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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

露宇問題および関連の調査メモ

現在、全世界規模で起きているインフレの原因=資源インフレ+流通インフレ+バラマキインフレ

つまり
(1)露宇戦争による資源インフレ
(2)物流の停滞によるコストプッシュインフレ
(3)コロナ助成金をバラまいて労働離れを起こしてしまった事による賃金インフレ

特に(3)は社会共産主義の末路を思わせる部分。悪性インフレは、通常の場合は、歴史上どれか1つが原因となることが多かったが、今回は新型コロナの影響が激しく加わったため、全世界で(1)(2)(3)と三重に原因が重なるという歴史的なインフレになっている(…と、解釈することができる)。

国家運営としては「全土規模の災害が起きた時に、全国民に直接に大金を給付すると、およそ1年後に国家衰亡レベルの需給ショックが波及するので、よろしくない」という経験値を積めたと思われるけれど、その歴史的経験を生かせるのは、まずこの国家的危機を生き延びてからになりそう(国家分裂して歴史的経験も散逸したら目も当てられない)。

日本政府としては、全世界から波及して来る経済ショックを緩和するため、原発再稼働(審査を通った原発は取り急ぎ稼働させる)という防衛手段を取り始めたと解釈。もともと岸田政権は、経済安全保障を確実にするために、原発再稼働の推進については当初より強い意志を表明していた。

・岸田政権、中枢に原発推進派 歓迎する電力業界(毎日新聞2021.10.04)
https://mainichi.jp/articles/20211004/k00/00m/010/091000c

「事実上の甘利内閣」 歓喜する電力業界
「エネルギー政策に通じた人が多く登用されている。やりやすい」。新政権の布陣が明らかになるにつれ、電力業界の幹部からはこんな歓迎の声が上がる。
業界が最も歓迎するのは甘利明幹事長の誕生だ。麻生派ながら総裁選で岸田氏を全面支援し、安倍晋三元首相が実質率いる細田派との調整にも奔走。幹事長の立場だが、永田町では早くも「事実上の『甘利内閣』だ」とささやかれている。
甘利氏は2006年の第1次安倍内閣から08年の福田康夫内閣まで経済産業相を務めている。経産省の有力幹部OBのほか、電力、ガス業界を中心にエネルギー業界に幅広い人脈を持ち、「原子力ムラのドン」の一人として有名だ。実際、4月に結成された、原発の建て替えや新増設を訴える自民党の議員連盟でも最高顧問に就いている。
「甘利氏の一番弟子」(大手電力幹部)と言われ、岸田氏の推薦人にも名を連ねた山際大志郎政調会長代理も経済再生担当相で入閣する。山際氏はエネルギー政策に強く、国会では「原発を使い倒さなければ、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)はできない」(21年2月の衆院予算委)と述べるなど、原発推進の急先鋒で知られる。
カーボンニュートラルは菅氏が昨年秋の所信表明で50年に実現を目指すと宣言した「菅カラー」の一つだった。7月に策定した次期エネルギー基本計画の原案では、甘利氏ら実力者が名を連ねる自民党の議連や経団連などが繰り返し訴えた原発の「新増設」を書き込まず、成長戦略でも原発回帰を思わせる文言を削除。脱原発派の河野、小泉両氏の訴えに沿った政策決定を続けてきた。
エネ基本計画、高市氏の下で「見直し」?
総裁選でそのエネ基本計画を見直すと明言し、小型の新型原子炉の開発などを加速させるよう主張した高市早苗氏は政調会長に就任した。選挙戦では、小泉氏が高市氏を念頭に「あらゆる手段を駆使して(再エネ優先の政策を)潰そうという勢力に負けないように、支えていただきたい」とけん制したが、政調会長は党の政策立案を仕切る責任者。政権公約(マニフェスト)の策定を主導する立場でもあり、業界は河野、小泉路線からの修正に期待を寄せる。
政策立案に直接関わるポストではないが、国対委員長に就く高木毅元復興相も原発推進派で知られる。

・原発再稼働「安全性を最優先」 風評対策に全力―岸田首相(時事通信2022.03.11)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022031100908

岸田文雄首相は11日、原発の再稼働について「いかなる事情よりも安全性を最優先しなければならない」と述べ、原子力規制委員会の審査をクリアすることが大前提との政府方針を改めて示した。

