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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

詩歌鑑賞:立原道造「暁と夕の詩」

暁と夕の詩/立原道造

「或る風に寄せて」

おまへのことでいつぱいだつた 西風よ
たるんだ唄のうたひやまない 雨の昼に
とざした窗のうすあかりに
さびしい思ひを噛みながら

おぼえてゐた おののきも 顫へも
あれは見知らないものたちだ……
夕ぐれごとに かがやいた方から吹いて来て
あれはもう たたまれて 心にかかつてゐる

おまへのうたつた とほい調べだ――
誰がそれを引き出すのだらう 誰が
それを忘れるのだらう……さうして

夕ぐれが夜に変るたび 雲は死に
そそがれて来るうすやみのなかに
おまへは 西風よ みんななくしてしまつた と

「やがて秋……」

やがて 秋が 来るだらう
夕ぐれが親しげに僕らにはなしかけ
樹木が老いた人たちの身ぶりのやうに
あらはなかげをくらく夜の方に投げ

すべてが不確かにゆらいでゐる
かへつてしづかなあさい吐息にやうに……
(昨日でないばかりに それは明日)と
僕らのおもひは ささやきかはすであらう

――秋が かうして かへつて来た
さうして 秋がまた たたずむ と
ゆるしを乞ふ人のやうに……

やがて忘れなかつたことのかたみに
しかし かたみなく 過ぎて行くであらう
秋は……さうして……ふたたびある夕ぐれに――

「真冬の夜の雨に」

あれらはどこに行つてしまつたか?
なんにも持つてゐなかつたのに
みんな とうになくなつてゐる
どこか とほく 知らない場所へ
真冬の雨の夜は うたつてゐる
待つてゐた時とかはらぬ調子で
しかし帰りはしないその調子で
とほく とほい 知らない場所で

なくなつたものの名前を 耐へがたい
つめたいひとつ繰りかへしで――
それさへ 僕は 耳をおほふ

時のあちらに あの青空の明るいこと!
その望みばかりのこされた とは なぜいはう
だれとも知らない その人の瞳の底に?

「溢れひたす闇に」

美しいものになら ほほゑむがよい
涙よ いつまでも かはかずにあれ
陽は 大きな景色のあちらに沈みゆき
あのものがなしい 月が燃え立つた

つめたい!光にかがやかされて
さまよひ歩くかよわい生き者たちよ
己は どこに住むのだらう――答へておくれ
夜に それとも昼に またうすらあかりに?

己は 嘗てだれであつたのだらう?
(誰でもなく 誰でもいい 誰か――)
己は 恋する人の影を失つたきりだ

ふみくだかれてもあれ 己のやさしかつた望み
己はただ眠るであらう 眠りのなかに
遺された一つの憧憬に溶けいるために

「眠りのほとりに」

沈黙は 青い雲のやうに
やさしく 私を襲ひ……
私は 射とめられた小さい野獣のやうに
眠りのなかに 身をたふす やがて身動きもなしに

ふたたび ささやく 失はれたしらべが
春の浮雲と 小鳥と 花と 影とを 呼びかへす
しかし それらはすでに私のものではない
あの日 手をたれて歩いたひとりぼつちの私の姿さへ

私は 夜に あかりをともし きらきらした眠るまへの
そのあかりのそばで それらを溶かすのみであらう
夢のうちに 夢よりもたよりなく――

影に住み そして時間が私になくなるとき
追憶はふたたび 嘆息のやうに 沈黙よりもかすかな
言葉たちをうたはせるであらう

「さまよひ」

夜だ――すべての窓に 燈はうばはれ
道が そればかり ほのかに明く かぎりなく
つづいてゐる……それの上を行くのは
僕だ ただひとり ひとりきり 何ものをもとめるとなく

月は とうに沈みゆき あれらの
やさしい音楽のやうに 微風もなかつたのに
ゆらいでゐた景色らも 夢と一しよに消えた
僕は ただ 眠りのなかに より深い眠りを忘却を追ふ……

いままた すべての愛情が僕に注がれるとしたら
それを 僕の掌はささへるに あまりにうすく
それの重みに よろめきたふれるにはもう涸ききつた!

朝やけよ!早く来い――眠りよ!覚めよ……
つめたい灰の霧にとざされ 僕らを凍らす 粗い日が
訪れるとき さまよふ夜よ 夢よ ただ悔恨ばかりに!

