物語夢:星降る丘に
- 《世界&歴史設定》
- 中世西洋風ファンタジー
- 小国(都市)同士の長い戦乱が続く中の、つかの間の平和
- 《舞台》
- 都市
- 周辺の農村地帯
- 天体望遠鏡を備える石造りの研究塔、村外れの丘の上
- 《登場キャラ》
- 戦争帰りの中年兵士=天文塔の研究者
- 若い娘=農民、天文塔に居る帰還兵に好意を持つ
- 青年=農民、娘に気がある
- 都市の辻にたむろする、敗残兵の不良グループ(酒盛りの場面のみ)
シナリオ
(一)
都市同士の長い戦争が続いたが、つかの間の平和が訪れた。農村は戦争で荒廃したが、戦争が収まったことで希望に満ち、活気が戻ってきた。都市との交易も少しずつ回復。
農村の若い娘は、長く続いた戦争については余り記憶が無いが、活気が戻ってきた村の中で元気よく働く。都市では、腕や足を失った帰還兵が、乞食をやっている光景が目に付く。敗戦都市の帰還兵は身の置き所が無い状態。
(二)
娘は、ある夜、お化けが棲んでいると評判の、村外れの荒廃した塔に灯が点いているのに気付き、不思議がる。しかし、数日後、正体を確かめようと決心し、ランタンを持って塔まで冒険に出る。ボディガードは家で飼っている番犬。
娘は不気味な塔の中で、不気味なコツコツ音を立てる黒い人影と遭遇し慌てるが、松葉杖をついた帰還兵と判明。番犬はすでに帰還兵を知っており、娘が指示しても男を襲わなかった。かえって男になついているくらい。
娘は慌てた折に転んで膝をすりむいており、男の世話になる。男が語る天文話(今は亡き戦友の研究を受け継いでいること)や、天体望遠鏡に心惹かれるようになる。男がしばらく席をはずしている間、娘はテーブルの上など見回し、満足な食事が無いことに気付く。
(三)
娘、丘の上の塔に通い始める。料理を入れたバスケットを持っていることが多い。夕方の時間帯の外出(朝帰りも)が増えたので、娘の周りの人々は心配し始める。娘の外出の噂は村の青年にも伝わり、青年はだんだん気が気でなくなる。
青年はある夜、娘の後を尾行してゆき、娘と帰還兵が一緒に天体望遠鏡をのぞいている場面を目撃。愕然とするが、とりあえずその夜は引き返す。
娘を送った後、帰還兵の男は、青年が居た痕跡に気付く(青年は動転の余り、忘れ物を落としていった)。
(四)
翌朝、青年はやっと忘れ物に気付き、慌てて塔まで探しに行く。こっそりと塔の中を探し回るが、帰還兵の男に見つかり、落し物を返されて、バツの悪い思いをする。
帰還兵、戦争中の経験で尋問口調になるが、「青年はどうやら娘に気があるらしい」ということに気付く。帰還兵は微笑んで青年を送り出すが、青年は「笑われている(バカにされている)」と勘違いして、プリプリしたまま帰っていく。
(五)
帰還兵は、都市への買出しが必要になり、娘が協力を申し出る。論文のためのインクやペーパーなど。
買い物の帰り、ガラの悪い帰還兵グループ(塔の男とは別)が辻で酒盛りしており、ちょっとした事から喧嘩が発生する(とは言え、帰還兵グループが完全に悪いわけではない。戦争帰りで精神が荒れている状態)。AグループとBグループが酒盛り場所を取り合っている状態。塔の男も松葉杖に目を付けられて、巻き込まれる。
娘、慌ててしまい、偶然に居合わせた青年に助けを求めるが、青年は状況を再び勘違いしてしまい、良くある帰還兵同士の喧嘩だと判断。代わって活躍したのが娘の番犬で、都市の治安維持隊が来るまで時間稼ぎ。
青年は娘に叱られて落ち込み、反省。松葉杖を折られてしまった帰還兵を支え、娘と共に都市を出る。
帰還兵は村のベッドに休ませる予定だったが、最後の大事な星の観測があるということで、帰還兵は無理を言って塔まで支えてもらう。道々、娘は帰還兵とのことについて青年に説明し、青年の誤解を解いた。
塔の中に一人で大丈夫かと確認したが、帰還兵は大丈夫だと請け負う。研究室に供えてある食事、衣服、寝室などしっかり確認して、娘と青年は村に戻った。
(六)
夜明け方、急に嵐が来た。不吉な予感がした娘は、発作的に家を飛び出し、塔へ駆けつける。番犬が吠えまくり、青年も気付いて娘の後を追う。
果たして荒廃していた塔は嵐に耐え切れず、建築の一部が崩落状態。研究室と思しき場所に見当を付けて声をかけると、崩落した部分の下から帰還兵の声が聞こえた。
娘と青年は協力して、帰還兵を掘り出す。帰還兵は息も絶え絶えだったが、研究論文をしっかり守っていた。亡き戦友との約束を果たすことができた、と満足そうに呟き、娘も青年も、未知の星の観測データが無事に論文になったことを知る。
都市の天文アカデミーへの論文提出を二人に託し、帰還兵は息を引き取る。
(七)
数百年後、中世にかつてあった丘の上の天文塔の遺跡。都市の中の大学に通う学生たちの、遠足先のひとつ。ここで新たな星の観測データが出されていたと言う記録が残っている。
都市アカデミーの天文学生である女子学生が遠足にやって来て、「戦乱が相次ぐ時代の中で、本当にここで研究がなされていたのだろうか?」と不思議顔。
やがて、塔の影から迷い犬が出てきて、女子学生にじゃれついた。
(終)