・岸田首相「できるだけ原発を動かしていきたい」 原油高への対応で(朝日新聞2022.04.27)
https://www.asahi.com/articles/ASQ4W5T4GQ4WUTFK015.html

岸田文雄首相は26日夜、テレビ東京の番組で、物価高騰に対応する「緊急対策」の柱の一つであるエネルギーの安定供給について、「できるだけ可能な原子力発電所は動かしていきたい」と述べた。安全性には配慮しつつ、国民に再稼働への理解を求めていく考えだ。

●東京電力の管理下にある原発がなかなか再稼働しない理由⇒東京電力の仕事が不真面目なため…

柏崎刈羽原発 見通せぬ再稼働への道筋 テロ対策、改善道半ば(毎日新聞2022.04.27)
https://mainichi.jp/articles/20220427/k00/00m/040/378000c

東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)でテロ対策の不備が相次いで発覚した問題で、原子力規制委員会は27日、東電自身による改善策の実効性や問題の背景に関する検査の中間報告をまとめた。報告は、東電の改善策に対して、複数の侵入検知器の機能が同時期に失われたことの原因分析が不足している点などについて東電による再検証・対策が必要だと指摘した。東電が目指す同原発7号機の再稼働に向けた手続きの再開は、見通せない状況だ。
規制委「侵入検知器の故障、検証不足」
「人の力によらない核セキュリティーを担保できるようにすることが必須だ」。「ソフト面(の対策)は深掘りして、具体的に作り込むべきだ」。27日にあった規制委の定例会。検査したチームから中間報告が示されると、委員からは、今後の検査方針について、さまざまな意見が出された。
柏崎刈羽原発では昨年、敷地内への侵入を検知する機器が16カ所で故障し、うち10カ所でずさんな代替措置しかとられていなかったことや、発電所員が同僚のIDカードを使って中央制御室へ不正侵入したことなどセキュリティー上の問題が相次いで発覚した。一連の不備を受け、核燃料の移動禁止命令が昨年4月に規制委から出されており、7号機の再稼働に向けた手続きは凍結状態になっている。東電が再稼働を目指すには、今回規制委から指摘された事項を全て改善・反映することが前提となる。
東電は昨年9月に東電自身がまとめた報告書で、テロ対策教育の強化など36項目の改善策を提示。今年3月には、36項目のうち34項目について9月までに実行するとし、今後3年間で関連設備の整備に200億円をかけるなどと発表した。

※考察の参考:「電力危機を作り出したのは誰か/再エネ業界が原発再稼働に反対する本当の理由(JBpress、2022.06.10)」
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70500
>なぜ再エネ派は原発再稼働に反対し、ぎりぎりの電力運用を求めるのか。その1つの理由は、彼らの中に反原発派が多いからだが、それだけではない。最大の理由は、原発が動くと再エネが送電線にただ乗りできなくなるからだ。


■過去最高の226兆ドルに達した世界債務(国際通貨基金2021.12.15)
https://www.imf.org/ja/News/Articles/2021/12/15/blog-global-debt-reaches-a-record-226-trillion

IMFの世界債務データベースの最新情報によれば、2020年の世界債務は対GDP比で28%ポイント増の256%
インフレ率や名目GDPの上昇が債務比率の低下につながるケースもあるが、持続的な形で大幅に債務を削減できる見込みは薄いだろう。恒常的な高インフレを防止するために中央銀行が利上げを行えば、借入コストも上昇する。政策金利は既に多くの新興市場国で引き上げられており、今後もさらなる利上げが予想されている。また、先進国の中央銀行は国債その他の資産の大量購入にもブレーキをかける予定であり、その縮小の方法が経済回復と財政政策にも影響を与えると考えられる。
歴史が示しているように、金利が反応してしまえば、財政政策の効果は薄くなってしまい、歳出を拡大しても(あるいは減税を実施しても)経済活動や雇用に限られた影響しか与えられず、インフレ圧力を助長させてしまう恐れがある。債務の持続可能性に関する懸念も強まるだろう。
世界の金利が予想以上に急上昇し、成長が低迷すれば、リスクは増幅する。金融環境の本格的な引き締めが実施されれば、債務水準の最も高い政府、家計、企業はさらに圧迫されるだろう。公的部門と民間部門が同時にレバレッジ解消へと追い込まれれば、成長見通しにも影響が及ぶはずである。

