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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

詩歌鑑賞:伊藤静雄「かの微笑のひとを呼ばむ」

「かの微笑のひとを呼ばむ」/伊藤静雄

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われ 烈しき森に切に憔(つか)れて
日の了る明るき断崖のうへに出でぬ
静寂はそのよき時を念じ
海原に絶ゆるなき波濤の花を咲かせたり
あゝ 黙想の後の歌はあらじ
われこの魍魅の白き穂波蹈み
夕月におほ海の面(おもて)渉ると
かの味気なき微笑のひとを呼ばむ
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タロット13死

タロット13死

カード・メッセージ=「終末」

主な意味=破滅の予兆、損害、失業、幕切れ、別離、低迷、八方塞がり、行き詰まり、虚偽が剥がれる、面子が剥がれる、挫折、虚栄心がつぶれる、弱点を暴かれる、荒療治、信頼喪失

吹き荒れる吹雪の闇の中、枯れ木の藪の奥に、大鎌を持って傲然と立つ死神…というイメージで描画。運命の軌道が、その先のあらゆる可能性の分岐を失い、ついに終わるところ…

しかし、終末の後に来る新たな運命もあるのです。終わった運命の軌道、その屍を糧として新たに生じてくる軌道…「死」のカードは、正位置/逆位置で様々な読みがあり、最も臨機応変な判断を迫られるカードであると申せましょう

逆位置においては、破滅を免れるものの、蛇の生殺しのような苦しい状態が続く…という読みもあります。当サイト的には、東日本大震災(2011.3.11)の後の福島原発事故の状況に関して、この「死」の逆位置の状況を感じるものであります。死んでも死に切れない、すっきりと終わり切る事の出来ない怨念のようなもの…

ダンテ『神曲』に描かれた地獄の門には、次のような詩文が銘打たれているそうです:

Per me si va ne la città dolente,
per me si va ne l'etterno dolore,
per me si va tra la perduta gente.

Giustizia mosse il mio alto fattore;
fecemi la divina podestate,
la somma sapïenza e 'l primo amore.

Dinanzi a me non fuor cose create
se non etterne, e io etterno duro.
Lasciate ogne speranza, voi ch'intrate.
我を過ぐれば憂ひの都あり、
我を過ぐれば永遠の苦患あり、
我を過ぐれば滅亡の民あり

義は尊きわが造り主を動かし、
聖なる威力、比類なき智慧、
第一の愛、我を造れり

永遠の物のほか物として我よりさきに
造られしはなし、しかしてわれ永遠に立つ、
汝等こゝに入るもの一切の望みを棄てよ・・・(山川丙三郎訳)

☆タロット連作&解釈の一覧を作成=〔ホームページ更新2013.6.14

私製詩歌「雪白の連嶺」

星宿の海
万物の相関 無限の照応
限りなき 光明と暗黒の海よ

半ばは明(あか)く 半ばは暗く
紡がれ 織られる
風(かぜ)と景(ひかり)

そら打つ波の かたちして
天涯に 刻の道標 立ち出でし


かの佳き日
雲ひとつ無き 蒼穹に
澄み明らかに 冴えわたる
――雪白の連嶺よ!


遠白き かの連嶺よ 波浪を止(や)みて
今しばし 一瞥を与えよ わがもとに

永劫を 寄せては返す
流星の結びし軌道(みち)を 逍遥すれば
時知らず さやぐ渚に 立ち尽くす――

星宿の海
はじめもはても 知る人ぞ無き
限りなき 光明と暗黒の海よ


インスピレーション元の他人さまの詩歌たち

◆影見れば波の底なるひさかたの空漕ぎわたるわれぞわびしき/紀貫之『土佐日記』

◆水や空そらや水とも見えわかずかよひてすめる秋の夜の月/『古今著聞集』185読み人知らず

◆みゆるごとあらはれながらとこしへにみえざるものを音といふべき/葛原妙子・作(短歌)