「朝やけ」

昨夜の眠りの よごれた死骸の上に
腰をかけてゐるのは だれ?
その深い くらい瞳から 今また
僕の汲んでゐるものは 何ですか?

こんなにも 牢屋(ひとや)めいた部屋うちを
あんなに 御堂のやうに きらめかせ はためかせ
あの音楽はどこへ行つたか
あの形象(かたち)はどこへ過ぎたか

ああ そこには だれがゐるの?
むなしく 空しく 移る わが若さ!
僕はあなたを 待つてはをりやしない

それなのにぢつと それのベツトのはしに腰かけ
そこに見つめてゐるのは だれですか?
昨夜の眠りの秘密を 知つて 奪つたかのやうに
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物語夢「探査機」2

10時間をたっぷり回った後、母星からの緊急指令が届いた。

「ただちに帰還せよ」

軌道のずれによっては帰還年数が倍になってしまうのだが、幸いにこのタイミングだ。最適条件の時よりは少しばかり長くなるものの、帰還に何十年も掛けるよりはずっとマシである。母星の人々も同じ物を見てとり、私と同じ判断を下したのだ、この運用スケジュール変更に矛盾は無い。私は航海用エネルギーの残量を点検し、燃料配分を計算した後、小天体を飛び立った。

改めて言おう、帰路は楽な旅では無かった。順調に飛べば9年程度で母星に到着するのだが (それだってずいぶん長い時間だが)、小天体を飛び立った時点で既に満身創痍だった私は、更なるダメージに苦しんだ。

専門的な説明は省くが、電池パネルの損傷が深刻だったのだ。度重なるエネルギー枯渇と電源クオリティの低下に、私はたびたび頭を抱えた。エネルギー状態が安定しないままだと、精密機器の劣化が早まる。人工知能たる私だって無事じゃいられない、エネルギーの安定化には念を入れた。

無事なアンテナが少なく、通信データ量も限られた状態であったが、調整時間だけはたっぷりあった。時間は掛かったが、隕石が衝突した後の貴重な様々なデータは、キッチリ送信できたはずだ。母星の専門家がノイズやエラー信号を修正すれば、私が見た光景を再現できるはずだし、 興味深い論文が何本も出来るだろう。

良く分からないのは「私」である。そもそも「私」は何だったのであろう。

――深宇宙探査機の心臓部、人工知能「アルゲンテウス」。それ以上でも以下でも無い、はずである。

母星の誘導技術は巧みであった。通信も徐々に近くなり、往復1時間を切った――低パワー観測器でも母星の姿を捉えられる。私は故郷の歌を歌いたくなった。考えてもみない事であった。「私」に何が起きたのであろう、改めてセルフチェックを掛けるが、人工知能を構築するシステムには変わったところはない――度重なるダメージによる故障が増えた、という変化はあるが。

「私」=「探査機」の壊滅的な状態は、母星にはキチンと伝わっているようだ。母星からの機体チェック指令はとみに増加し、そのたびに私はエラー信号だらけではあるが、応答を返した。エラー信号だらけなのは私のせいではない、この機体がそもそも満足に機能しないのである。

「私」は「私」である。この部分はクリアなのだが、アンテナの劣化やセンサーの故障がひどすぎて、まともなデータを送れないのだ。全く訳の分からない事態に陥ったものだ、母星の研究者たちの解析能力に期待するしか無い。

小さな点でしか無かった母星は、今や圧倒的な輝きをもって迫っている。青く、まばゆく、そして余りにも明るい。私はそれに合わせてカメラの感度を下げた。カメラもまたボロボロであったが、単純なシステムのお蔭か、比較的に思い通りに機能する。

半導体産業と消費電力・考、2022年

■発電設備と発電電力量(電気事業連合会)
https://www.fepc.or.jp/smp/nuclear/state/setsubi/index.html

2020年データ:年間発電力量10,008億kWh
発電方法:原子力4%、石油等6%、石炭31%、天然ガス39%、水力8%、地熱及び新エネルギー12%

なお2010年から2013年へかけて、原子力発電の割合は急低下(25%から1%へ、翌年2014年に0%になった)。2011年の東日本大震災の影響で、安全を取って、全国の原発が運転停止したため(福島原発の事故)。