■2021年~2022年、新型コロナに発する上海ロックダウンの影響で、貨物船の物流がスムーズに流れておらず、大渋滞を起こしている。
ジェトロ2022.04.15「上海の封鎖管理が物流や貿易などサプライチェーンに影響(中国)」
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2022/fe14854d922bc13b.html
>封鎖管理の期間中も税関や港湾関係者は勤務を継続しており、空港や港湾での貨物輸出入などは行われている。しかし、トラック運転手が封鎖区域から出られない、あるいは港湾の出入りに通行許可証が必要といった状況で、輸出する貨物を港湾まで運ぶことができない、または輸入しても貨物を港湾から自社倉庫まで運び出せないといった事態が生じている。このように物流機能が制限されているため、一部自動車メーカーでは日本に必要な部品を届けることができず、工場の稼働停止を余儀なくされているという。また、日本から必要な部品が届かず、中国の工場が稼働停止に追い込まれるケースもあり得る。

■アメリカ物流が大混乱している(トラック運転手の深刻な人手不足が指摘されている)
「アメリカで物流が大混乱 小売店の棚から酒が消えた!?/ビジネス テレ東2021.11.11」
https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/business/entry/2021/024853.html
>「アメリカ国内の主要な港で問題が発生している。多くの船が大渋滞を起こしていて、商品がタイムリーに入ってこなくなっている」
>バイデン大統領は2021年10月、ロサンゼルスの2つの港を24時間体制の操業に切り替えると発表
(参照「米ロザンセルス港、24時間稼働へ 物流の停滞解消のため」https://www.bbc.com/japanese/58907449)
>港が24時間稼動しても、そこから荷物を配送するトラックが足りていない/ベテラン運転手「冬場の悪条件の中での運転は大変だ」「毎日ではないが夜の11時半起きの時がある」厳しい労働環境
>全米でおよそ8万人のトラック運転手が不足/この問題が輸送コストの上昇にもつながると指摘。「賃金の上昇分をカバーするためには、取引先に負担してもらわなければならない。需要が大きいにも関わらず、労働力とのバランスが取れていない」
>アメリカ国内の物流の7割を担うトラック輸送。ドライバー不足は今後、アメリカの経済回復の足かせとなるかも


■仏大統領の「ロシアに屈辱を与えてはならない」発言にウクライナ反発 東部では修道院燃える
https://www.bbc.com/japanese/61693912
中世の宗教戦争っぽい@キリル総主教の言う「悪」=分離独立したウクライナ正教会、ということだったのか?


米「台湾の独立支持せず」 国務省文書また更新
https://news.yahoo.co.jp/articles/0958e057651da6124ab7c804dd2bbe00e6207d8e

【ワシントン共同】米国務省は3日までに、ホームページで公開している米台関係に関する情報をまとめた文書「ファクトシート」を再び更新し、先月削除した「台湾の独立を支持しない」との文言を復活させた。中国外務省が削除に反発していた。 文書の再更新は5月28日付。ブリンケン国務長官は同26日の中国政策に関する演説で、台湾政策に変更はなく「一つの中国」政策を維持するとし「台湾の独立を支持しない」と述べており、国務省報道担当者は長官の発言を文書にも反映させたと説明した。中国の反発が更新に影響したかどうかについては明らかにしなかった。

台湾(国民党政府)は「ひとつの中国」と「独立を目標とする」の間で器用に立ち位置を変え、利益最大化の戦略をとると指摘されている。本省人・外省人ネットワーク。例えば河南省の稼ぎの半分以上は台湾企業が出している(※鴻海iPhone)。波及効果で100万人以上の雇用を生み出しているとの指摘がある。

(参照)2022.06.10公開「06-10 中国の貿易は好調?その実態はこうなっています!」チーム妙佛
https://www.youtube.com/watch?v=PoUBjIhQADk
大陸進出した多くの台湾企業が稼ぎ出した数字だけで、中国経済の半分ほどになる


