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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

読書ノート:資源調達

◆『枯渇性資源の安定調達戦略』/上原修・著(日刊工業新聞社2011.2.25)

まず、資源の定義。

経済学では、人間にとって有益なものは全て資源と呼ぶ。中でも天然資源に関しては、再生可能資源(Renewable)と再生不能資源(Non-Renewable)と区別される。
>再生可能資源=一部分を消費しても一定の期間を得れば量が元に戻るもの(森林・水産資源などの生物資源)
>再生不能資源=一度消費すると元には戻らないもの(金属・エネルギー資源などの鉱物資源)
再生不能資源は、かつて、有限ないし枯渇性資源と呼ばれた。(p.9より)

分類表も付けてありまして、大雑把に言うと現代版の分類は以下のような感じ:

▼枯渇性資源(p.12より)
エネルギー資源・・・(化石燃料・放射性物質・バイオマス)
鉱物資源・・・(金属鉱物・非金属鉱物・希少金属)
生物資源・・・(森林・食料)
水資源・・・(農業用水・工業用水・生活用水)

エネルギー資源に注目すると、9割が化石燃料で、核燃料&水力が1割、薪など非商業が1割。

つまり、「化石燃料の重要性は絶対にゆるがないッ!」という事で、世界中が石油・石炭争奪戦に明け暮れている、これが現実…(石油枯渇が心配…新しい電力発生テクノロジーを早く開発しないと…汗)。

中小国になればなるほど、ローテクでも安定したエネルギーを生産できる化石燃料に依存。

先進国になればなるほど、原発技術が安定し核燃料への依存が増える傾向…(放射能災害は…?^^;)。

…エネルギー資源については、各国で互いに議論したり横槍を突っ込んだり、四苦八苦しながらも、全体としては需給バランスを取ろうとしているのが、うかがえる訳です。中小国の立場としては、先進国が石油を買い占めるような事態を、何よりも恐れている状態…

※この点から見て、日本が急に「原発停止して石油依存を高める」という宣言をすることは、国家危機に等しい危機感を持って、中小国に受け止められる可能性がある(らしい)と考察。菅首相は、5.6の浜岡原発停止の要請で、各方面にあらかじめお話をしてなかったそうですし、代替エネルギーなどの対策も無いみたいですし、将来が心配…(汗)

次に、話題の水資源。

人口増に比例するように、水の需要が急増(ついでに食糧価格も上昇)。

統計を取って予測するところによると、1995年-2025年にかけて35%の伸びが予想されるとの事。特に新興国での伸びが激しく、この部分だけで50%-70%上昇する見込み。

ゆえに、水道技術の進化は、急速に必要になるものの一つ。漏水などの無駄を極力押さえた、高度な水道システムが必要と言う事…(水道ネットワークは、平均20-40%程度の漏水率を見込んで設計されているのが実情)。

ここは日本の得意分野かな…と、思います(=テクノロジーの努力で、日本の水道の漏水率は3%ラインまで下がっています。メンテナンスやアフターケアもお金は掛かりますが、結構、丁寧ですし…)

ちなみに地球の中では、海水が97.5%、淡水が2.5%。

2.5%の淡水をさらに小分けして、氷河などで69.8%、地下水で29.9%、湖&河川で0.3%。

人類が利用しているのは、すぐに利用できる湖&河川の0.3%の部分に過ぎないそうで…

さて、この本は、資源調達ビジネスの調査分析にかなりのページ数を割いてました。資源調達部門の役割は今後、ますます重要になっていくだろう、それゆえに、企業社会としても国民社会としても、今までは地味だった「購買・調達部門」に多くの関心を注がねばならない、という意見が書かれてありました。

購買・調達部門の役割は、1.製品価値の向上、2.供給基盤の強化、3.原料・資源の安定供給、4.開発効率アップ。その役割には、「環境、財務、社会、リスク管理、事業継続計画」という責任が伴っているという事です。購買、資材管理、調達、仕入れ業務は、企業の中では目立たない黒子ですが、企業の社会的責任という観点から、ちゃんと関心を持った方が良い、という風。

日本の購買・調達部門の特徴は、「資材・部品部門」と、「資源・原料部門」とに分かれているという点で、これは、第二次世界大戦の頃の富国強兵政策に始原があるという事です。

その後、「資材・部品部門」は、品質・コスト・納期の中で、粛々と業務をこなしてゆくようになりますが、「資源・原料部門」は海外に飛び出し、不安定感を増してゆく世界情勢の中で、供給停止という事態を恐れつつ、新たな鉱山の開発などに乗り出すようになってゆく…という二極化プロセスを辿っているそうで。

「資源や原材料の調達」という分野では、中国の進出・消費が著しいこと、資源枯渇や採掘の困難化などで閉山に至るエリアが増えていること…などの点から、原産国の寡占化が起きているという状況があり…(特定の資源の供給が、特定の国に集中するという意味)。例えば原油の中東依存がより高まったりとか、レアメタルの中国依存がより高まったりとか。

中長期的な観点では、中国の生産・消費傾向の如何によって、日本の資源調達戦略もさまざまに異なる対応を迫られる…という事で、中国の振舞いの継続的な注視は、絶対的に必要と言う事でした(特にレアメタルの分野とか)。

また、中国の資源戦略は国家レベルで進めているのですが、日本の資源戦略は民間の横断的な協力に留まるのみで、対応不足、力不足という感は否めないとの事(でも、日本には日本ならではの強みはあるので、それをちゃんと分析して、整備強化することが望ましいらしい)。

…この辺は、日本の宿題ではありますね…なかなかムツカシイです…

※資源ジャンルの学問、実務、操業、維持管理の出来る人材の育成が急がれるとのこと。ついでに地政学ジャンル、環境ジャンルの知識もあると望ましいらしい(=現地の住民や環境に重い負荷をかけないような、スムーズな資源調達を思案するという点で)…

日本の産業界の課題(宿題)については、この本では八項目を挙げており(p.137より);

  • 商社依存(=総合商社にはグローバル的な価値があるそうです)
  • 投資開発
  • 都市鉱山への投資
  • 技術でカバー
  • 再生可能エネルギーへの投資
  • 鉱山技師の教育
  • 資源開発インフラの整備技師養成
  • 自給自足…自分の足で歩いて自分で見つけて収得する

…危機感を持って生産現場の声を「見える化」して現場感覚を共有する…だけでも、かなり違うそうです…

資源の調達(特に枯渇性資源の調達)と言う分野では、複雑怪奇な人間模様や政治模様が渦を巻いているところで、それにますます激変する地球環境が関わってくるだけに、「100%の正解」という代物は無いそうで。

ことに、こういう資源調達のジャンルでは、「グレーゾーンの境界」を適切に認知し、予期せぬリスクで致命傷に近いダメージを受けても、持ちこたえられるレベルで切り抜ける…という力の方が、いっそう重要になってくる…という風に理解しました…

いろいろ書いて、散漫な印象になりましたが…こんな感じで読書したのでありました。

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