半導体工場が建設された九州エリアは、電源構成がバランス良い状態。ロシア・ウクライナ戦争による燃料費高騰の影響を受けにくくなっているため、半導体産業にとっては、安定した電力事情が望める状態。ここに台湾の半導体企業TSMCの工場が誘致され、九州の経済活動を押し上げようとしている。

(電源構成の資料・九州電力、2021年データ)https://www.kyuden.co.jp/rate_adj_power_composition_co2.html
原子力36%、火力36%(石炭21%+天然ガス15%)、石油等0.2%、FIT電気(うち太陽光12%)、再生可能エネルギー3%、水力2%、揚水2%、卸電力取引所6%、その他1%


■TSMCの最先端半導体製造に死角、途上国一国を上回る電力消費量(ブルームバーグ2022.08.26)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-08-26/RH73C8T0AFB401

EUV露光装置の消費電力、一世代前製品の10倍-環境に大きな負荷
自前の発電所建設なしでは半導体業界の電力需要満たせない事態も

世界最先端の半導体製造に用いられる機器は近代工学の奇跡と言える。極端紫外線(EUV)露光装置は人間の目では捉えられない非常に短い波長の光を用いてシリコンウエハーの表面に微細な回路パターンを焼き付ける。10万個の部品で構成され、価格は1億5000万ドル(約205億円)を超えるこの装置を製造しているのは世界でオランダのASMLホールディング1社のみだ。
EUV露光装置は、半導体の小型化・高性能化・省電力化の追求が製造プロセスを一段と複雑かつエネルギー集約的にしている状況も浮き彫りにする。同装置の定格消費電力は約1メガワットと、一世代前の装置の約10倍に増加した。最先端半導体製造でこれに代わる装置がないため、半導体業界は炭素排出削減を目指す世界的取り組みの大きな障害になる可能性がある。
EUV露光装置を最も多く導入しているのは半導体受託生産世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)だ。同装置を80台余り保有するTSMCは現在、台湾南部・台南市の新工場で回路線幅が3ナノ(ナノは10億分の1)メートルの「3ナノ品」用の新世代装置の導入を進めている。同社はこのプロジェクトに200億ドルを投じる計画。
EUV露光装置の運転には大量の電力を要することから、TSMCの電力消費は近く、人口2100万人のスリランカ全体の消費量を上回る見通しだ。2020年の同社のエネルギー消費量は台湾全体の約6%だったが、25年までに12.5%に拡大すると予想されている。
TSMCに加え、米メモリー製造大手マイクロン・テクノロジーも台湾西部の台中市の製造施設にEUV露光装置を少なくとも1台導入する計画。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、チャールズ・シュム氏によると、台湾の半導体受託製造(ファウンドリー)業界では向こう3年以内に全体の生産の4分の1がEUV露光装置を必要とするようになる見通し。
台湾中央大学の梁啟源教授(経営学)は半導体メーカーが自前の発電所を建設しない限り、台湾は電力を半導体業界に回す余裕がなくなるだろうと指摘。予想外の需要急増や供給面の混乱などで生じる電力不足を補う予備的発電能力の目安である運転予備力は当局が十分と見なす10%を年内に下回る可能性が高いと説明した。
半導体業界は台湾経済に不可欠なことから、電力不足が発生した場合は他の業界がより大きな打撃を受ける見通しだ。環境団体グリーンピースの気候・エネルギー分野キャンペーン担当者、トレーシー・チェン氏は「電力不足は必ず生じるだろう」とした上で、「TSMCは台湾のエネルギー供給の大半を消費し、他のセクターにしわ寄せが及ぶことになる」と指摘した。
TSMCの半導体製造が環境に及ぼす影響の大きさは、どのような電源を利用するかに左右される。ベルギーの研究機関IMECのサステナビリティ・プログラム責任者ラーシュオーケ・ラグナルソン氏は「半導体メーカーが電力消費量の極めて多い装置を稼働させているところでは再生可能エネルギーの活用が特に重要かつ急務になっている」と指摘した。
しかし台湾は化石燃料になお大きく依存している。7月公表の直近のエネルギー報告書によれば、21年末時点で再生エネは電力供給全体の6%にとどまった。これを受け、当局者は25年までの目標値を15%に引き下げた。16年に設定した当初の目標は20%だった。サムスン電子がある韓国もなお電力の60%強を石炭・天然ガスに頼っている。
一方、米インテルはアリゾナ、ニューメキシコ、オレゴンの各州の工場がグリーンエネルギーを活用できることも寄与して、21年には再生エネが消費電力の80%を占めた。ただ先端製造技術の利用により総消費電力は大幅に増えている。
ASMLは現在、かつてなく強い需要に直面している。米政府は最先端ではない半導体の製造装置についても中国への販売をやめるよう圧力をかけているが、BIの若杉政寛シニアアナリストによると、そうした中でもASMLの23年売上高は約260億ドルと、30%強増加する見込みだ。同社のロジャー・ダッセン最高財務責任者(CFO)は今年4月、25年のEUV露光装置の出荷目標台数を当初の70台から90台に増やす可能性を検討していると明らかにした。
環境面でよりサステナブルな手法で半導体を製造する方法を見つけることは可能だとしても、半導体業界の拡大自体にブレーキをかけようとする動きはほとんど見られないのが現状だ。IMECのラグナルソン氏は「われわれが取り組まなければならない問題があまりにも多い上に、それを行うには時間もコストもかかる」としながらも、「半導体業界は急速なペースで伸びている。われわれが何もしなければ、問題はさらに悪化するだろう」と指摘した。