リベラルが招いた悲劇、ウクライナ危機が提起する安全保障のジレンマ(iza!記事)
https://www.iza.ne.jp/article/20210319-LQ7NIFVNBBHZRD5H2NBCSGF44Q/

>ウクライナ危機を引き起こしたのは、当時のバラク・オバマ政権が(冷戦時代のような)ロシアの勢力圏的発想を認めず、ロシアの立場や行動を理解していなかったゆえの結果
>ブッシュ政権に続くオバマ政権が、ロシアの勢力圏的発想を19世紀的であるとして認めないのは自由である。しかし、オバマ政権が国際法にのっとってそう主張するだけでロシアを抑止できると考えているのであれば、それはオバマ元大統領のような法律家が陥りがちな考えであろう。
>ウクライナ危機は、米国およびNATO諸国のネオリアリズム的観点の欠如がもたらした危機であると見ることもできる。
>国際ルールを誠実に守る明治期の日本や現代の日本のような国があることを否定するものではない。しかし、米露中のような国は、基本的には国際ルールを守りつつも、安全保障上の問題に軍事力で対応する場合があることを忘れてはならない。

|欧州|十字砲火にさらされて凍える国々https://inpsjapan.com/news/europe-caught-in-freezing-crossfire/

|欧州|ガス供給停止と政治的冷え込みhttps://inpsjapan.com/news/political-chill-may-outlast-the-big-freeze/

ロシア・ウクライナ間でガス紛争発生https://inpsjapan.com/news/russia-gas-dispute-raises-political-heat/

「日本の第二の敗戦」を読んでhttps://note.com/naotoikeda/n/n1bf71429b6f7


■ロシア傘下のウクライナ教会離反 侵攻に反発、関係断絶
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022052800189

キリスト教東方正教会でロシア正教会の傘下にあったウクライナの教会が27日、ロシアのウクライナ侵攻に反発し、関係断絶を発表した。プーチン大統領に近いとされるロシア正教会トップのキリル総主教の立場には「同意できない」と主張。声明で「戦争は神の教えに反する」と強調し、ロシアとウクライナの双方に停戦交渉の継続を訴えた。

■ロシアの総主教「理解する」 ウクライナの教会の断絶宣言
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022053000160

【モスクワAFP時事】ロシア正教会トップのキリル総主教は29日、ウクライナでロシア正教会の傘下だった教会がロシアとの関係断絶を宣言したことに対し「ウクライナの教会が今日、苦しんでいることを完全に理解する」と述べた。モスクワの救世主ハリストス大聖堂で語った。
24日の関係断絶宣言後、初めて見解を表明した。総主教は「悪」がロシアとウクライナの正教徒を分断させようとしているが、その試みは成功しないと断言。「信者の暮らしを複雑にしないため、可能な限り賢明に行動すべきだ」と訴えた。
キリル総主教は、プーチン体制を支える強力な支柱の一人と考えられている。2月のウクライナ侵攻開始も強く支持した。

(ウクライナ東方正教会は多くの信者を得ているので、この「完全独立」を機に、おそらくロシア東方正教会の管理下には戻りたくない・戻らないと思われる。トルコは以前も、ロ・ウ停戦交渉に顔を出していたと記憶。キリル総主教が「可能な限り賢明に行動すべき」と発言したので、停戦への動きも目立ってきそう。キリル総主教が何を「悪」として発言したのかは、とっても要注意なミステリーというところで、専門家による考察も望まれる。引き続き、仲介国としてのトルコの役割は重要なところ※コンスタンティノープル正教会を擁する国)

補足資料
―ロシア正教会とウクライナ正教会の関係図
https://twitter.com/Fact_master_666/status/1503345648443158530
―ウクライナ正教会の経緯をザックリ(※連続投稿スレッドは長い)
https://twitter.com/kliment_klimis/status/1512422947126145026


■プーチン大統領の戦争、背後に「ロシア世界」思想 米メディア「ウォールストリート・ジャーナル」が指摘
http://www.kirishin.com/2022/03/21/53449/、2022年3月21日

