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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

制作プロットのメモ「観月宴」

第二部タタシマ@第七章「観月宴」

日付は全てストーリー上の架空の旧暦のもの

観月宴(基本プロット)
中秋の名月を愛でる大きな宴を鳩屋敷右大臣家で開催する。政敵の派閥や中立の派閥も招待されていて、かなり大規模になるので、政敵の事情を探り出す機会とする

■08/15■

(午後)賀茂大納言の邸宅にてカモさん・鹿深どの(カモの友人)・忍者ハイタカが打ち合わせ~出発前の刻まで

※鏡さんが属していた聖麻王の邸宅では目下あやしい動きがみられる=鳩屋敷の派閥に与する気配。聖麻王(現在は聖麻氏として朝廷に優遇され重役として扱われる)は、外交に関わる部署の次官の立場で、貿易の中継に関する利権は、都の中の豪邸を維持するのに充分な額面になっているが、それを鳩屋敷派閥へ流しているとの情報

【観月宴の開始】

(1)綾敷太政大臣がカモ到着を待ちかねていて、自らの派閥の席に招き、目下、都内で噂されている不穏な内容を情報交換

(2)宴の主役・鳩屋敷の父子がオカルト踊りをしながら「十六夜のオカルト予言」披露。「この満月以降、オカルト百鬼夜行が始まる。鳩屋敷を信じよ。信ずるものは救われる」という内容

(3)カモ方の忍者たち、鳩屋敷邸に侵入。鳩屋敷邸を警備する表の人員と裏の人員。ネコマタ・ハイネが猫の姿の利点をもって大量の情報収集。ついでに忍者ハイタカの遠縁にあたる重役・白川氏は鳩屋敷派閥に参入済み。

(4)京極家の美女姉妹も観月宴に招待され参加している。若い独身の姫が多く、お見合いの側面も。女たち一同で噂話~情報交換。「十五夜の予言(百鬼夜行の発生)」をしたのは「殺生石の女」と呼ばれる謎の女。

(5)カモ方の忍者による鳩屋敷邸宅の内部調査が進む。同時に、京極家の明日香姫が忍者の気配に気づき、こっそり部屋を抜け出す。ネコマタ・ハイネは明日香姫の侍女・峰さんに捕まり、明日香姫の不在の間、姫に化けて代役を務める事に。鳩屋敷家の御曹司が接近していたので、明日香姫の代わりに御曹司へ対応。

(6)忍者ハイタカ、鳩屋敷邸の奥の院で、伊勢暴動に関わった謎カルトの祭壇を発見する。強い術はあるが意外にシンプルな祭壇で、種や仕掛けは分かりにくい。そこへ明日香姫が闖入。明日香姫、持ち前の「女性の勘」で、あっと言う間に隠されていた財宝など見つけ出す=雨竜島の密輸貿易の証拠となる。鳩屋敷家は、密貿易で暴利をむさぼっていたということ。

(7)一方、明日香姫に化けたネコマタ・ハイネと鳩屋敷御曹司の間で「秘蔵の猫の剥製」の話題になり、鳩屋敷御曹司、ウキウキしながら、鳩屋敷邸の奥の院へ向かう。

(8)鳩屋敷御曹司が奥の院の祭壇の間まで入って来たので、忍者ハイタカと明日香姫、あわてて天井へ身を潜める。鳩屋敷御曹司、何も知らない状態で、祭壇の大掛かりな仕掛けを動かす。祭壇の間の床下全体が、持ち上がり式の秘密の蔵(財宝の隠し場所)になっていた。目も眩むほどの大量の財貨。その中に、「秘蔵の猫の剥製」があった。

(9)鳩屋敷御曹司、(明日香姫が物音を立ててしまった)異変に気付き、少し辺りを見回し始めるが、ハイタカの部下タスキが、「扉が開いていたので、うっかり入って来た侍女」変装で、誤魔化す。鳩屋敷御曹司、「秘蔵の猫の剥製」を持って、ネコマタ・ハイネ(明日香姫に化けている)へ見せに行く。

(10)忍者ハイタカと明日香姫、タスキは祭壇の間で見た諸々について申し合わせの後、それぞれの持ち場に戻る。

(11)鳩屋敷御曹司、ハイネに、ネコの剥製を見せる。ハイネは、ショックで化け猫の姿をさらし、御曹司はビックリして「化け猫」と騒ぐ。観月宴の場が騒然となる。その隙に明日香姫はネコマタ・ハイネと入れ替わる。忍者ハイタカとタスキの方でも、「化け猫騒動」により見張り人員たちが混乱した隙を突いて、鳩屋敷邸から退去。

(11)深夜、カモ邸にて、調査結果の検討。「殺生石の女」正体を明らかにする必要がある。わからなければそのままで良いが、早期に判明した方が良い。いずれにせよ雨竜島へ乗り込んで調査する必要が出て来た。

■08/16■

(1)観月宴の後の日、忍者の亮や器物屋たちは引き続き、カルト大尊教の施設を監視。大尊教の中は、大教主の耄碌に伴い、3つの派閥に分かれて後継者闘争しているところ。うち1派閥の手先が、大量の赤土(血の色に見えるほどに赤い)を運搬しているという、謎めいた怪しげな動きを見せる。

(2)忍者ハイタカ、調査結果をまとめ、伏見稲荷の方面にある常陸宮の別荘へ赴く。常陸宮と情報連携するため。(常陸宮は皇族の立場から、カモさんたちをバックアップしている)