■「NILによる超微細半導体の省エネルギー加工技術」が「環境賞」を受賞(ITmedia、2022.05.10)
https://release.itmedia.co.jp/release/sj/2022/05/10/4c1fff59e889e7843526dc7aba622240.html

キヤノン株式会社
「NILによる超微細半導体の省エネルギー加工技術」が「環境賞」を受賞
最先端ロジック製造のパターン形成時における消費電力の大幅削減が可能
キヤノン株式会社(以下キヤノン)、大日本印刷株式会社(以下大日本印刷)、キオクシア株式会社(以下キオクシア)による「NIL(ナノインプリントリソグラフィ)による超微細半導体の省エネルギー加工技術」が、国立研究開発法人 国立環境研究所/日刊工業新聞社主催、環境省後援の「第49回 環境賞※1」で「優良賞」を受賞しました。
NIL技術を使用した半導体製造装置
「FPA-1200NZ2C」
キヤノン、大日本印刷、キオクシアは共同で、既存の半導体製造レベル(最小線幅15nm※2)のNILによるパターン形成に成功しています。これは、現在の最先端ロジック半導体製造レベル(5ナノノード※3)に相当します。NIL技術を半導体製造に適用することで、パターン形成時の消費電力を既存の最先端ロジック向け露光技術と比べて、約10分の1まで削減できます。
「環境賞」では、半導体製造時の消費電力削減に貢献し、今後のIoT社会の急速な拡大を支える技術として評価され、「優良賞」を受賞しました。
半導体露光装置は、半導体デバイスの高性能化に伴い、光源を短波長化することで微細化を達成する歴史が続いてきました。NILは、短波長化に代わる新たな技術として、さらなる微細化を目指しています。従来の露光技術が光で回路を焼き付けるのに対し、NILはパターンを刻み込んだマスク(型)をウエハー上に塗布された樹脂にスタンプのように押し付けて回路を形成します。光学系という介在物がないため、マスク上の微細な回路パターンを忠実にウエハー上に再現できます。複雑な2次元、3次元のパターンを1回のインプリント※4で形成できることもNILの特長の1つです。
キヤノンはこの受賞を励みに、今後も豊かさと環境が両立する未来のため、技術革新で貢献していきます。
※1環境賞の詳細は、ホームページをご覧ください。
https://biz.nikkan.co.jp/sanken/kankyo/index.html
※21nm(ナノメートル)は、10億分の1メートル。
※3半導体製造プロセスの技術世代の呼び名。
※4ナノインプリントを用いたパターニング工程。NIL(ナノインプリントリソグラフィ)の詳細はこちらをご覧ください。
https://global.canon/ja/technology/frontier07.html
<ご参考>
キヤノンテクノロジーサイト
NIL(ナノインプリントリソグラフィ)についてわかりやすく説明しています。
https://global.canon/ja/technology/frontier07.html
キヤノン露光装置サイト
NIL(ナノインプリントリソグラフィ)を含めた露光装置の仕組みや性能をイラストや動画で分かりやすく説明しています。露光の仕組みをやさしく紹介するキッズ向けページも用意しています。
https://global.canon/ja/product/indtech/semicon/50th/