ロシア正教の指導者モスクワ総主教キリル1世は最近、ウクライナで続く戦争について、正義と悪の黙示録的戦いに他ならないと語った。この戦争の結末は「神の加護を受けられるか否かという人類の行方」を決めることになる。米メディア「ウォールストリート・ジャーナル」(WSJ)3月18日の指摘を紹介する。
プーチン大統領は、今回のウクライナ侵攻の目的が「一部のウクライナ人」の解放だとしており、キリル1世の説明によれば、その「一部のウクライナ人」は、世界の支配者と称する国々が提供する価値観的なものを拒否しているという。その価値観とは、同性愛者の権利を主張する「ゲイ・プライド」のパレードに代表されるものであり、「こうした諸国」に仲間入りする際の踏み絵の役割を果たしている。「こうした諸国」とは欧州連合(EU)と、さらに広く西側諸国を指している。
ロシア正教は、プーチン氏の地政学的野望を支えるイデオロギーの形成に積極的役割を果たしてきた。その世界観は、現在のロシア政府をロシアのキリスト教文明の守護者と見なすものであり、それゆえロシア帝国と旧ソ連の版図にあった国々を支配する試みを正当化する。
ウクライナ生まれの神学者で、キリル1世のアドバイザーを務めた経験を持つシリル・ホボラン神父によれば、こうした考え方は共産主義崩壊後のロシアがイデオロギーの空白を埋めようとする中で生まれたもので、長年迫害されてきたロシア正教が、新たに開けた公共の場で影響力を持つのと同時進行してきた。
モスクワ総主教庁に務めた経験を持つセルゲイ・チャプニン氏によれば、これらが「ソ連崩壊後の市民宗教」、言い換えれば「ルスキー・ミール(ロシア世界)」という思想の原点になったという。「ルスキー・ミール」という言葉は11世紀に生まれたもので、現在のロシア・ベラルーシ・ウクライナの大半を含む東スラブ語圏のことを意味する。
プーチン氏にとって「ルスキー・ミール」は、旧ソ連やそれ以前のロシア帝国の領土を含むロシアの正当な勢力圏を意味する言葉だ。プーチン氏は、ウクライナ侵攻の3日前の2月21日、「ウクライナは我々にとって単なる隣国ではない。ウクライナは我々の歴史・文化・精神世界と不可分の存在だ」と語っていた。ロシア正教はこの言葉を信奉し、そこに宗教的色彩を加えた。その宗教的意味合いの中では、ウクライナが特別な役割を担っている。
しかし、ウクライナでは、ルスキー・ミールの宗教的概念は、政治的概念と同様の抵抗に直面した。ウクライナの正教会信者の多くはロシアが主導する正教会に属しているが、ウクライナにはかなりのカトリック信者のほか、モスクワからの独立を求めてきたウクライナ正教会の信者もいる。2019年、東方正教会の宗教指導者コンスタンチノープル総主教のバルトロメオ1世はその独立を認めた。
この決定は東方正教会内に深刻な亀裂をもたらした。さまざまな国の教会が、モスクワ側についたり、コンスタンチノープル側についたりした。プーチン氏はバルトロメオ1世が米政府の命令に従っていると非難した。
ロシア国内で、ルスキー・ミールは深く宗教的な響きを得ている。特に軍においては正教会の聖職者は軍の士気を高め、愛国心を促す。ロシアで核戦力を扱う陸海空の3軍には、いずれも守護聖人がいる。正教会はまた、シリア内戦におけるロシアの役割について、少数派のキリスト教徒を守るための「十字軍」だとして熱心に宣伝していたという。
プーチン氏は昨秋の演説で、トランスジェンダリズムや「キャンセル・カルチャー(問題視される事柄に対するバッシング)」など、自らが西欧や米国に見受けられる文化的なトレンドと捉えているものを厳しく非難した。同氏は「我々は異なる視点を持つ。独自の精神的価値観、歴史的伝統と多民族国家の文化に依拠しなければならない」と述べていた。
しかしながら、ロシアによるウクライナ侵攻は、同教会が結束を求めてきた人々を分断し、侵攻の理由となったイデオロギー自体を損なう恐れがある。ロシアによるウクライナ侵攻以降、ウクライナの聖職者の一部はキリル総主教が戦争を支持していることに抗議するため、礼拝の際に同総主教への祈りを中止した。また、ロシア正教会への忠誠を撤回すると語る聖職者も出ている。(CJC)
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