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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

詩歌鑑賞:ブレイク「狂ほしきうた」

「狂ほしきうた」/ウィリアム・ブレイク-作/寿岳文章-訳

風狂ほしく泣き、
 夜は冷たし。
ここに来て、睡眠よ、
 わがかなしみをくりひろげよ。
されど見よ! 東の崖の向ふより
 朝はさしのぞき、
あかときの鳥さやさや
大地をせせら笑ふ。

見よ! 石敷きつめし
 大空の底まで、
かなしみうちのせ
 わがうたごゑののぼりゆく。
このこゑ夜の耳をうち、
 昼の眼を泣かしむ。
そのこゑ吹きおらぶ風を狂はせ、
 あらしをもてあそぶ。

雲の中の羅刹のごとく、
 かなしみどどめあへず。
夜のあと追ひせまり、
 夜とともに我行かむとす、
われは東に背を向く、
 なぐさめの多かる東に。
ああ光ぞわが脳髄をとらへたる
 狂ほしき激痛もて。
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