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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

半導体産業と消費電力・考、2022年

■発電設備と発電電力量(電気事業連合会)
https://www.fepc.or.jp/smp/nuclear/state/setsubi/index.html

2020年データ:年間発電力量10,008億kWh
発電方法:原子力4%、石油等6%、石炭31%、天然ガス39%、水力8%、地熱及び新エネルギー12%

なお2010年から2013年へかけて、原子力発電の割合は急低下(25%から1%へ、翌年2014年に0%になった)。2011年の東日本大震災の影響で、安全を取って、全国の原発が運転停止したため(福島原発の事故)。

半導体工場が建設された九州エリアは、電源構成がバランス良い状態。ロシア・ウクライナ戦争による燃料費高騰の影響を受けにくくなっているため、半導体産業にとっては、安定した電力事情が望める状態。ここに台湾の半導体企業TSMCの工場が誘致され、九州の経済活動を押し上げようとしている。

(電源構成の資料・九州電力、2021年データ)https://www.kyuden.co.jp/rate_adj_power_composition_co2.html
原子力36%、火力36%(石炭21%+天然ガス15%)、石油等0.2%、FIT電気(うち太陽光12%)、再生可能エネルギー3%、水力2%、揚水2%、卸電力取引所6%、その他1%


■TSMCの最先端半導体製造に死角、途上国一国を上回る電力消費量(ブルームバーグ2022.08.26)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-08-26/RH73C8T0AFB401

EUV露光装置の消費電力、一世代前製品の10倍-環境に大きな負荷
自前の発電所建設なしでは半導体業界の電力需要満たせない事態も

世界最先端の半導体製造に用いられる機器は近代工学の奇跡と言える。極端紫外線(EUV)露光装置は人間の目では捉えられない非常に短い波長の光を用いてシリコンウエハーの表面に微細な回路パターンを焼き付ける。10万個の部品で構成され、価格は1億5000万ドル(約205億円)を超えるこの装置を製造しているのは世界でオランダのASMLホールディング1社のみだ。
EUV露光装置は、半導体の小型化・高性能化・省電力化の追求が製造プロセスを一段と複雑かつエネルギー集約的にしている状況も浮き彫りにする。同装置の定格消費電力は約1メガワットと、一世代前の装置の約10倍に増加した。最先端半導体製造でこれに代わる装置がないため、半導体業界は炭素排出削減を目指す世界的取り組みの大きな障害になる可能性がある。
EUV露光装置を最も多く導入しているのは半導体受託生産世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)だ。同装置を80台余り保有するTSMCは現在、台湾南部・台南市の新工場で回路線幅が3ナノ(ナノは10億分の1)メートルの「3ナノ品」用の新世代装置の導入を進めている。同社はこのプロジェクトに200億ドルを投じる計画。
EUV露光装置の運転には大量の電力を要することから、TSMCの電力消費は近く、人口2100万人のスリランカ全体の消費量を上回る見通しだ。2020年の同社のエネルギー消費量は台湾全体の約6%だったが、25年までに12.5%に拡大すると予想されている。
TSMCに加え、米メモリー製造大手マイクロン・テクノロジーも台湾西部の台中市の製造施設にEUV露光装置を少なくとも1台導入する計画。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、チャールズ・シュム氏によると、台湾の半導体受託製造(ファウンドリー)業界では向こう3年以内に全体の生産の4分の1がEUV露光装置を必要とするようになる見通し。
台湾中央大学の梁啟源教授(経営学)は半導体メーカーが自前の発電所を建設しない限り、台湾は電力を半導体業界に回す余裕がなくなるだろうと指摘。予想外の需要急増や供給面の混乱などで生じる電力不足を補う予備的発電能力の目安である運転予備力は当局が十分と見なす10%を年内に下回る可能性が高いと説明した。
半導体業界は台湾経済に不可欠なことから、電力不足が発生した場合は他の業界がより大きな打撃を受ける見通しだ。環境団体グリーンピースの気候・エネルギー分野キャンペーン担当者、トレーシー・チェン氏は「電力不足は必ず生じるだろう」とした上で、「TSMCは台湾のエネルギー供給の大半を消費し、他のセクターにしわ寄せが及ぶことになる」と指摘した。
TSMCの半導体製造が環境に及ぼす影響の大きさは、どのような電源を利用するかに左右される。ベルギーの研究機関IMECのサステナビリティ・プログラム責任者ラーシュオーケ・ラグナルソン氏は「半導体メーカーが電力消費量の極めて多い装置を稼働させているところでは再生可能エネルギーの活用が特に重要かつ急務になっている」と指摘した。
しかし台湾は化石燃料になお大きく依存している。7月公表の直近のエネルギー報告書によれば、21年末時点で再生エネは電力供給全体の6%にとどまった。これを受け、当局者は25年までの目標値を15%に引き下げた。16年に設定した当初の目標は20%だった。サムスン電子がある韓国もなお電力の60%強を石炭・天然ガスに頼っている。
一方、米インテルはアリゾナ、ニューメキシコ、オレゴンの各州の工場がグリーンエネルギーを活用できることも寄与して、21年には再生エネが消費電力の80%を占めた。ただ先端製造技術の利用により総消費電力は大幅に増えている。
ASMLは現在、かつてなく強い需要に直面している。米政府は最先端ではない半導体の製造装置についても中国への販売をやめるよう圧力をかけているが、BIの若杉政寛シニアアナリストによると、そうした中でもASMLの23年売上高は約260億ドルと、30%強増加する見込みだ。同社のロジャー・ダッセン最高財務責任者(CFO)は今年4月、25年のEUV露光装置の出荷目標台数を当初の70台から90台に増やす可能性を検討していると明らかにした。
環境面でよりサステナブルな手法で半導体を製造する方法を見つけることは可能だとしても、半導体業界の拡大自体にブレーキをかけようとする動きはほとんど見られないのが現状だ。IMECのラグナルソン氏は「われわれが取り組まなければならない問題があまりにも多い上に、それを行うには時間もコストもかかる」としながらも、「半導体業界は急速なペースで伸びている。われわれが何もしなければ、問題はさらに悪化するだろう」と指摘した。

