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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

2009.12.27ホームページ更新

深森の帝國ホームページに、考察エッセイをひとつ追加しました。

物語ノ時空セクション/近代精神の底に…知性の勝利と霊性の敗北
=直通アドレス=[http://mimoronoteikoku.tudura.com/garden/legend/byzantine.html

>>参考記事(書籍の読書記録)

このエッセイの原形を思いついたのが1ヶ月前なので、考察の文章を練るのに1ヶ月くらいかかった訳で、何だかとんでもない難産でありました(イメージ原形までさかのぼると、2009年夏になります)。

ふと思い立って大室幹雄・著『劇場都市』を読んでみたら、その後でにわかにインスピレーションが湧いたのか、自然に文章が出てきました。

これにはとっても驚かされた…と同時に、東西の教養に広く通じておられる人の緻密な文章を読むというのは、やっぱり色々な意味で、ものすごく刺激になるのだなあ、と実感しています…^^ゞ

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リーメンシュナイダー小話

★ティルマン・リーメンシュナイダーという中世ドイツの神秘主義彫刻家★

ヨーロッパ中世の神秘思想を論じた各種文献をつらつらとめくっていると、気になる名前に出会いました。

中世ドイツの彫刻家、ティルマン・リーメンシュナイダー(1460-1531)。

彼は神秘主義に生きた芸術家であり、彼の彫刻はいずれも、深い観照の体験から来る稀有の完成度に達している作品なのである…と、評価されています。ロマンチック街道沿いに多くの作品を残しておられるそうです。

特にリーメンシュナイダーの神秘主義思考がよく表現されているといわれる作品が、「ロザリオの中のマリア(薔薇の花冠の中のマリア)」と呼ばれる作品だという事です。

ドイツ語では多分、「Maria im Rosenkrantz」と綴られている作品。この作品で扱われている薔薇の象徴性は、うっすらと、錬金術的-宇宙思想における薔薇の象徴性とも、微妙につながっているような…という気配が感じられるのだとか…^^

ちょっと驚いたのが、あの井筒俊彦氏が、中世ヨーロッパの神秘思想にも踏み込んで論じておられる事でした。

今後の勉強のために、気になるくだりをメモ:

〝歴史的概念としての《Mystik》は、イオニアの自然体験および密儀宗教に端を発するヘレニズムと、旧約聖書に端を発するヘブライズムの二大宗教思潮が基督教を通じて相合流し、中世カトリック教会の盛時を経て近世に入り、ついに16世紀スペインのカルメル会的神秘主義に到って絶頂に達する観照精神の長くかつ複雑な伝統である〟

呪術的・魔術的な色彩はむしろ、神秘主義そのものにとっては邪道であるらしいのですね^^;

〝・・・西欧の神秘主義に関する限り、プラトニズムはギリシアにおいてはついに完結せず、かえって基督教の観照主義によって真に窮極の境地にまで到達するものである・・・〟

…もし、こういったものが西洋人のミスティックの伝統だったのであれば、今の魔術的色彩の濃い西洋文明のありさまは、いったいどういう訳であるのか…はなはだ疑問に思えてまいります。

この辺りは、自分でも整理しきれていませんし、大した結論は出せておりませんが…;^^ゞ

(ご紹介)アムゼルくんの世界(Die Welt des Amselchens)-2010.1.25エントリ「内と外」に、リーメンシュナイダーの弟子と言われている人の、彫刻作品の写真が載っています。リーメンシュナイダーの芸風がよく継承されていると思います…^^

私製詩歌「道」

《道――宇宙の寂静の底に》

凍れる雲の海を わずかにかぎり
冬空の中の月 透き通る
影法師 ――
影法師 ――
蓑をまとい 杖をつきゆく
深傘の 幽(ゆら)めく黒影

月に影なす かの姿
人にあれるや あらざるや
道さすらいゆく 異形のものよ ――

月は冷たく 冴えかえり
新たなる骸を 白々と照らす
寂静の白さである ……

………………

………………

月よ!

木垂(こだ)るまでに繁れる 常緑(ときじく)の堅葉(かきは)に
時を読みかける 月の光よ!

堅葉(かきは)は 黒き鏡のごとし
真白の斑(むら)を 乱反射する
錯覚の 酷さ虚しさ
もはや 月は見えぬ ……

はだれ雪 寒しこの夜に降ると見るまでに ――

さらに固く 蓑をまとい
異形の身を恥じて 傘の影に深く秘め
冷えてゆく道野辺に 杖をつきなおし ――

我が傘は 我が山根
我が杖は 我が墓標(しるべ)

道に出でて 行きて帰らず
道に入りて 生きて還らじ

寂静の中の 雪ふりしきる
我が身さえも 時闌(た)けて
風の葬(はふり)に 解けゆくか ……

道野辺の 遠き彼方に 夢は逆夢