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〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)
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長めの付記――印欧語系の文法を日本語に当てはめる事への私見

ここでは、主に述語に着目して観察した結果を述べる。

印欧語系の述語(自動詞/他動詞)は各々、主語の支配を強烈に受け、それに準じた振る舞いをするが、日本語の場合は、述語(動詞・形容詞に相当する要素)こそが文章全体を支配する――という事実がある。

印欧語の文法体系を日本語に当てはめようと企てても、必ず何処かで破綻するのは、以上のせいである。この行き詰まりを以って、「日本語は非論理的」と判断するのはお門違いというものではなかろうか(’’;

「花咲く」・「花美し」の場合は、「咲く」・「美し」の方が支配的であり、「花」は重要ではあるが、宇宙的な流れと構成の中の、一要素に過ぎない。この事象を検討するに、日本語はどちらかというと、森羅万象の命や業(ワザ)に焦点を当て、かつ、これら森羅万象の普遍的構成に応えて言及する、という言葉であろう。

日本語を持ち上げすぎという感じも否めないのではあるが、日本語は日本語なりに、世界に共通する客観的な普遍性を成し遂げた言語であるという可能性がある。

(勿論、万人に通ずる論理を備えていなければ、一言語たりとも成立しないのである。普遍にしたがって言語が生まれてくるのではなく、各言語ごとに、各言語が描き出してみせる普遍世界があるのだ、と想定した方が、
よりまともで健全な考え方だと思われる。我々が見るのは常に、広大無辺なる宇宙の中の一片でしか無い。)

印欧語は、自/他の立場を明確に切り分けた上での客観的普遍性を成し遂げている。そして、日本語は、自/他を明確に切り分けないという立場からの客観的普遍性を作り上げたのではないだろうか。

日本語には、「見ゆ」「覚ゆ」などの、印欧語に最も訳しがたい言葉がある。こういった言葉こそが、日本語の、日本語による普遍的表現の独壇場である。

「花見ゆ」という科白は、「I see flower(s).」では無い。

「我が花見ゆ」だけでは無く、「君も花見ゆ」という意味を同時に含んでおり、しかも、「この場において、我と君だけで無く、他の人も花見ゆ」という広がりを含んでいる。印欧語がセットする普遍の中に定義するところの「I」及び「flower」とは、全く別の世界が、そこに織り上げられている事を示唆しているのである。

我にあらざる我――我も人も、そして花も、共に和するところにある我、すなわち汎世界的我――において、「花見ゆ」なのである。

Iとflowerの別をはるかに超越した「汎世界」と呼ぶべきもの、――その構成の中において、「花見ゆ」と応えているのだ。この深淵における普遍性を欠いては、日本語文法は記述できない筈である。

この主客未分の世界は、言い方を変えれば、汎神論的な世界である。遠藤周作がその著書『深い河』の中で、登場人物(大津の手紙)に次のように語らせた言葉がある。

…日本人としてぼくは自然の大きな命を軽視することには耐えられません。いくら明晰で論理的でも、このヨーロッパの基督教のなかには生命のなかに序列があります。
よく見ればなずな花咲く垣根かな、は、ここの人たちには遂に理解できないでしょう。
もちろん時にはなずなの花を咲かせる命と人間の命とを同一視する口ぶりをしますが、決してその二つを同じとは思っていないのです。

「それではお前にとって神とは何なのだ」……
「神とはあなたたちのように人間の外にあって、仰ぎみるものではないと思います。それは人間のなかにあって、しかも人間を包み、樹を包み、草花をも包む、あの大きな命です」
――遠藤周作『深い河(ディープ・リバー)』、講談社、1993

日本語の伝統を深めてゆくという事は、いとも深き汎世界に生きようとする事と、同義なのではないだろうか。(終)

★(おまけ)―多少、オカルト的なキーワードになるのだが、日本神話の解読研究において、興味深い法則が提唱されている。提唱者は、いわずと知れた有名なオカルティストであるが、元々は元伊勢にある籠神社の神官が発見した法則らしい。詳細はインターネットで研究されたし…

神話物語に見る、日本の神の法則―「多次元同時存在の法則」

1.神の世界に適用される
2.神は時間と空間を超越する
3.神は分身をつくることがある
4.神の分身は別名で表現される
5.同じ名前の神は同一神である

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