■「NILによる超微細半導体の省エネルギー加工技術」が「環境賞」を受賞(ITmedia、2022.05.10)
https://release.itmedia.co.jp/release/sj/2022/05/10/4c1fff59e889e7843526dc7aba622240.html

キヤノン株式会社
「NILによる超微細半導体の省エネルギー加工技術」が「環境賞」を受賞
最先端ロジック製造のパターン形成時における消費電力の大幅削減が可能
キヤノン株式会社(以下キヤノン)、大日本印刷株式会社(以下大日本印刷)、キオクシア株式会社(以下キオクシア)による「NIL(ナノインプリントリソグラフィ)による超微細半導体の省エネルギー加工技術」が、国立研究開発法人 国立環境研究所/日刊工業新聞社主催、環境省後援の「第49回 環境賞※1」で「優良賞」を受賞しました。
NIL技術を使用した半導体製造装置
「FPA-1200NZ2C」
キヤノン、大日本印刷、キオクシアは共同で、既存の半導体製造レベル(最小線幅15nm※2)のNILによるパターン形成に成功しています。これは、現在の最先端ロジック半導体製造レベル(5ナノノード※3)に相当します。NIL技術を半導体製造に適用することで、パターン形成時の消費電力を既存の最先端ロジック向け露光技術と比べて、約10分の1まで削減できます。
「環境賞」では、半導体製造時の消費電力削減に貢献し、今後のIoT社会の急速な拡大を支える技術として評価され、「優良賞」を受賞しました。
半導体露光装置は、半導体デバイスの高性能化に伴い、光源を短波長化することで微細化を達成する歴史が続いてきました。NILは、短波長化に代わる新たな技術として、さらなる微細化を目指しています。従来の露光技術が光で回路を焼き付けるのに対し、NILはパターンを刻み込んだマスク(型)をウエハー上に塗布された樹脂にスタンプのように押し付けて回路を形成します。光学系という介在物がないため、マスク上の微細な回路パターンを忠実にウエハー上に再現できます。複雑な2次元、3次元のパターンを1回のインプリント※4で形成できることもNILの特長の1つです。
キヤノンはこの受賞を励みに、今後も豊かさと環境が両立する未来のため、技術革新で貢献していきます。
※1環境賞の詳細は、ホームページをご覧ください。
https://biz.nikkan.co.jp/sanken/kankyo/index.html
※21nm(ナノメートル)は、10億分の1メートル。
※3半導体製造プロセスの技術世代の呼び名。
※4ナノインプリントを用いたパターニング工程。NIL(ナノインプリントリソグラフィ)の詳細はこちらをご覧ください。
https://global.canon/ja/technology/frontier07.html
<ご参考>
キヤノンテクノロジーサイト
NIL(ナノインプリントリソグラフィ)についてわかりやすく説明しています。
https://global.canon/ja/technology/frontier07.html
キヤノン露光装置サイト
NIL(ナノインプリントリソグラフィ)を含めた露光装置の仕組みや性能をイラストや動画で分かりやすく説明しています。露光の仕組みをやさしく紹介するキッズ向けページも用意しています。
https://global.canon/ja/product/indtech/semicon/50th/
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2019年9月-12月の習作イラスト4点

