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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

イラスト習作:雪白の連嶺

「雪白の連嶺」イメージのイラスト習作その1、紺青の空の下の連嶺

(添付)イメージ元のテキスト/小説「暁闇剣舞姫」より

窓の外は快晴だ。

身も心も吸い込まれそうな程に青く深く、何処までも澄み切った蒼穹が広がっている。窓から見える純白の山々の間を、まばゆいばかりに白い雲がたなびいていた。どうやら、正午に程近い刻らしい。

手前に見える背の高そうな樹木の枝で、輝くような緑の葉が勢いよく萌えている。この部屋は、《大砦》なる建物の中では、どうやら中階層といった場所にあるらしい。

目下ベッドから動けず、窓から地上を見下ろせない状態だ。窓の外にはチラチラと周辺の岩山や山脈の頂上が見える――しかも総じて雪をかぶっている――ところからして、相当に険しい山岳地帯の真ん中なのだろうという事は想像された。この辺りの大いなる主が、かの『雪白』なのだ。

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「雪白の連嶺」イメージのイラスト習作その2、夕映えの連嶺(雲なし)

(添付)イメージ元のテキスト/小説「暁闇剣舞姫」より

武骨なまでに簡潔な、着雪と寒気を防ぐ事のみに特化した窓だ。中世風の両開き窓の周りに漂う陽光は、温かみのある金色とオレンジ色に満ちているが、見える限りの外枠には、積雪の名残が凍り付いているのが分かる。

夕方になって気温が急低下したのであろう。窓の外には、見かけを裏切るような、ブルッと震えが来るような冷気が漂っているに違いない。

窓の外の光景に気付くと――女は深く驚嘆する余り、何も言えぬまま、目を丸くした。

――深い雪に包まれた壮大な連嶺が、驚くほど近くに見える。

赤みを帯びた金色の光の中、いつまでも見ていたくなるような、息を呑む程に見事な夕映えの絶景が広がっているのだ。

「雪山……」

婆神官は、女の視線の先を見やった。

「あたしらは、アレを『雪白』って呼んでる。此処は、竜王国の最北部の飛び地だよ。今まさに雪解けが始まったとこさ」
「雪白の……『連嶺』……?」

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「雪白の連嶺」イメージのイラスト習作その3、夕方の豊旗雲と連嶺

「豊旗雲」イメージが中心。小説には登場しない場面だけど、習作と言う事で。「エフェメラル・アストラルシア」の瞬間は、まだ色彩を起こせていない

(添付)イメージ元のテキスト/小説「暁闇剣舞姫」より

グーリアスは『雪白』を背にして、再びリリフィーヌを振り返って来た。

「暁星(エオス)の光で、『雪白』が不思議な――何処までも透き通るような――色合いに染まる瞬間がある。この一帯では、その一瞬を『エフェメラル・アストラルシア』と言っている。あの花の名前も、そうだ。リリフィーヌ殿の目の色は、そう言う不思議な色をしている。リリフィーヌ殿が元気になったら、この《大砦》の展望台から見せたい」

グーリアスを眺めているうちに、不意に――リリフィーヌの中で、確かな直感が閃いた。心臓が、ドキリと跳ねる。

リリフィーヌは絶句し、息を詰まらせるのみだった。

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