忍者ブログ

制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

イラスト:皆既月食見物の記念

皆既月食(2011.12.10の天文イベント)見物の記念イラスト

赤銅色の月の左下にオリオン座が見え、月の右下に牡牛座が見えました(イラストでは右下を省略)。当時の夜空(星座)の詳細は、下に紹介している「某巨大掲示板まとめブログ」でも趣味人による解説がありましたので、そちらを参照くださいませ^^

当日の外出の用事が済んだ後、住宅の道路の前でだいたい夜中の23:30頃まで頑張って、手持ちの小さな双眼鏡で観察してみました。赤銅色が綺麗に出ており、非常に印象深い光景でした。記憶に残っているうちに、絵日記風にイラストを作成してみたのでありました…^^ゞ

今回の皆既月食では、天体写真にトライした人が多かったらしく、まとめブログも色々見かけました。

久し振りにカラーイラストをもう一個作成してみたので、お披露目。

タイトル(仮)は、単純に「想像の中の瀬織津姫/2011年版」。

翌年が辰年なので、竜神系統の女神というイメージです(背後の光っぽいものは、女神だから後光なのです)。瀬織津姫は水の神・浄化の神としての顔も持っているので、なかなか相応しい役回りだと思っております…^^ゞ

直感のままに下絵無しでいきなり描きだしたので、ちょっと身体のバランスが華奢になりすぎたかな?という感じはありますが、竜神は「細長い姿の神」なので、これで良いかも。元々「人間キャラ」を描こうとした訳ではありませんし…^^;

キャラクターの単(複雑な感じの幸菱で、現代バージョンの模様?)の素材は、[宵居の物語]の素材集からお借りしました。幸菱の単の上での模様配分の面積を知りませんでしたので、身長に対する割合とか、ちょっと大きな感じになってしまったかも知れません(アセアセ)

一番上の袿の模様は、海松(みる)の丸紋の大きいのを自作して貼り付けました。海の中をイメージしたので、碧玉の色という感じの袿です。一番下の単は白色とし、次第に濃紫へ向かって濃くなる…というパターンを採用してみました。平安時代は、「紫の匂」と呼ばれたという色相パターンだそうな…

幸菱の配分パターンとか、もう少し髪の毛を描き足してみるとか、いろいろ課題は見つかりましたが、おおむね満足できる作品に仕上がったと思っております…^^ゞ

PR

深森イラスト遊戯「少女たち」

物語の登場キャラのカラーイラストです(「第一部・第七章」で初登場)

物語は基本的に、カモさんの視点を中心に演出していたので、少女視点のシーンは出てきませんでしたが、このカラーイラストでは、少女中心の視点を意識してみました。

カモさん一行の急な訪問で混乱が続いていた事務棟の中を、廊下側から探っている少女たちであります(=この時、カモさん一行をこれ以上奥に入れるべきかどうか、事務棟に勤める役人たちの間で、パニックが起きていたという設定)。

「柳色の業平菱の汗衫」という設定でしたので、そういう感じで色付けしてみました。物語の中の時節(=旧・五月後半=)らしい、涼やかなイメージになったと思います。ちなみに業平菱のパターンは、当サイト作成です。少女らしい、丸い感じで作っています(男子用の業平菱のパターンは、別にあります)

栗色のクセ髪・ネコ顔の少女は「坂崎-柚羅(ユラ)」。越の国の海岸地方の出身という設定。柚羅の父親・尚房は越の国の海岸地方の役人でしたが、功績を買われて、人事異動(春の除目)で伊勢の国に転勤。柚羅の兄・尚通は成人(元服)したばかりです。父親のツテが余り無いため、正式な官位も職業もありませんが、一通りの教育は受けているので、地方の公務員として就職は出来るかも知れないという状況。ざっと見て、柚羅は「中流公務員の娘」と言う事になります。地方には大勢いたであろう、平凡な「中流の少女」です。

黒色のストレート髪・平凡な顔立ち(つぶらな大きな目が割とポイント)の少女は「玉村-瀬都(セツ)」。越の国の山間部の出身で、数年前の事件で一族郎党を失うと言う目に遭い、精神を病みました。現在は人前に出られる程度には落ち着きましたが、やはり不安定な部分はあります。カモさんの奥方・澄江御前の妹の娘、という縁戚関係があり、カモさん夫婦が引き取っています(=カモさん夫婦には子供が居なかったので、実の姪として歓迎された事は間違い無いのです)

