忍者ブログ

制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

2008.8.17ホームページ更新

物語ノ時空・・・『八羽根叙事』の中の記事というスタイルで、「審神者」とそのジャッジ(審神)についての私観をアップしました。

◆審神者・・・境界の「知」
http://mimoronoteikoku.tudura.com/garden/legend/saniwa.html

詩的考察というよりは、幾許か推論に似た調子の文章になりましたが、今ここに生起する、今まさに目撃している「現実」「事象」とは何か?について、審神プロセスの考察を通じて、一考のタネを提供できたかなと思っております。

事象を考察するとき、その世界に飲み込まれる(洗脳される)でもなく、かといって完全に拒絶して、無関係なる「他人事」としてナナメに見るでもなく、そうした絶妙な距離をもって当該事象と辛抱強く対峙し続けているうちに何かしら当意即妙といったひらめき(占断・示唆・直観)が得られるのでは?と思っています。

とはいえ、人間たるもの、感情や思想で揺れ動く生き物であり、「歴史」という名の壮大な物語を生きている存在であり、そもそもの「絶妙な距離感」というのが、なかなかムツカシイですが…

《古代日本の審神者について》

かつて、政治と祭事がそれほど厳密に区分されていなかった古代、日本の神道には、降神術とも言えるものがありました。霊媒師と審神者(サニワ)でチームを組み、神の託宣を聞き伝えるというものです。

霊媒師は神を降ろす役目。依坐・巫女といった、霊感(或いは超感覚)の発達した人が務めます。神を降ろす時には、梓弓(あづさゆみ)と呼ばれる、聖別された弓を弾いたという事です。これが和琴の原型となったと言われています。

一方、審神者は、霊媒に降りてきた「神」の真偽を質す役目です。審神者は、「神」を鑑識するために、およそあらゆる異族の神々やその由緒をも究めている必要がありました。このような事実は、審神者とは、およそありとあらゆる世界観に通じている者であった、あるいは「現実とは何か、神の本質とは何か」について、優れた洞察力を備えた者であったという事を示唆しています。

時代を下って、神仏習合による万華鏡的な霊的世界を整えてゆくにしたがって、この種の慣習は薄れてゆきました。しかし、明治の国家神道および廃仏毀釈運動によって、こうした霊的世界が崩壊します。すると再び、この霊媒師―審神者のチームによる託宣の慣習が復活してきました。

「神」、あるいは「神のようなもの」――とは何でしょうか。霊媒師は何を感じ取って(何を降ろして)いたのでしょうか。そもそもわが国においては、真の神々は古代より「姿無きモノ」であり、通常の環境ではなかなか感受しにくい存在であると考えられていたようです。

中世を生きた西行にいたっては、「何ごとのおはしますかは知らねども――」と歌っています。

当サイトでは、霊媒師が感受し、審神者が深い考察の末にジャッジしたものは、汎世界レベルでの「境界知」ではなかったか――と解釈するものです。

PR

色彩絵:竜と剣のファンタジー

題材になった物語は特にありません。ふと、ポンと出て来たイメージであります♪

いわゆる、一般的な中世西洋風ファンタジーに属するイメージで、「ドラゴンと剣」の要素を含みます。人物は中性的な印象ですが、少女の方がしっくり来るかも知れません。

とりあえず考えてみたタイトル「星影の城/赤い竜と剣の巫女」

色々想像してみるに、この少女は、おそらく、竜の生息地に近い辺境の神殿で保護している小さな竜とパートナーを組み、魔法が関わるような不可解なトラブルを解決して回る巫女兼剣客(巫女修行中であり、武者修行中でもある)、といったキャラクターになりますでしょうか

人物の名前(捨て子のため、家名は無し)=ステラ

小さな赤い竜の名前=フレイア

城の名前=王国の名前に同じ=考え中

異世界ファンタジー試作14

異世界ファンタジー5-1危機回避の後の夜と朝:神祇官と祖母

――養老アパートの一室。

奥にある一番広い寝室では、祖母がいつものように、静かに寝入っている。

回復を促す効果のある薬草風呂の後、数種の薬草を処方され、ロージーは居間にセットされたソファ兼ベッドに落ち着き、改めてライアナ神祇官による《宿命図》の観測を受けた。ライアナ神祇官の予想によれば《死兆星》は消えているはずだが、実際に読み出してみなければ確かなことは言えない。

更に、《死兆星》に完全に侵されながらも、不自然な横死を回避したケースは非常に少ない。その前後の《宿命図》の変化パターンでも分からないことが多く、目下、国家レベルでサンプル収集が奨励され、研究対象になっているという事もある。

ライアナ神祇官は《宿命図》を抽出する作業を続けながら、ロージーに語り掛けた。

「ロージー様、さっき馬車で送ってくださった監察官、綺麗な男性でしたねえ。無紋の馬車だったから何処のお貴族様か分からなかったけど、お名前は聞いてますか?改めてお礼の品をお屋敷にお持ちできれば…と思うのだけど」
「ごめんなさい、名前は知らないから。それに彼は賄賂を取り締まる側だから、お礼の品をお持ちしても受け取らないわ、きっと」
「窮屈ですねえ。――ま、微妙なケースだから仕方ないですかね…」