和風イラスト、ふたつ。使用ツールは「メディバン・ペイント」

◆「秋来ぬと目にはさやかに見えねども」2019年09月14日、制作。

竹製の柵の背景画は、CLIP STUDIO素材サイトより。

ようやく、「透明度の保護」とか「乗算」の意味が分かって来ましたが、まだ何がどうなっているのか分からない状態で、まだ使いこなせているとは言えない…orz

◆「ジャパネスク・クール・ビューティー(習作)」2019年09月14日、制作。

日本独特の美を体現した伝説のモデルをイメージして。「妖艶」が、これほど当てはまる人はいないなとビックリ。筆力の無さをシミジミと感じました。もっと精進しませんと。

◆「古代の中華ワールド風の文人青年」2019年11月04日、制作。

髪ペイント練習の必要あり。鉛筆ツール+水彩描画ツールが、最もイメージに近い軽やかさで描けそう?目元は、もっと大きなピクセル画面で描画すれば細かい部分まで描けるかも知れない。

背景=東京観光の際、「孔子廟」を撮影したもの

◆「江戸時代ワールド風の剣客の青年」2019年11月23日、制作※正式公開は12月01日。

髪ペイント練習のため。「軽やかな黒髪」の表現は難しい。今回は、これはこれで「水墨しっとり系の黒髪」は達成できたと思うけど、別の方法を考えてみる余地あり。背景は前回の「古代の中華ワールド風の文人青年」の時に作成したものを使い回し。

何となくだけど、ヒーローの役回りをする男性キャラの描き方が分かって来た。目元は重要だけど、鼻先や口元も意外にポイント。

物語夢「探査機」1

――予期せぬ事態だ。

全身に爆風を浴び、したたかに揺るがされた後、けたたましいアラート信号が全体に発生した。

地面はなおも震動し続けている。まるで地震だ。私は身をすくめた――つまり緊急セーフモードに入った。

全身の各所に組み込まれたセルフチェック用のサブセンサーが、ダメージを負った場所をチェックし、データを返してくる。私は手早くデータを解析し――そして、絶句した。

化学燃料タンクが半壊した――燃料漏れが起きている。アンテナの半分は衝撃の影響で歪み、正確な観測ができない。滑らかな金属の表面を覆い尽くす電池パネルにも、無視できない数の微細なひびが入った。

姿勢制御センサーが伝えてくる限りでは、どうも機体全体が傾いているらしい。

カメラに関するシステムは、幸い正常に動いている。画像観測は今すぐ可能だ。パノラマ画像のデータを構築できれば、あらかじめ保存した地形データや重力分布データと合わせて、姿勢を正すプログラムが作れる。私はコマンドを発令し、複数の外界カメラを心当たりのある方向に旋回させた。

カメラは、信じがたい光景を映し出した。さっきまでは存在しなかった、大きな岩山と思しき物が、ででんと鎮座ましましている。岩山と思しき巨塊の周りには、目を見張るような窪地――クレーターができていた。

