詩歌鑑賞:ブレイク「狂ほしきうた」
「狂ほしきうた」/ウィリアム・ブレイク-作/寿岳文章-訳
風狂ほしく泣き、
夜は冷たし。
ここに来て、睡眠よ、
わがかなしみをくりひろげよ。
されど見よ! 東の崖の向ふより
朝はさしのぞき、
あかときの鳥さやさや
大地をせせら笑ふ。
見よ! 石敷きつめし
大空の底まで、
かなしみうちのせ
わがうたごゑののぼりゆく。
このこゑ夜の耳をうち、
昼の眼を泣かしむ。
そのこゑ吹きおらぶ風を狂はせ、
あらしをもてあそぶ。
雲の中の羅刹のごとく、
かなしみどどめあへず。
夜のあと追ひせまり、
夜とともに我行かむとす、
われは東に背を向く、
なぐさめの多かる東に。
ああ光ぞわが脳髄をとらへたる
狂ほしき激痛もて。
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