私製詩歌「花の影を慕いて」
緑の岸辺、
黒のわだつみ、
遠い日の丘の夕映え、
花の影を慕いて。
虚空遥かに、
水は巡りて、
夜と昼とをおし渡る。
風は吹き抜け、
雲は波立ち、
流転を重ねて幾星霜。
悠久の時の声は、
雪闇に、
幽(かそけ)く閃(ひらめ)く未生の欠片(かけら)、
一片の細雪(ささめゆき)より微かなる、か細き御声。
魂は生を贈与して、
運命は死を贈与する――
しかしこれら二つのものは、
来し方行く末、
一つの軌道を辿るのだ、
花の影を慕いて。
無限の連関、
星辰の階梯、
はかなきかなや、現世(うつしよ)の、
一期(いちご)の仮面舞踏会。
畢竟、謎は花の影、
雲間より洩る光の如く。
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