも、キリストの死と復活というモチーフに沿っています。mogura2001 2011-03-21 16:05:38

@shown_file さて、長々と書いてきましたが、ここからが本論。日本は敗戦によって自虐の渦に飲み込まれましたが、同時に対抗運動も起きるわけで。戦前の日本を否定しようとすると、ヤマトやガンダムのような捩れが起きる。ベトナム戦争の敗戦を受け止めたはずのアメリカでも、状況は同じ。mogura2001 2011-03-21 16:22:36

@shown_file 先日のライムスター宇多丸ウィークエンドシャッフルで佐々木中氏が危惧していましたが、大規模災害が起きると内部的な団結が高まるが、その反動もセットで起きる、と。半藤一利氏が言うように、日本人の心を一尺掘ると、尊王攘夷が噴き出す訳で。日本人凄いはそこに同伴する。mogura2001 2011-03-21 16:29:34

@shown_file スーパーマンリターンズでは、アメリカの拡大主義への批判と同時に、キリスト教への回帰が同伴していたように、何かの経験がより高いステップに繋がるかと言えば、逆に反動で後退することもあるのが、人間の不思議です。竹熊さんは、変化の先を想定しているようですが。mogura2001 2011-03-21 16:33:03

@shown_file 日本では近代化の過程で平田神道のようなオカルトが大きな力を持った。王権神授説を否定したフランス革命は旧来の神を否定しながら理性神を祀る祭壇を築き、無神論を唱えながらもマルクスの思想はユダヤ教とキリスト教に濃厚な千年王国思想の影響を強く受けたものでした。mogura2001 2011-03-21 16:51:54

@shown_file マックスウェーバーは、資本主義という近代的な経済が、プロテスタントの禁欲主義が生み出したという逆説を考察しました。他にも事例はありますが、近代と反近代、合理性とオカルト、前進と後退はセットで起こります(時差はありますが)。佐々木中氏が懸念するのは、そこ。mogura2001 2011-03-21 16:54:19

@shown_file 漫画で癒しとかが増えるとかシリアスが持て囃されるとかは、あったとしても表層的な事でしょう。スターウォーズは娯楽作品ですが、ベトナム戦争での兵士達のシリアスな思いを救済する側面があったように。ただ、そうやって癒されたアメリカは、ブッシュ政権で戦争の泥沼に。mogura2001 2011-03-21 16:57:49

@shown_file 曲解されることを覚悟で言えば、大震災で復興特需が起きて経済が浮上するにではないかという、当事者ではない人間の無責任な、やましい期待感が反映された作品が生まれるでしょう。時代の閉塞感に打ちのめされ、戦争でも起こればいいと口走るのも若者が出現したように。mogura2001 2011-03-21 17:02:40

@shown_file 戦争が起きれば社会秩序がひっくり返り、自分のこの惨めな状態が変わるというのは、実はユダヤ教やキリスト教、その直系子孫である共産主義の革命思想の核でもあるのですが、人類に共通の発想のようです。実際は、戦争が起きて皇帝になれるのは一人で、後は雑兵として消える。mogura2001 2011-03-21 17:07:48

@shown_file 三国志の曹操は乱世の奸雄と評されましたが、同時に治世の能臣でもあったわけで。治世の能臣にもなれない人間が、乱世の奸雄になれる可能性は、ゼロではないでしょうけれど、宝くじに当たるより、東大に合格するより難しそうです。でも、そこを煽る作品が生まれるでしょう。mogura2001 2011-03-21 17:12:49

@shown_file 現在ですら「ひょっとしたらキミにも世界でひとつだけの花が眠ってるかもしれないよ?」式の、読者甘やかし作品が氾濫しています(自分はハリポタハリボテ漫画と呼んでいますが)。これに加えて「日本人すごい」式の、今回の教訓が加味されるでしょう。その先には尊王攘夷。mogura2001 2011-03-21 17:17:24

@shown_file 自分にネトウヨとかレッテルを貼りたい人には意外かもしれませんが、自分はそっちを危惧します。内面的な物を描く・描かないは表層的なことで、そこにキミは凄い・日本人は凄い式の、読者甘やかし要素があるかどうかではないですかね。たぶん、ゾロゾロ出てきます。mogura2001 2011-03-21 17:23:23

