山吹挽歌、近代ソネット、東は東
◆山吹の立ちよそひたる山清水汲みに行かめど道の知らなく・・・(万葉集)
立原道造〈みまかれる美しき人に〉より:
まなかいに幾たびか 立ちもとほったかげは
うつし世に幻となって 忘れられた
見知らぬ土地に 林檎の花の匂うころ
見おぼえのない とおい暗夜の星空の下で
The Road to Anywhere/Bert Leston Taylor
Across the places deep and dim,
And places brown and bare,
It reaches to the planet's rim ------
The Road to Anywhere.
Now east is east, and west is west,
But north lies in between,
And he is blest whose feet have prest
The road that's cool and green.
More sweet these odors in the sun
Than swim in chemists' jars;
And when the fragrant day is done,
Night ------ and a shoal of stars.
Oh, east is east, and west is west,
But north lies full and fair;
And blest is he who follows free
The Road to Anywhere.
《翻訳=『英詩の歓び―青春、そして夢と追憶』松浦暢・編訳/平凡社2000》
深く おぼろな国を 越え
荒寥とした 褐色の国を越え
それは この世のはての
どこかへ 通じる道。
おお 東は東 西は西
しかし 北は その間に横たわる。
ひんやりとした みどりの道を 辿った人は
めぐまれた人だ。
陽光をあびる この香りは
いやさらに美しい 科学者の試験管に
ながれる あの香りよりも。
かぐわしい昼間が 終わると
夜が訪れ――満天の星はきらめく。
おお 東は東 西は西
しかし 北は はてしなく美しく横たわる
おお 幸せな人だ それは
どこかへの道を 自由に辿る人。
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