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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

私製詩歌「時ノ神楽」

天にあまねく
地にあまねく
八百万うつしむ国ぞ

―― 緑なす 花綵(はなづな)の 我らが列島(しまじま) ――

空の彼方を おし渡り
海の彼方を おし渡り
現し御世(みよ)を 揺らぐもの
時ノ神楽を 誰か知るらむ

―― 緑なす 花綵(はなづな)の 我らが列島(しまじま) ――

天にあまねく
地にあまねく
八百万うつしむ国ぞ

我らが美し 現し国
まほろばの ―― 緑の花綵(はなづな)連ねる国ぞ ――

落ち激つ 時の渡瀬
流され命の
幸(みゆき)かなしむ

豊かなれ 日影のほとり
気振り立つ 常世の岬
青葉渦巻け 袖ひるがえれ ……

威烈(タケハヤ)は 真素(ましろ)にして
天照(アマテル)は 真赭(まそほ)なり
今一度(いま-ひとたび)の 時を揺すれ
今一度(いま-ひとたび)の 波を揺すれ

千入(ちしほ)や千入(ちしほ)
命の雫を 括り染め

色いや重(し)きて
匂い立つ
花なる君よ
花照るや君

君 流離(さすらい)の 美し花珠(はなだま)
時渡瀬(とき-わたらせ)に 青らむ星よ
涙の痕こそ血の色に
しとどに濡れて
その白布(しらぎぬ)に浸み透れ ――

天にあまねく
地にあまねく
八百万うつしむ国ぞ
まほろばの 美し列島(しまじま)
玉響(たまゆら)の ―― 星に連なる

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私製詩歌「神の火」

空に遍(あまね)く 押し寄せ群れて、
黒く闇(くら)めく 雲の八重波(やえなみ)、
重く乱れる 異界(よみ)の空気が、
閃光(ひかり)に裂かれて 震えだす。

しきりにひらめく 天地の梯子、
遥けき虚空(そら)も ものとせず。
あれは異界(よみ)の 天(あま)ツ御柱(みはしら)、
果てにあるのは 地球(ホシ)なのか。

山に野に 灰陽炎(はい-かげろう)は 舞い狂い、
歪みて 澄みて 見えもせず、
ただ轟々と 鳴り渡る。

世界は激動(シャクジ)の波目(ナメ)に 呑まれて、
怒濤に消えて 色目なし。
ああなお暗い 昼下がり、
草木岩根が 喚き居て、
残れる震(ナヰ)も 消えぬ間に、
またも沸き立つ 禍ツ霊(マガツヒ)よ。

烈(はげ)しき揺れに 皹(ひび)割れて、
口を開けゆく 彼(か)の山に、
神の血潮の かたちして、
火霊色(かぐつち-いろ)こそ 浸(し)み透(とお)れ。

我や先、人や先、
目はかすみ、息は詰み、
誰(たれ)とも知れぬ 手を追うて、
時をも知れず 駆け抜ける。

灰神楽、灰神楽、
あつく覆える 坂の上、
焼けて爛れて 神崩れ、
いつとも知れぬ 雨ごとに、
山を枯らしぬ――
川を枯らしぬ――
我が 愛(は)しきひと 埋(うず)めらる。

いつしかも 陽はまた 雲間に輝いて、
はや遠白(とおしろ)く 傾(かたぶ)きぬ。
雲間より 斜めに陽は洩れ、
遠く消え行く 暗き異界(よみ)。

うら麗(ぐは)し 山――
うら悲(がな)し 春――
うら恋(ごい)し 君――
雪な踏みそね ……

私製詩歌「神々の身土」

日の影の ゆりくる きしべ
色無き空に 終わりの星を抱いて たてるもの
はるかに あおぐや 神々の身土を

空の裂け目より カムナビは たたり
幾条もの ひらめく いかづちを まとい
聞けるや 鳴りて響(とよめ)く 雲の音(ね)を

はるけき 神々の身土
海と山の間に やちまたは うねり
風と光に 川は さやげり

果てしなくも 崩れゆく
在りし月日を 偲ぶとき
うつろひの 波目は震え

地の底に とどろく水の音(ね)を聞けば
たぎりおつ かなしみ うずき

うつしよの 裂け目を さまようもの
名も無き神々の名の下に
うましもの――

あきらけく
さやけく
けやけし――

思いは まだ なさざるに のたうち
神々は柱のかたちして 荒び
歌をとどろかす
火を噴く山並みの 如くに

形霊(カタチ)と――形代(カタシロ)
たれにも 形得(かたえ)ず かなしみ――

滝の音(ね)
ほろびにいたる 誘水(イザナミ)
裂け目より出ずる
黄泉の底の 水の声――

因果の蔓(かげ)は 雲にからまり
無限の苦さが にじむとき

しんとして 御中(みなか)に けむれ
雲の影に
ひそやかに 化(け)もちて たてるもの

天の原 ふり放(さ)け見れば
その果てに――

緑なす 花綵(はなづな)の 現(うつ)しき島々――

さ青(を)なる 誘生(イザナキ)が花
神々の身土よ