(3)ちょうど、常陸宮は、鏡さんや友人の僧形商人・無欲案たちと市場へ出ていて不在。ハイタカと、常陸宮の侍女(留守を預かっていた)夕星御前とで、「殺生石の女」正体を解き開かす。一応のめどはついた=廃太子・叡仁王の侍女らしい。侵入して来ていた敵方の忍者を捕らえる。そこへ常陸宮たちも帰宅していて、さっそく尋問するが、忍者は自決。

(4)常陸宮が戻って来たので情報交換。内容が長引き、夜に至る。ハイタカと夕星御前、問答歌を交わす。(周囲の人たちは「あの2人、良い感じなのでは?」と噂をしているが、本人たちは色気は無い※ただし、互いをシッカリ意識し合ってはいる)

■08/17■

(1)雨天。鏡さんと常陸宮、かつての皇太子だった叡仁王について情報交換。過去の因縁の話。現在の叡都王は、廃太子・叡仁王の息子。こじれてしまってはいる。

(2)話題は桜照君の話にうつる。「言問い」の話。熊野道での神託の考察など。

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詩歌鑑賞:「人と海」ボードレール

人と海/シャルル・ボドレエル/上田敏・訳

こゝろ自由(まま)なる人間は、とはに賞(め)づらむ大海を。
海こそ人の鏡なれ。灘(なだ)の大波(おほなみ)はてしなく、
水や天(そら)なるゆらゆらは、うつし心の姿にて、
底ひも知らぬ深海(ふかうみ)の潮の苦味(にがみ)も世といづれ。

さればぞ人は身を映(うつ)す鏡の胸に飛び入(い)りて、
眼(まなこ)に抱き腕にいだき、またある時は村肝(むらぎも)の
心もともに、はためきて、潮騒(しほざゐ)高く湧くならむ、
寄せてはかへす波の音(おと)の、物狂ほしき歎息(なげかひ)に。

海も爾(いまし)もひとしなみ、不思議をつゝむ陰なりや。
人よ、爾(いまし)が心中(しんちゆう)の深淵探(さぐ)りしものやある。
海よ、爾(いまし)が水底(みなぞこ)の富を数へしものやある。
かくも妬(ねた)げに秘事(ひめごと)のさはにもあるか、海と人。

かくて劫初(ごうしよ)の昔より、かくて無数の歳月を、
慈悲悔恨の弛(ゆるみ)無く、修羅(しゆら)の戦(たたかひ)酣(たけなは)に、
げにも非命と殺戮(さつりく)と、なじかは、さまで好(この)もしき、
噫(ああ)、永遠のすまうどよ、噫、怨念(おんねん)のはらからよ。

詩歌鑑賞:ヘルダーリン「夜」他

夜/ヘルダーリン(作成日不詳)

町は静かにやすらっている。ひっそりとして街灯は灯され
松明をかざして馬車は音立ててすぎてゆく。
昼の喜悦(よろこび)に満ち足りて人々は家路につきながらその日の損益を
はかる。せわしい市場にも
いまは花も葡萄も手芸の品々の影もない。
だが遠くの闇からは手すさみの楽の音がひびいてくる。おそらくは
恋する者が弾くのであろうか。それとも孤独のものが、
遠い友らを、また若い日を偲ぶのであろう。噴水は
絶え間なくほとばしって におやかな花壇をうるおしている。
暮れすすむ空にはいま 静かに鐘がひびき、
夜番は時を告げて過ぎてゆく。
ふと風が起って森の梢をうごかす。
みよ! 私たちの大地の影、月も
いまひそやかに立ち昇る。物思う夜が
満天の星をやってきたのだ。わたしたちにはかかわる気配もなく
その壮麗のものは人間のあいだの異郷の客として昇ってくる、
かなたの山の空から悲しげに またかがやかに。

秋/ヘルダーリン

かつてあって、また立ち帰ってくる生気についての
言い伝えは 大地を去っていたが、
それがまた人の世に帰ってくる。そして、多くのことを
われわれは 急速に去ってゆく季節から学ぶのだ。

過去のもろもろの形姿は 自然から
棄てられはしなかった、夏の盛りに
日々が色あせても、秋が大地にくだってくれば
畏懼(いく/おそれ)を呼びおこす霊気がまた空にうまれてくる。

またたくまに多くのことが終わった。
犂を駆って野にいそしんでいた農夫は見る、
年がよろこばしい終わりに向って傾くのを。
このような形姿のうちに人の日の完成はある。

巌をかざりとして広がる大地は
夕べに失せてゆく雲にひとしいものではない。
それは金いろの昼とともに現われる、
そしてこの完成には嘆きの声はふくまれない。
(手塚富雄訳)

*****

Der Herbst

Das Glänzen der Natur ist höheres Erscheinen,
Wo sich der Tag mit vielen Freuden endet,
Es ist das Jahr, das sich mit Pracht vollendet,
Wo Früchte sich mit frohem Glanz vereinen.

Das Erdenrund ist so geschmückt, und selten lärmet
Der Schall durchs offne Feld, die Sonne wärmet
Den Tag des Herbstes mild, die Felder stehen
Als eine Aussicht weit, die Lüfte wehen

Die Zweig’ und Äste durch mit frohem Rauschen,
Wenn schon mit Leere sich die Felder dann vertauschen,
Der ganze Sinn des hellen Bildes lebet
Als wie ein Bild, das goldne Pracht umschwebet.