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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

2021.04.17ホームページ更新

気が付いたら1年近く間が空いてしまいました。

下記、更新しました。

▽《物語ノ本流》コーナー
http://mimoronoteikoku.tudura.com/astrolabe/content.html

第二部「タタシマ」/第八章「百鬼夜行」全80ページ

ライフワーク作品としているオリジナル和風ファンタジー漫画で、これまでに作成公開した正味ページ数=898ページになりました。描きに描きたり…というところですが、まだまだ続きます。

今回、新型コロナ問題が目まぐるしく、行動制限や時間制限が厳しくなる中での制作になりました。

「百鬼夜行」というネーミングと、現実の新型コロナ騒動がシンクロしたのは、なんとも不思議な気持ちです。ワクチンが普及し始める6月までは、大変かも知れませんが…

仕事の形態も随分と変わりました。テレワークとか。紙文書から電子文書への変更とか。

変わらざるを得なかったのか、それとも、大きく変わるタイミングだったのか…適応するのも一苦労というところです。


TOMITA_Akio@Prokoptas様ツイッター/紫色、染色、黄金、水銀、錬金術

https://twitter.com/Prokoptas/status/1419747532087824387
ニセムラサキは”偽-紫”の意ではなく”似せ-紫”の意。そのうち青味のものを「江戸紫」「今紫」、赤味のものを「京紫」「古代紫」と呼ぶが、たいていは蘇芳や藍を使って紫に近づけたものという。もちろん「蘇芳」という色名は別にある。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1419775542480433179
これに対して西方の紫(purple←πορφύρα)は、同名の2種の貝(Murex trunculusとPorpura haemastoma)の腺から採れる染料であり、それによって染められた布をも指す。それがいかなる色であるかもさることながら、いかなる色と認識されていたかが重要であると思われる。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1419777385520525318
先ず、πορφύραは血の色である。「大地はπορφύρα色に、血潮でもって濡れ浸し……」(Il.XVII,361)
これはまた海の色でもある。「河々は……山々からまっしぐらに、πορφύρα色なす潮路へ、轟々たる響きを立てて押し流れれば……」(IL.XVI,391)

https://twitter.com/Prokoptas/status/1419779305794531335
これだけでも充分に混乱させられるが、さらに πορφύρα は希臘人にとって虹の色でもある。「ポルピュラ色の虹を、死すべき人間どもへと、ゼウスが天蓋からして掛け渡したよう」(IL.XVII,547)そういう次第で、邦訳ではテキトーに訳されることになる。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1419782573526458375
サッポー詩(LP54)「πορφύρα色の衣(クラミュス)に身をつつんで 天空より舞いおり来る(エロース)」。訳者の沓掛良彦はこれを「くれない」と訳しているのだが、日本人には、もちろん、沓掛の訳の方がしっくりくるだろう。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1419790338965704707
紅花はエジプト原産で、日本には7世紀頃、その染色法とともに伝来したという。私見だが、この紅花染めの色とスミレ色(violet)との間にあるのが西方のπορφύρα→purple、日本の紫は蘇芳と藍との中間の色とみなしていいのではないかと思う。異論のある方はどうぞ。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1420118112305774592
πορφύραはフェニキアの特産物であり、それ以外の地では輸入品であるから稀少価値を有した。エチオピア王は紫の衣裳を見て云ったという。「ペルシア人は人間もいかさまだが、その身につけるものもいかさまだ」(Hdt.III,22)。染色するのは生地の色を偽る、というのだ。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1420119459381923840
焼く・煮る・炙る……こそ最初の物質変成つまり錬金術だというのがわたしの持論だが、第2の物質変成は染色だろう。染料は「顔料の場合と同様に……その色で織物を飾るのに使われるよりも先に、先ず人体に用いたのではないかと考えられる」(フォーブス『古代の技術史』下・II)

https://twitter.com/Prokoptas/status/1420120404165758977
とはいえ、「古代人が色に対して(さらには顔料や染料に対しても)、宗教的勝呪術的意味をもたせていたことに十分注意を向けるべきであって、色について論じる際は、古代人がそのような意味合いで色彩を用いていたという面を常に認識していなければならない」(フォーブス)。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1420122759259033600
金属を染色することが初期錬金術の課題であったことは、テキスト上も確認できる。しかしそのことが、卑金属を貴金属に見せかけるという汚名の原因にもなる。「彩色や染色、あるいは変色といった諸現象に関心を抱くようになり、それを研究し始めたときに化学が成立したのである」