@shown_file 己を世界の中心の華と自尊する事は、周辺は文明化されていない野蛮国だという意識と表裏一体です。日本人は素晴らしいは、容易に日本人「だけ」は素晴らしいにすり替えられます。竹熊さん達が想定するのは表現のリアリティの話であり、自分の震災後の表現とは違うでしょう。mogura2001 2011-03-21 17:27:02

@shown_file 右翼的と批判されたヤマトへの批判として生まれたガンダムも、核兵器を肯定することはできませんでしたし、植民地開放の理念を否定できませんでした。当然です。軍部には侵略の口実と批判できても、終戦後も東南アジア各地に残り植民地独立の為に戦った兵士は否定できません。mogura2001 2011-03-21 17:35:50

@shown_file そのような捩れは、どんな作品にも混入します。自分の作品でも。ただ、こういう警句を発する事で、感情的な排外主義(先日批判した韓国に援助なんかするなという意見)に対して、多少の歯止めにはなるかも。原発の危険性を訴えるにAERAのような態度が却って有害なように。mogura2001 2011-03-21 17:40:03

@shown_file Twitterの文字制限の中では上手く説明できませんが、自分の視点はこんなところです。とりあえず、島田英二郎モーニング編集長の動きには、逆説的な意味で気をつけたいかな、と(爆笑)。mogura2001 2011-03-21 17:43:01

@shown_file 多少なりとも参考になったなら嬉しいですが、あくまでも自分の見方ですので、批判的精神を忘れず、悪影響を受けないよう気をつけてください。 では仕事に戻りますm(_ _)m mogura2001 2011-03-21 17:47:10

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twitter覚書:英雄凡才物語論

英雄の息子で天才の物語論《http://togetter.com/li/117243》

「なぜ少年マンガの主人公の少年は『英雄の息子』で『天才』なのか?」という意見とマンガ論に対する、個人的な疑問を書いてみました。正しい・正しくないではなく、現状の作品作り(漫画に限らず映画も)への疑問です。

ある編集者「なぜ少年マンガの主人公の少年は『英雄の息子』で『天才』なのか?少年が読むものだから。子どもが読むものだからです。子どもは誰もが『英雄の息子』で『天才』だからです」tanakayutak 2011-03-23 00:56:22

そして甘やかし漫画が氾濫。 RT @izumino: 少女ならジュエルペットでいう「女の子は誰でもステキな魔法使い!」ですね RT @tanakayutak: ある編集者「なぜ少年マンガの主人公の少年は『英雄の息子』で『天才』なのか?少年が読むものだから。子どもが読むものだから…mogura2001 2011-03-23 17:48:42

作品がその子どもにとって、甘やかした害毒になるか、一生を勇気付ける大切な宝物になるか、その境界は常に危うくデリケートですね。だからこそ、一人ひとりの子どもと作品の出会いがより良いものであって欲しいと願わずにいられません。@mogura2001 tanakayutak 2011-03-23 18:07:37

@tanakayutak 現状、あまりに安易な「君にも何か隠された天府の才能があるかも」式の甘やかし漫画が氾濫しすぎです。凡人が必死の工夫や努力や発想の転換、なけなしの勇気を振り絞って立ち向かう作品は、一生を勇気づける大事な宝物になりますが(ちばてつや・あきお両先生の作品とか)。mogura2001 2011-03-23 18:16:51

昨日の「子どもは誰もが『英雄の息子』」は、少年マンガにおける幼児性の肯定に対する批判への反論、という文脈の中で編集者から伝えれた言葉でした。 「現実」を描くと言いながら、挫折や無力感を描くことは本当に正しいのか、それは子どもの読者にとって‘本当に’「現実」なのか?tanakayutak 2011-03-23 18:30:20

「男の子はみんな『英雄の息子』だし、女の子はみんな『お姫さま』です。クラスの中のどんな冴えない子だってです。一人ぼっちの子だってです。『お前なんかダメだ』って言葉なら世の中からいくらでも浴びせられます。マンガまでそっちの側についてどうするんです」(※セリフメモ、田中ユタカ創作)tanakayutak 2011-03-23 18:32:41

今回の大震災で、世界がもろい壊れ物で、親も自分も為すすべなく痛めつけられてしまうことがあるのだと体験した子どもたちに、私たちはどんな物語やヒーローやヒロインを差し出すことが出来るか?tanakayutak 2011-03-23 18:33:23

