私製詩歌「道」
《道――宇宙の寂静の底に》
凍れる雲の海を わずかにかぎり
冬空の中の月 透き通る
影法師 ――
影法師 ――
蓑をまとい 杖をつきゆく
深傘の 幽(ゆら)めく黒影
月に影なす かの姿
人にあれるや あらざるや
道さすらいゆく 異形のものよ ――
月は冷たく 冴えかえり
新たなる骸を 白々と照らす
寂静の白さである ……
………………
………………
月よ!
木垂(こだ)るまでに繁れる 常緑(ときじく)の堅葉(かきは)に
時を読みかける 月の光よ!
堅葉(かきは)は 黒き鏡のごとし
真白の斑(むら)を 乱反射する
錯覚の 酷さ虚しさ
もはや 月は見えぬ ……
はだれ雪 寒しこの夜に降ると見るまでに ――
さらに固く 蓑をまとい
異形の身を恥じて 傘の影に深く秘め
冷えてゆく道野辺に 杖をつきなおし ――
我が傘は 我が山根
我が杖は 我が墓標(しるべ)
道に出でて 行きて帰らず
道に入りて 生きて還らじ
寂静の中の 雪ふりしきる
我が身さえも 時闌(た)けて
風の葬(はふり)に 解けゆくか ……
道野辺の 遠き彼方に 夢は逆夢
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