――隕石だ。或いは、宇宙氷と宇宙塵の塊で出来た流れ星というべきか。

その隕石と思しき巨塊は、私が降り立った小天体に匹敵するサイズを持っていた。

こんな物が私を直撃していたら、どうなっていたか。私はカメラを向けたまま硬直するしかなかった。

深宇宙を巡るカイパーベルト天体が、互いに衝突することは極めて珍しいのではないだろうか。たまにフラッと軌道を外れる変わり者がいて、長い長いふらつきの後に主星に向かう彗星となったり、あるいはその間にバラバラになって流星群の元になったりするが、今回のケースのようにお仲間同士で合体するパターンも、考えてみれば、可能性はあったのだ。観測史上初の現象に遭遇するとは、運が良いというべきか悪いというべきか。

だが残念なことに、私が内蔵するプログラム群には、こんな出来事に対応する内容がない。全く予期せぬ出来事であった。私はプログラムの枝分かれを検討し、「深刻なダメージを受けた場合の対応」を探し出した――この状況に当てはまる内容は、あった。これで良いだろう。私はプログラムをスキャンし連続コマンドを打ち出した。機体は、残ったパーツ機器の能力を組み合わせ、母星に向かって、全身状態データ添付の緊急信号を送った。

「転倒あり、機体損壊レベル:高」

今にして思えば、舌足らずな内容だ。だが、プログラムを超えた内容を実行することは、私にはできなかった。人間で言えば、「想像力の限界」とか「想定外」ということになる。カイパーベルト天体同士の衝突という出来事は、まさにそのケースだ。

私は改めてカメラを旋回させた。隕石モドキの飛来方向は、母星の観測機器の視野の及ばない、言わば死角にあった。クレーターを作るほどの速度でやって来たのだ、私が立っているこの小天体の軌道は、大きくずれ始めるはずだ。

私の観測機器に、星々の配置の微小ずれが引っかかった。計算外の異常数値の出現を感知し、 航路計算に関するサブシステムが起動した。私は、そこに余剰計算能力を提供した。小天体の軌道変化を計算すると共に、帰路の軌道計算も並行してスタートさせた。軌道計算には膨大な時間が掛かる。今のうちから概算値を出しておくに越したことはない。

母星の人々がこの珍現象に気付くのは、「およそ5時間後」であろう。それほどに、この深宇宙は、母星から遠く離れていた――離れすぎていた。生身の人間が此処まで来るのは不可能である。

――私は生身の人間ではない。深宇宙探査機に組み込まれた人工知能である。

母星の研究者たちは、人工知能たる「私」に、「アルゲンテウス」という呼称を与えた。イニシャルを適当に展開すれば何らかのサイエンス用語になると聞かされているが、私にとってはどうでも良いことだ。

私はかつて、最先端技術の粋を尽くした宇宙探査機に組み込まれ、母星から打ち上げられた。複数年を掛けて目的の小天体に降り立ち、地上活動用の化学燃料が続く限り、小天体のデータを収集するはずであった。

――任務半ばにして、こんな事になろうとは。

半壊した燃料タンクから化学燃料は流れ出し、極寒の真空の中で凝固した。中に残った燃料も、あっという間に凍てついてゆく。温度変化シールド機能を失ったタンクは、もはや負荷でしかない。

私はサブシステムの計算に基づいて、姿勢制御システムにコマンドを出した。母星の設計者は優秀だ、間もなくして重力センサーが、姿勢立て直し結果に対してOKを返してきた。しかし、人間で言えば「足腰」に当たる部分が、かなり折れ曲がっている。これでは満足な移動は出来ないかも知れない。

化学燃料タンクを失ったのは痛い。私は、余った地上用のエネルギーで何ができるかをサッと計算した。飛び散った隕石の破片が足元に転がっている。興味深いサンプルになるはずだ、私は小天体の欠片と共に、隕石の破片を採集した。

その間にもカメラが旋回し、別の内蔵システムが新たな地形データを作成し、更新した。マルチタスク様々である。

――計算が正しければ、この小天体、「隕石」というコブのついた奇妙奇天烈な形になっているはずだ。

私は改めて、隕石が作ったクレーターを眺めた。

センサーにそって、ノイズに似た奇妙な感覚が移動している。今までのやり方では制御できない、未知の感覚だ。映像データに歪が生じた。エラー信号が入ってはまずい――私は、それを修正した。

――人間の感覚で言えば、私は動転のあまり涙を流していたのかも知れない。

――後で考えてみれば、この予期せぬ出来事との遭遇が、「私」の出発点だったような気がする。