「誰も救いに来てくれなかった子どもの頃の僕自身に向けて、僕は今、ヒーローを描いてあげているんです。『生き延びなさい。君自身がヒーローになって救いに来る時まで。君のヒーローは必ずやって来るから!』」(※作品用セリフメモ、田中ユタカ創作)tanakayutak 2011-03-23 18:34:33

人生は挫折の連続であり、思い通りになることは数少ない。マンガ家デビューもできない投稿者から見たら羨ましい限りの人気作家も、内実は未来への不安や、己の才の乏しさに呻吟し、絶えざる競争に苦悩している。そんな時に心の支えになるのは、天才がその力を発揮する作品ではない。mogura2001 2011-03-23 18:24:01

凡人が凡人として、何も無い自分を変えていく、危機的状況を切り抜けていく物語は力になる。少なくとも今を生きるヒントになる。ダニエル・デフォーの『ロビンソン漂流記』は1719年に発表された古典中の古典だが、未だに子供たちの旨を熱くさせる。彼は英雄の息子でもなければ天才でもない。mogura2001 2011-03-23 18:29:55

『英雄の息子』で『天才』というのは、『スターウォーズ』の悪しき解釈。以前も書いたように、同作は敗北したベトナム戦争の癒しの物語。悪の帝国に民主主義勢力が勝つ、それも田舎の純朴な青年(ジェダイとしては訓練開始時期も遅い)が銀河を救うというモチーフは、『フォレスト・ガンプ』も同じ。mogura2001 2011-03-23 18:33:23

『スターウォーズ』では、エピソード5での、実はルークがベイダーの息子という設定のインパクトがあまりに大きく人口に膾炙したため、その部分のみを安易に模倣する作品が、以後量産される。その直系子孫が『ハリー・ポッター』。ただ、スターウォーズの設定自体は、よくある物語のパターン。mogura2001 2011-03-23 18:36:33

物語のパターンとして、エディプス・コンプレックスの克服はそれこそ何千年も前からある物語。エディプス(オイディプース)とは、自分の父親を殺し母親を妻として娶ってしまった悲劇の王の物語。ギリシャ神話に出てくるこの物語を元に、フロイトはエディプスコンプレックスという心理的抑圧を説く。mogura2001 2011-03-23 18:40:53

フロイトの学説の是非はともかく、人間は古来から肉親同士で争うこともしばしば、特に男の子にとって父親とは乗り越えるべき最初の壁にして、永遠の壁。梶原一騎の作品には『巨人の星』や『人間凶器』『斬殺者』など、数多くこのモチーフが語られる。それは、梶原と厳格な父親との実際の相克の反映。mogura2001 2011-03-23 18:43:45

スターウォーズも本来は、父子相克の物語。父親というのは、超えるべき理想であり、同時になってはいけない未来の自分。スターウォーズは本来、なってはいけない父親を克服し、克服された父親と息子の和解の物語である。菊池寛『恩讐の彼方に』も形は変えているが擬似父子による相克と和解の物語。mogura2001 2011-03-23 18:47:56

にも関わらず、「友達のような親子関係が理想」と言い放つ現代にあって、民主的な父親は克服すべき対象ではなく、結果的に「英雄の息子」で「天才」が、その力を発揮するだけの物語が大量生産されることに。その悪しき解釈の一番の被害者が、平成版巨人の星としてリメイクされたマガジンの作品。mogura2001 2011-03-23 18:51:14

そこで描かれた星一徹は、ひたすら理不尽な怪物・理解不能な化物として描かれており、そこには梶原一騎が欲してなお得られなかった、父親との和解はない。ただひたすら怪物から退治されるべきドラゴンの如き存在となっている。平成版が花形満の視点から描かれるのは当然。彼は金持ちの御曹司で天才だ。mogura2001 2011-03-23 18:54:25

その梶原一騎と、ちばてつや先生が描いた矢吹ジョーは、天才ではない。英雄の息子でもない。天才は力石。ジョーは、肉を切らせて骨を断つという、己の中の勇気という武器でクロスカウンターを放つ。ちば作品は基本的に、そういう凡人が頑張る物語。実弟のちばあきお作品は、さらにその傾向が顕著。mogura2001 2011-03-23 18:58:36