https://twitter.com/Prokoptas/status/1420476527393734658
日本語では代表的な金属を色で区別する。あかがね=銅、しろがね=銀、くろがね=鉄、き(→「こ」に転音)がね=黄金、である(いずれも99%以上の純度であるが、100%でないことに注意)。が、このほかに「ま-かね」というものがある。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1420477571297280002
「真金(Magane)」は日匍辞書に「金・黄金」となっていて、紛れはない。しかし、「真金(まかね)吹く 丹生の真朱(まそほ)の 色に出て 云はなくのみぞ 吾が恋ふらくは」(万葉XIV,3560)があり、ここでは鉄の意だとするのが定説であった。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1420478706514939904
「吹く」といえばすぐに踏鞴(たたら)製鉄しか思い浮かばない研究者たちが定説をつくりあげていたせいである。これを真っ向から批判したのが廣岡義隆「「まかね」考」彼は大仏造営を根拠に、「黄金を葺き上げる(=鍍金する)」意と解釈した。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1420499466918850560 「当時盛んであった造仏(大仏等)の際に、仏像への鍍金(葺く)の過程で金を水銀によって液状化して用いたところから(アマルガム法)、水銀の産地である丹生に掛ける枕詞の用例」と、論考は奈良の大仏が本来金ピカの金色像であったことが忘れられている盲点を衝いたといえる。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1420503127065649157
しかし、なるほどアマルガム法による鍍金に水銀は不可欠であるが、だからといってそれが直接「丹生」を指すわけではない。まして、「真金吹く吉備の中山帯にせる 細谷川の音のさやけさ」(古今和歌集』)という歌が、同一の根拠で説明できないのは、いかにも苦しい。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1420831438950133766
どうやら、「辰砂は赤い」という先入観・固定観念に人々はとらわれすぎているらしい。なるほど辰砂は赤い(左図)、しかし黒辰砂(右図)もあるし、黄土(おうど/きづち)も加熱すれば赤くなることは、先に見たとおりである。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1420833134241665027
さらには、クロガネといわれる鉄も、自然界では赤い。左は砂鉄。右は、砂鉄のもととなる鉄の鉱床が地表に現れたもの。鉄元素が酸化して(つまり錆びて)赤くなる。自然界において金属はみな合金の形で存在する(唯一の例外とされる金も、多くは合金である)。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1420836437147090946
岩見銀山は、当時の世界の銀の総産出量の1/3を産出していたという。世界遺産になるだけの理由があるのだ。それよりもっと早く、「黄金の国ジパング」伝説のもととなった平泉の黄金文化の金は、99%以上の純度だという。ところが、それはいかなる技術によって達成されたのか?

https://twitter.com/Prokoptas/status/1420869713115029504
自然界の金属はみな合金の形で存在する(例外とされる金も多くは合金である)。合金は還元し、不純物は除去されて(精錬されて)初めて純粋の金属となる。「灰吹法は貴金属を卑金属から分離する方法としてはおそらく最も古く、また最も効果的なものである」(フォーブス)。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1420877555821780993
ところが、バビロニア時代から知られていたこの方法を、日本は16世紀まで知らなかったと通説は云う。しかし、貴金属と卑金属の分離の仕方は知らなかったが、金の精錬の仕方や、鍍金の仕方は知っていた(金ピカの大仏とはそういうことだ)などという理屈に合わぬことがあろうか?

