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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

詩歌鑑賞:ブレイク「虎/無明の歌」

「虎/無明の歌」ウィリアム・ブレイク-作/寿岳文章-訳

虎よ虎よ、ぬばたまの、
夜の林に燃ゆる虎よ。
いかなる不死の眼または腕の、
よくも作りしながゆゆしき均整を?

いかなるをちのわだつみまたは空に、
なんぢがまなこの焔ぞ燃えたる?
何の翼にそも神は乗りて行きし?
何者の手ぞ、その火を敢て捕へたる?

そも亦何の肩、何のわざの、
よくも捩りしなが心臓の腱を?
またその心臓うち始めたるとき
用ゐられしは何の恐しき手? 何の恐しき足?

槌や何なりし? 鎖や何なりし、
いかなる鎔爐になが脳髄はありし?
鐵砧や何なりし? いかなる畏き手のよくも
その死を致す怖畏を握りし?

あまつむら星槍を投げて
涙に空をうるほせしとき、
神その創りし汝を見て笑みしや?
仔羊を創りし彼また汝をも創りしや?

虎よ虎よぬばたまの、
夜の林に燃ゆる虎よ。
いかなる不死の眼または腕の、
よくも作りしながゆゆしき均整を?
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