ツイッターメモ,神託についてのプチ民俗学
『神託』
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この神託所は希臘最古といわれ、3つの異なる文化層が確認され、「初めに樫の神木の崇拝があり、次いで大地の女神ゲーの崇拝、そして最後に紀元前13世紀になって、樫の神木の崇拝とゼウス信仰が結びついた」(ファンデンベルク『神託』)という
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「巫女や祭司たちが、樫の木のざわめきから神の声を聴きとるというのも異様だが、最も特異な仕掛けは……ドドナの銅鑼の音だろう。
……ドドナでは、2500年も前に、人造の声が作られていたのだ」(ファンデンベルク『神託』)。
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「紀元前5世紀の終わりごろまで、ゼウスの樫の神託所は一度も石垣で囲まれたことがない。それぞれひとつずつ青銅の鉢を吊り下げた三脚の台架が、びっしりと連なって垣のようになっていた。
……訪問者はこの入り口を通り抜けて樫の神木の神域に入るとき、
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どうしても左右の鉢に触れることになる。すると、銅鑼を打ったような音が生じて、それがずらりと並んだ鉢の全部に共鳴する。そして、どの鉢もそれぞれ大きさが違うので、さまざまな音響を発することになる」(ファンデンベルク『神託』)
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ここで思い出されるのがわが国の銅鐸である。「音を出して「聞く」目的から地面か祭殿の床に置かれて「見せる」目的へと変化した」とするのが妥当であろう。
そして吊すことから連想されるのは、またしても天岩戸の根こそぎの榊に吊された青銅の「鏡」のことである。
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「天上の山からよく茂った常緑樹を根こそぎにしてきて、その上の枝には……曲玉の飾りを、中の枝には……鏡を掛け、下の枝には白と青の布の四手を垂らした」。
「この鏡はまさしくアマテラスを表象しながら、樹に掛かっていた」(吉田敦彦『太陽の神話と祭り』)。
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鏡は、本来、青銅でつくられたものである。用途はもちろん磨きあげられた表面にあるが、しかし意味はその裏に彫られた彫り物にある。
図は唐代の銅鏡の裏面。
そこには「宇宙」が表象されているのである。「円」には初めも終わりもない(と、昔の占星術師なら強調する)
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この「吊された鏡」から、吉田敦彦は「吊された太陽の娘」=ヘレーネーを連想するのに何の妨げもないとするのである。
あのトロイ戦争の原因をなしたへレネーが、最期は鈴懸の樹に縊れて(あるいは吊されて)死んだことは、日本人にはあまり知られていない。
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エジプトの太陽は2本のシカモアイチジクの樹の間から昇り、シカモアイチジクの樹の間に沈むという。シカモアイチジクは「生命の樹」である。
対して中国の太陽は扶桑樹から昇る。が、当初、太陽は十個あって人間を苦しめたので、羿が9個まで射落として現在に至るという。
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扶桑(樹)が現実の何に当たるかは明らかでない。仏桑花(ぶっそうげ)というの説もあるが、「生命の樹」(でなければ「世界樹」)でなければおかしいから、当たらない。
桑は希臘語でμορέα (Morus nigra)。バビュローンを舞台にピューラモスとティスベーの悲恋伝承がある。
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その伝承では、桑の実は2人の血で赤くなったのだというのだが、実際は(「クロミグワ」の名があるとおり)黒くもある。実際の血潮が(特に静脈血が)どれほど黒いか、希臘の歌人はよく知っていた。
それを、「ギリシア人の色の表現はしばしば読者を当惑させる」などと……。
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「吊された」といえばタロットXII「吊された男(女ではない!)」。ヴィーヴル版(右図)は北方ヨーロッパ起源とカテゴライズされ、「意図的な上下反転操作」の可能性があるという(井上教子『タロットの歴史』)。
なぜ正立しているのか、その理路がなかなか見出せないが……。