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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

詩歌鑑賞:チュチェフ「沈黙」

◆チュチェフ(沈黙)

沈黙せよ、隠れよ、そして隠せ
自分の気持ちも夢も――
魂の深みでそれらは
夜の星のように黙々と
昇っては沈むことを繰り返しているがよい
それに見惚れ、沈黙せよ!

心はどうしたら自分を言い表すことができるのか?
他人にお前のことがどうして理解できようか?
お前の生きがいが他人にわかるだろうか?
心に思うことも口に出せば嘘になる
泉を掘り返しても、水をかき乱すだけだろう
ただ泉の水を飲み、沈黙せよ!

自分自身の中で生きることだけができればよい
お前の魂の中には まるまる一つの
神秘的で魔法のような思念の世界がある
その思念を外の騒音がかき消し
昼の光が追い散らしてしまう
それら思念の歌に耳を傾け、沈黙せよ!
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私製詩歌「刀身」

往古(いにしえ)のはるけき 天雲(あめぐも)に舞うたか、
青鈍(あおにび)色の 風切羽。

刃紋は 雲の形をうつして流れ、
刃先は 雷(いかづち)の光をうつして翻(ひるがえ)り――

今は 羽を休める鳥のように、
静(しずか)に 台(うてな)の上に眠れるもの。

内(うち)に秘めし玉鋼(たまはがね)が見るのは、
往古(いにしえ)の蹈鞴(たたら)の夢か、
それとも己の選(え)り抜いた
刀匠の、あるいは戦士の記憶。

一ツ目の姿せし鉄(くろがね)の神は
……黙して語らず……

熱く燃える火焔の闇より引き出され、
冷たく凍(こお)れる姿は、
いとも奇(くす)しく 水をまとい。

荒れ狂う往古(いにしえ)の夢に
心をかき乱すは 誰(た)ぞ。

あやしくも 神さびたる巨(おお)きな禍ツ霊(マガツヒ)が、
たしかに息衝き、渦巻いている ……

青鈍(あおにび)色の 風切羽。
刀身、遠き天雲(あめぐも)の生き物よ――

詩歌鑑賞:リルケ「秋」他

◆Herbst

Die Blätter fallen, fallen wie von weit,
als welkten in den Himmeln ferne Gärten;
sie fallen mit verneinender Gebärde.

Und in den Nächten fällt die schwere Erde
aus allen Sternen in die Einsamkeit.

Wir alle fallen. Diese Hand da fällt.
Und sieh dir andre an: es ist in allen.

Und doch ist Einer, welcher dieses Fallen
unendlich sanft in seinen Händen hält.

◇秋(リルケ作)

木の葉が落ちる、落ちる、遠くからのように、
天の彼方の庭園が枯れたかのように。
木の葉は否定の身振りをしながら落ちる。

そして夜々には重たい地球が落ちる、
すべての星の間から孤独の中へ。

私たちはみな落ちる。ほらこの手も落ちる。
他のものをみてごらん。落下はすべての内にある。

しかし一者が、この落下を
限りなくやさしくその両手で支えている。