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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

グリーン・エフェメラル

【グリーン・エフェメラル考…緑白(あおじろ)い宇宙観】

今回のエントリは、「なんちゃって断章」としてまとめてみました

「坂下宿」で引用していた、道元『正法眼蔵』の私的解釈といったものになります。『深森の帝國』ならではの、「色眼鏡がかかった解釈」なので、その点ご了承いただければ、幸いです…(正統なアカデミズムにのっとった解釈ではありません)

『正法眼蔵』のエッセンスが濃密に詰まっている…と感じているのが、山頭火の以下の俳句であります…(それで、時代考証を無視して、「坂下宿」に引用したのであります)

生(しょう)を明(あき)らめ死を明らむるは仏家一大事の因縁なり(修証義)
生死(しょうじ)の中の雪ふりしきる…(山頭火)

ここからが、当サイトならではの解釈…「グリーン・エフェメラル考」になります。

宮澤賢治の作品に、以下のような歌があります。

そらに居てみどりのほのほかなしむと地球のひとのしるやしらむや…(宮澤賢治)

この作品を知ったのは割と最近のことなのですが、ほのかな幽体離脱感覚が感じられて、それなりに宇宙的オカルトな歌である…と思っています。なにげに伝統的和歌の範囲も拡張しているらしいのが、また興味深いなという感じです…

宮澤賢治が、本当に幽体離脱体験をしていたかどうかは知りません。ただ、かれは若くして結核をわずらったと言われており、死線をさ迷い続けた時間は、とても深い体験をもたらし続けていた時間でもあったのだろう…と推測するのみです。

昔、個人的に…理由は分かりませんが、宇宙遊泳感のある作品を作った事があります。実を言えば、『深森の帝國』物語そのものの序詩として『深森の鎮魂曲』という詩歌を作っていまして、この作品の、特に「みどりのうみ…」の部分の元となったイメージでもあります:

電場磁場あやと織り成すその果てにプラズマ燃える地球磁気圏…私製

作ったその当時は、まだどのように説明したらよいのか分からずに放置していたのですが、その後、宮澤賢治の歌を知り、山頭火と『正法眼蔵』を知り、今回の物語シーンを構想してみて、個人的にだんだん納得してきた…という気分であります。

(何はなくとも、物語は作ってみるものですね…)

私製の上の歌は、読んで分かるように、オーロラ現象を歌ったものです。

オーロラは、大気中の原子がプラズマ粒子によって励起され発光する光の集合体です:

  • 上空=濃密な酸素原子=レッド
  • 中空=希薄な酸素原子=グリーン
  • 低空=希薄な窒素原子=パープル&ピンク

(参考)オーロラについて詳しいサイト:[オーロラのしくみ

よく見られるのは、希薄な酸素原子が発する緑の炎だそうです。原子核の周りに不確定性の渦を巻いて回転し続ける電子軌道、その軌道の高揚の命はあまりにも短く、その短い一瞬が、あのような美しい緑の…緑白(あおじろ)い光を生み出す。

そして、希薄な大気の中、次にどの酸素原子の軌道が燃えるのかは、まったくの未知の領域にあります。過去にどの原子の軌道が燃えたのかは、分かっている…しかも、その記憶はだんだん薄れてゆくものです。そして、未来にどの原子の軌道が燃えるのかは、分からない。

…「今」という時空は、厳粛なる運命の〈遭遇〉で出来ている…

地球の生命を支える酸素が出す、一瞬の緑の炎…緑のアラベスク。この地球においては、生の贈与も、死の贈与も、酸素の役割…生命に欠かせない水もまた、そうです。水は、水素と酸素の化合物です。

グリーン・エフェメラル…たまゆらの、プラズマの火花。この現し世に、たまさかに映し出されて輝く、一期一会の命の息吹き。(霊能者みたいに「謎のビジョン」で見たわけではなく、単にオーロラの記録動画をじーっと見て、ふと思った、というだけの事ですが…)

個人、個人、というローカルな地球人(アーシアン)の〈場〉も、そのようなものかも知れません。

泉の底のエリキシル…と仮に名づけてみた、そういう、目を開けていられないほどのまばゆい永遠の光に貫かれて、たまさかのこの現し世に、「地球」という名を授かった深い闇の中に、「命」という名前のオーロラを映し出す。

さらに言えば、「宇宙」という事象もまた、時空マトリックスの闇の中に、たまさかに輝くグリーン・エフェメラルでは無いでしょうか…「グリーン・エフェメラル」。当サイトの言葉でイメージングするなら、「みどりのうみ」であり、「深森の鎮魂曲」であります…

電場と磁場の中を揺らぎ続ける、無数の星々の不確定性潮流…自らの重みで重力場を作りながらめぐり続ける生と死の渦巻き、巨大な幻影の中の乱舞。

<渦巻きに関する考察は、螺旋という象徴図形の考察にもつながり、自分でも訳が分からなくなって混乱してくるので、省略です。

…以上のように、『正法眼蔵』の奥義を、詩的に想像してみましたが…

さしたる霊感も無いですし(霊的知識はもっと無いですし)、理系知識の地道な延長に過ぎない平凡なもので…自分が説明できる「何か」と言っても、こんなものだろうなと思いつつ…;

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