東大合格者は親も裕福な家庭が多いという調査結果が出ているが、結果的にそういう有名大学を卒業した高学歴の子弟が出版社に入り、自分の人生を肯定しようとしたら、「英雄(金持ち)の息子」で「天才(受験戦争の勝ち組)」という物語を好むのも必然か。日雇い労働者の息子より御曹司に共感して当然。mogura2001 2011-03-23 19:02:34

藤子不二雄作品は、一見するとドラえもんという万能の存在で、楽して成果を得る物語であるが、基本的にそれを暴走させてしまったのび太が、しっぺ返しを食う。『笑うセールスマン』もその応用系。必ずバランスを取るための毒を、幼年向け作品であっても忍ばせている。一方的な甘やかし漫画ではない。mogura2001 2011-03-23 19:05:04

ジェフのサッカーコーチである池上正氏が、小学生に紅白戦をやらせると、チーム分けで奇妙なことをするという。自分らの感覚ならば、戦力を均等に分けてチームをつくるのに、1番目から11番目に上手い子のチームと、12番目から22番目までの子のチームと。当然、試合内容はワンサイドになる。mogura2001 2011-03-23 19:08:42

10点も20点も点差がついた試合になるので、池上氏が途中で弱いチームに入って立て続けに得点すると、子供たちは「ずるい」と言い出す。仕方が無いので池上氏がキーパーになって得点しない代わりに、強いチームのゴールをたてつづけに止めると再び「ずるい」と批判するそうだ。ずるいのはどっちだ?mogura2001 2011-03-23 19:11:39

自分たちだけ有利な条件を一方的に決め、弱い者いじめ同然の試合をすることを恥ずかしいと思わない子供たち相手なば、なるほど「英雄の息子」で「天才」が一方的に勝つ物語を、嬉々として受け入れるのかもしれない。ゲームばかりやってる小学生よりも健全と大人が考えているサッカー少年の不健全性。mogura2001 2011-03-23 19:14:21

しかし、これは子供たちの責任だろうか? 子どもたちの姿は、今の大人達を写す鏡である。放射能怖い怖いと煽るマスコミが、必死に「買い占めは辞めましょう」と一日に何回何十回と呼びかけても、安全な東京でガソリンやコンビニの食料を買い占めて恥じない大人達の、影響を受けていないと言えるか?mogura2001 2011-03-23 19:16:47

「漫画なんてしょせん娯楽、小難しいこと言っても誰も読んでくれません。かつての名選手の息子が小学生でプロになって大活躍するようなストーリ、書きましょうよ」と編集者に言われたとき、マンガ家はどうするべきか? 自分なら「それで行きましょう! ところで原稿料はずんでくださいね」(終)。mogura2001 2011-03-23 19:20:56

今回のつぶやきの予備知識として。 http://togetter.com/li/114406 mogura2001 2011-03-23 19:48:07

あれはまだ成功した部類で、編集の口車に乗って消えた作品なんて山の様にありますからね(笑)。 RT @masaki_sss: @mogura2001 童夢くんだ!mogura2001 2011-03-24 05:28:29

300年前の作品も、150年前の作品も時を超えて生きる。消費されるだけの作品でいいのか、古典を読むたびに思います。ポーの作品も百年後も読まれてるでしょうし。 RT @gishigaku: 『月長石』で人生のあらゆる指針を『ロビンソン漂流記』に求める人物が好意的に描かれていますねmogura2001 2011-03-24 05:27:09

@izumino 物語の構造とモチーフと配役、神話素はまた違う型取りが必要ですから…。まぁ、そこらへんはマンゼミではやらない可能性が高いのですが。今回のtweetはライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフルでも語られていた作品論を参考にしてあります。興味があったら聞いてみては。mogura2001 2011-03-24 05:33:07

詩歌鑑賞:ヘルダーリン「追憶」

詩歌鑑賞:ヘルダーリン「追憶」

Andenken / Friedrich Hölderlin

Der Nordost wehet,
Der liebste unter den Winden
Mir, weil er feurigen Geist
Und gute Fahrt verheißet den Schiffern.
Geh aber nun und grüße
Die schöne Garonne,
Und die Gärten von Bourdeaux
Dort, wo am scharfen Ufer
Hingehet der Steg und in den Strom
Tief fällt der Bach, darüber aber
Hinschauet ein edel Paar
Von Eichen und Silberpappeln;

Noch denket das mir wohl und wie
Die breiten Gipfel neiget
Der Ulmwald, über die Mühl,
Im Hofe aber wächset ein Feigenbaum.
An Feiertagen gehn
Die braunen Frauen daselbst
Auf seidnen Boden,
Zur Märzenzeit,
Wenn gleich ist Nacht und Tag,
Und über langsamen Stegen,
Von goldenen Träumen schwer,
Einwiegende Lüfte ziehen.

