研究:祖霊祭の習慣&資料保存
『万霊節の連祷』(Litanei auf das Fest Aller Seelen D343)
音楽・シューベルト/詩・ヤコービ
安らかに憩え 万の霊よ
恐るべき苦しみ終えたもの
甘き夢見果てたもの
生に倦んだもの 生まれきて幾許ならず
この世より去っていったもの
万の霊よ 安らかに憩え
また 決して太陽に笑いかけず
月の下 茨の上 目を覚ましていた者も
神と 清き天上の光の中で
いつか あいまみえよう
この世を去りし あらゆる人々よ
万の霊よ 安らかに憩え
この世の平和を知らぬまま
勇気と力のゆえに
死屍累々のいくさ場の彼方
半ば死にゆく世に送られたもの
とわに帰らぬ万の霊よ
万の霊よ 安らかに憩え
Litanei auf das Fest Aller Seelen
Ruh'n in Frieden alle Seelen,
Die vollbracht ein banges Quälen,
Die vollendet süßen Traum,
Lebensatt, geboren kaum,
Aus der Welt hinüberschieden:
Alle Seelen ruhn in Frieden!
Und die nie der Sonne lachten,
Unterm Mond auf Dornen wachten,
Gott, in reinen Himmelslicht,
Einst zu sehn von Angesicht:
Alle die von hinnen schieden,
Alle Seelen ruhn in Frieden!
Auch die keinen Frieden kannten,
Aber Mut und Stärke sandten
Über leichenvolles Feld
In die halbentschlaf'ne Welt:
Alle die von hinnen schieden,
Alle Seelen ruhn in Frieden!
キリスト教や大乗仏教といった、立派な教義を備えた宗教が世界を席巻する前は、元々、それぞれの民族に先祖信仰が存在していたと言われている。
例として=ケルト&ゲルマン民族の祭り=「燻し十二夜」
冬至の日、故人の好みの料理を作り、好みのワインをテーブルに並べ、家庭祭壇にロウソクをいっぱい灯して、祖霊を迎える行事であるとされている。豊かな収穫を得て安らかな思いで冬を迎えられることを、先祖の霊(または祖霊=守護霊)に感謝するのである。
キリスト教はこの燻し十二夜の祖霊祭を、11月2日の万霊節に移したと言われている。しかし地方によっては、12月25日のクリスマスの後に、墓地に小さなクリスマスツリーを立ててロウソクを灯し、パンやワインなどを供えて先祖を祀る風習が残っているらしい。
【付記-1】・・・12月25日をキリストの誕生日に定めたのは381年のコンスタンティノープル会議である。それまでは、ヨーロッパでは、12月25日は冬至祭=収穫祭=祖霊祭だったらしい。
【付記-2】・・・日本ではお盆と御魂祭が習合して、8月の盆供養がメインの祖霊祭になっているが、仏教渡来前の時代は、冬至に祖霊祭を行なうのが習慣だったらしい。仏教伝来が遅れた東国地方では、鎌倉・室町時代の頃まで、この風習が根強く残っていた。
★特徴的な天文現象と特別な祭祀(お盆や祖霊祭)との日取りのシンクロが興味深い。春分、秋分、冬至、夏至に集中する傾向。