ライアナ神祇官は、物思わしげに溜息をついたロージーを、不思議そうに眺めた。

「ロージー様、もしかして今、恋してますか?」

ストレートな問い掛けだ。ロージーは真っ赤になった。

「で、お相手は、あの監察官ですか?――《運命の人》?」

――鋭い。図星を突かれたロージーは真っ赤になったまま、口をパクパクさせるのみだった。

「し、《宿命図》で、そんな事まで分かる物なんですか?」
「んー、《運命の人》は幅があるから、《宿命の人》に比べると特定しにくいのねー。でも私は大勢の人を見てきましたからね、だいたい雰囲気で分かりますよ。ロージー様は恋する乙女の目であの馬車を見送っていたから」

ライアナ神祇官の顔には、憂いが浮かんでいた。婚約者の居る身で、別の恋人ができてしまった。それは間違いなく、禁断の恋。

「ロージー様、今日は大変な日だったから色々お疲れでしょう。もう寝ていてくださいな。一週間の強制的な隔離休養を勧めます――王宮や婚約者殿への連絡は、このライアナ神祇官にお任せくださいね」
「済みません――よろしくお願いします」

ロージーは小さく息をつくと、掛け布団の下に潜り込み目を閉じた。

*****

翌日、ライアナ神祇官はロージーの体調をチェックし、風邪の時と同じくらい疲労レベルは高いが、安定していると判断を下した。そして、早速ロージーの《宿命図》や診断書を携えて、王宮へと出掛けて行った。

空は高く青く晴れ渡り、上空には強い季節風が吹き続けていた。冬の到来を暗示する雲群が少しずつ厚みを増している。

――父と母の眠る共同墓地――あの北部辺境の雑木林は、既に深い根雪に覆われているだろう。

ロージーはあの白いショールをまとい、居間の窓からいつもと変わらぬストリートを眺めながら、物思いに沈んだ。

やがて一刻、祖母の様子を見る時間だ。祖母は一日中眠りに沈むようになったし、特に変化は無いとは思うが――ロージーは以前のペース時間で、祖母の眠る寝室へと向かった。

――祖母の目は、パッチリと開いていた。シッカリと焦点を合わせ、ベッド脇に近づくロージーを見つめていた。

「お祖母さん?」
「ロージー、調子はどう?昨夜は知らない人に襲われていたでしょう?怪我は大丈夫なの?」

昨夜は、祖母は深い眠りの中にあり、意識が無かったはずだ。どうして――ロージーは事態が理解できず、絶句するばかりだった。それが顔に出ていたのであろう、祖母は更にロージーを呼び、傍の椅子に座るように促した。

「やっぱりそうだったのね。私も夢を見ているのかと思ってて。ここのところ、意識が身体を抜けてあちこち浮いている夢が多くて。夢なのか、私が実際に幽霊か何かになってそこを漂っているのか…見ているものは分かるんだけど現実感が無くて」

祖母は、ロージーが襲撃されていたところを、最初から最後まで――妙な形ではあるが――目撃していたのだ。

「すごく嫌な感じがするから、そっち行っちゃダメよ、危ないわよって何度も言ったんだけど、ロージーはドンドン行っちゃって…もう、焦ったわよ。人相の良くない方の男が――何でか竜体もボンヤリと重なって見えるんだけど、貴族クラスと同じくらい大きかったわね――ナイフを大きく振りかぶっていたから、はたき落そうとパタパタ手をやっていたけど。――あら?ロージーのコートがパッと広がっていたけど、あれ、風だったのかしら?」

ロージーは信じられない思いで、祖母の説明に聞き入った。ロージーがショックの余り覚えていない事すら、知っているのだ。

「そ…それじゃ、あの、監察官の、あの人のことも…」

ロージーはそう言いかけながらも、昨夜の馬車の中での告白の事を思い出して真っ赤になった。祖母は目をパチパチさせた。

「…ロージーを助けてくれたのは、その人なの?私はロージーが助かったところを見てないのよ。気が付いたら、あの危ない二人は地面に転がっていて、あの場所には王宮の衛兵がドンドン集まってきてたわ。あの危ない二人…ロージーがやったとは思えない程の重傷だったから、ずっと謎だったんだけど」

祖母は暫し思案に沈んでいたが、やがて何かがパッと閃いたようだ。

「その人、高位の竜人なのね。一定以上の高位の竜人は、何となく気配は伝わってくるんだけど見えてなかったから。多分、存在感とかが、こっちの感覚レベルをオーバーしてしまうのね。 存在感ダダ漏れな人はバッチリ分かるんだけど、礼儀正しく気配を消されたら――何と言うか、遮蔽シールドが掛かってるとか、ベールが掛かってるとか、そんな感じかしら」

ロージーには、思い当たることが大いにあった。

あの監察官は上手に気配を消していたのであろう、高位の竜人に付き物の、気が詰まるような威圧感は、余り感じなかったのだ。感じたのは一回だけ。食堂でナンパして来た金髪碧眼の貴公子から、ロージーをかばった時だ。周囲の気温が一気に下がるような、凍て付いた殺気――あの金髪碧眼の貴公子の威圧感と対峙するには、もう少し気を張っていた方が良かったのかも知れないが、その時でさえ監察官は、ロージーに配慮して必要最小限のみに抑えていたに違いない。

祖母はじっとロージーを見つめていた。そして、不意にニッコリ微笑む。

「ロージー、恋してるのね。その人に」

何で分かるんですか。ロージーは、ライアナ神祇官に続いてのズバリとした指摘に、あわあわするばかりだった。