(実際の歴史知識=東北地方の社会構造は、都周辺の社会構造とはかなり違っていました。未開の地が殆どで、寒冷で農業ではとても食えなかったので、農業以外の各種職業の部落が発達。漁業、猟師(マタギ)、馬を管理する「牧」、武士、エトセトラ。都周辺のエリアでは穢れに触れる職業として差別を受けるような職業が多かったのです。血や穢れをタブー視しない浄土宗系の仏教が普及したのも、その辺にあるかも。今でも、関東以東のエリアでは「部落」は社会差別&職業差別に繋がる存在では無く、単に各地の中小村落の代名詞、というところが多いそうです。山がち&未開な地理条件も関係していたと思います)

どうでも良いような細かい設定ですが、瀬都の父母は駆け落ちに近い恋愛結婚でした(=身分差を越えた大恋愛ではあったものの、血筋や身分による縛りは、辺境という事もあって、都ほど厳しくはありませんでした)…^^ゞ

なお、澄江御前も越の出身で、「中の上」あたりの娘です。柚羅と同じような身分の娘でしたが、縁あって上京し、花洛の都でカモさんと結婚しました。ちなみにカモさんもその時は、まだ大納言では無く、地方出身のヒラの若手官僚に過ぎませんでした(身分的には釣り合っていた)

月光の中の散歩、クリフォードの丘/ジョン・クレア

月光の中の散歩(Moon Light Walk) L I 431./『後期詩集』ジョン・クレア

太陽は、愛する者の最後のまなざしのように
塔と樹木に、さよならの笑顔を見せてしまった。
そして全ての森の、蔭という蔭に
私を喜ばせる静寂を残して去った。
その間、周りの全てがたいそう清らかに見えるので
私の神様が近くにおられるのでは、と空想し、
あるいは何か甘い夢のなかにいるのでは、と考える、
この夢では夕べの月が、澄みきって輝いている。

今や夕べの露が降り始めている、
そして砂利の上に月の光線が、あまりに明るく
暗闇に投げかけられて舞い降(くだ)り、輝いているので、
月の光は、拾い上げることができそうに見える。
暗闇に似た柩の黒布より、さらに黒々とした
樅(もみ)の木の低地が、ひとかたまりになった影をなすので
まったく地面がないように見える影のあたりを
触ろうとして腰を屈(かが)めねばならないのも月の明るさ。

夕刻の歌を奏でながら、近くに羽音をたてる
粉ふき黄金(コフキコガネ)は、何ときれいなバグパイプ吹きなのか、
この昆虫は、ハリエニシダに覆われた荒野、厳(いか)つい雑木林で
ただ一人出歩く人に出会ってくれる。
今はもうべちゃくちゃした昼間の語りは終わった、
そしてこの景色をただ一人だけに残してくれた、
だから私は、月光に照らされた散歩道をそぞろに歩く、
この道の楽しみがみな私のものだと想いながら。

*****

クリフォードの丘(Clifford Hill) L II 675./『後期詩集』ジョン・クレア

川は蛇のように くねくねと流れる、
緑の牧草地に沿いながら、
そして夏の季節の夕刻には
水車の回転が大きな響きをたてる。
水車のあたりに水が疾(と)く行き過ぎるのと同じに
ひとのいのちも疾(と)く行き過ぎてゆく。
私は草地のうえに腰をおろす、
この美しい眺めを探るために。

頃は夏の日、そして露多き夕べ、
太陽はうるわしく低くたれ込む、
私は微笑む、しかし心は悲しむ、
水と波が流れ去るから、
あまりに濃き緑の菖蒲を見るから、
太陽があまりに波を輝かせるから。
私はこの愛らしい夕べにここをさまよう、
驚きと歓びとに満たされながら。

クリフォードの丘には、樅(もみ)の木が黒々と見える、
その下には輝いている川、
水車の下では、流れは全て泡立ち、
そばには美しい花々が咲きそろう。
朝も晩も、私がそぞろに歩くのはこのあたりだった、
愛を籠めてじっと眺めながら
夕陽で金色になった光が
向こうの空に落ちてゆくまで――

そうとも、親しいものとして私はこの景色を愛する、
あの樅(もみ)の木に覆われた丘も親しいもの、
この場所ならまったく安全に野鳩は巣作りし、
水車はクリック・クラックと回り続け、
今は《自然》の心地よい休息のなかで
私もしばらくこの場を立ち去る。
蜜蜂は薔薇の花の中に埋もれてしまった、
そして人は労働から去ってしまった。