Es reiche aber,
Des dunkeln Lichtes voll,
Mir einer den duftenden Becher,
Damit ich ruhen möge; denn süß
Wär unter Schatten der Schlummer.
Nicht ist es gut,
Seellos von sterblichen
Gedanken zu sein. Doch gut
Ist ein Gespräch und zu sagen
Des Herzens Meinung, zu hören viel
Von Tagen der Lieb,
Und Taten, welche geschehen.

Wo aber sind die Freunde? Bellarmin
Mit dem Gefährten? Mancher
Trägt Scheue, an die Quelle zu gehn;
Es beginnet nämlich der Reichtum
Im Meere. Sie,
Wie Maler, bringen zusammen
Das Schöne der Erd und verschmähn
Den geflügelten Krieg nicht, und
Zu wohnen einsam, jahrlang, unter
Dem entlaubten Mast, wo nicht die Nacht durchglänzen
Die Feiertage der Stadt,
Und Saitenspiel und eingeborener Tanz nicht.

Nun aber sind zu Indiern
Die Männer gegangen,
Dort an der luftigen Spitz
An Traubenbergen, wo herab
Die Dordogne kommt,
Und zusammen mit der prächtgen
Garonne meerbreit
Ausgehet der Strom. Es nehmet aber
Und gibt Gedächtnis die See,
Und die Lieb auch heftet fleißig die Augen,
Was bleibet aber, stiften die Dichter.

「追憶」

北東の風が吹く。
風のうちでも最も好ましい
熱き心と
良き旅を舟人に約束する風だ。
だが今は行け そして言問いせよ
美しいガロンヌの流れに
ボルドーの数なす庭園に。
そこでは岸辺の断崖に
細い道が通じ 大河の深みに
小流は落ち込み その上に
槲(かしわ)と白楊(ポプラ)の
高貴な一対の林が見晴るかす。

私は思い出す
楡(にれ)の森が広やかな梢を
水車の上へ傾げているのを。
中庭には無花果(いちじく)が生い茂り
祝祭の日には
褐色の肌の郎女(いらつめ)たちが
絹のような地面を歩む。
時は三月
夜と昼の長さを等しくする頃のこと。
ゆるやかに延びてゆく道野辺
金色の夢を重く載せ
ひとを眠りに誘う微風が流れる。

恵みたまえ わが憩いのために
暗い光に溢れた
香り立つ盃(さかずき)を。
木蔭に結ぶまどろみの甘さよ。
好くないのは
魂も虚ろに 死すべき
思いに沈むこと。
好いのは ひとと語らい
内なる情熱を述べること。
愛の日々について
いにしえの諸々の業について
耳傾けること。

しかし友はいずこ? ベラルミンと
彼の仲間は? 水源に遡るのを
恐れる者は多い。
豊かなものが集い始めるのは ほかならぬ
海なのだ。人々は
絵師が描き込むように 地上の美を
蓄積し 帆を翼のように翻す
海上の戦をも厭わず
むき出しの帆柱のもと
長い孤独の中にも住む。
夜を照らす街の祝祭も
絃楽も 郷土の舞踏もない所で。

今や天竺へ
男らは赴いた。
葡萄の山々に寄り添う
風吹き通う岬から。
ドルドーニュが流れ下り
そして壮麗なガロンヌと交わり
海のような広さとなり
注ぎ出る所。そして 記憶を奪い
また与えるのは海。
そして ひたむきな眼差しを きざすのは 愛。
しかし うち残るものを樹(た)てるのは 詩人たちである。

参照:『ヘルダーリン詩集』川村二郎・訳/岩波文庫

(殆ど川村氏の訳を参照していますが、一部、当サイト解釈による言葉の変更が混在)