https://twitter.com/Prokoptas/status/1421208370434904067
西方では、金(Au)と銀(Ag)との合金は琥珀金(ἤλεκτρον→ラテン語electrum)と呼ばれた。これを合金として単独の金属から外し、それまで金属と認められなかった水銀(Hg)を加えて「古代七金属」が成立した。図は最古の貨幣とされるエレクトロン貨(B.C.6)。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1421210292353073158
かくして、古代七金属、七惑星、虹の七色、音楽の七音階が関連づけられ、相俟って「宇宙は音楽を奏でている」といったピュタゴラスの正しさを証明しようとした。虹の色を「各色の帯のはばが、音楽の音階の間の高さに対応していると結論」したのはニュートンであったという。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1421231458903986182
金は、金属のまま自然界に存在しうるほとんど唯一の金属である。したがって、”根気さえあれば”純金を得ることができる。「カリフォルニアでは99%の金が発見されたが、その平均は88.4%……オーストラリアでは95%、日本では砂金で62〜90%、鉱脈金で57〜93%である」(フォーブス)。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1421235609838886912
しかし、「鉱山や鉱床でとれるほとんどすべての自然金は天然の合金で、時折かなりの量の銀を含み、たいていは若干の銅と痕跡量の鉄を含んでいる」(フォーブス)。先の「灰吹法」は、金や銀の貴金属を卑金属から分離する方法であって、金と銀を分離させるわけではない。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1421240365323935744
日本の金山はその方法を確実に知っていた。──金を粘土と食塩と混ぜ、その混合物の入った坩堝を木炭炉の中で赤熱状態で12時間加熱。それから鉢を取り除き、その金を熱い塩水で洗って生成した塩化銀を流し去る(フォーブス)。いわゆる「塩化法」と云われるものである。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1421242651370684416
奥州の黄金文化について、技術的なことについて研究者たちは不思議なほど沈黙している。奈良の大仏の鍍金についても然りである。先に、ベンガラの発色をよくするため、縄文人は素材を海水に漬けておくことを経験的に知っていたことの重要性を指摘しておいた。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1421595555461943299
「鉱床の分布・配列は、地帯構造に左右され……わけても水銀鉱床は、世界的にみて著しい偏在性を示している……すなわち、環太平洋地域と、地中海・ヒマラヤ地域の二つの大きい造山地帯に、ほとんど集約的に配列している」(矢嶋澄策)

https://twitter.com/Prokoptas/status/1421598890286067712
日本列島は環太平洋にすっぽり入るわけだから、水銀の歴史がないはずはないのだが、ほとんど研究されていない。「丹」とか「丹生」という地名に目をつけてこれに日本史の立場から先鞭をつけたのが松田寿男で、これに化学の立場から共働したのが先の論考の著者・矢嶋澄策という。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1421603117771071489
とはいえ、彼らは文字記録を根拠に据えるため、当然、文字記録のないそれ以前のことについては口を噤む(それが研究者の矜恃というものであろうが)。しかも、重要な技術は大陸から伝わったという固定観念からはどうしても免れないらしい。とはいえ、その成果は重要である。


TOMITA_Akio@Prokoptas様ツイッター/天津甕星

https://twitter.com/Prokoptas/status/1415450030291390480
日本神話に星が出るのは、天神から葦原中国の平定を命ぜられたフツヌシ、タケミカヅチが、「天に悪神あり、名を天津甕(アマツミカ)星と曰ふ。亦名は天香香背男(アマノカカセヲ)。請ふ先づ此の神を誅ひて、然して後に下りて葦原国を撥はむ」と答えたと(書紀・神代下)。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1415450373679026179
この香香背男を、「最後まで「服はぬ」天津甕星……明けの明星として、他の星々が消えた後も燦然と光を放って、独り暁天に残る金星の姿を神格化したもの」という解釈は、たぶん、正しいであろう。しかし、その解釈が陰陽五行説を下敷きにしたものであるところに不満が残る。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1415453096658960386
方位を知るため或いは農作業の目安にするような星は「当(あて)星」「役(やく)星」などと呼ばれる。星座神話を欠く民族においても、そういった星の伝承は多い。プレイアデスとオーリーオーンはそういう星として(仮令星座としては知らなくても)よく知られていた。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1415759552557977601
「カカセヲ」はおそらく「輝く」と同根の語(吉野裕子ならカカは蛇の古語だと云うだろうが、カカセヲに言及しているかどうかは未調査)。そういえばカカセヲを祭神とする神社の多い県の1つ茨城には、東日本で初めての色彩壁画が発見された古墳虎塚古墳があったはず。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1416150459140747265
アマテラスがニニギに葦原中国を治めさせようとした時、そこは「多(さわ)に蛍火の光(かかや)く神、及び蝿声(さばへな)す邪しき神有り。復草木に能く言語(ものいふこと)有り」(神代下)という。これが日本列島における文字で記録しえた最古の相であったとみてよかろう。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1416153013685784582
そこでは、樹木のそよぎに神意を伺ったというドードーネ神託所の伝説も信じることができる。古代の人々は「土地や河海、岩石や樹木、鳥・獣・虫・魚など自然界のあらゆる事物には神(精霊)が宿り、それらのさまざまな変異はそれを占有する神の意志の顕現であると信じていた」

https://twitter.com/Prokoptas/status/1416155791468339201
「自然界の事物を自分のものとして占拠したり手を加えて使用しようとする場合、それに先立って必ず神との交渉が必要であると考えていた。つまり、人はその営為に先立って神に対する祭儀を行わなければ、神の妨害にあってそれを安全・確実に進めることはできないと信じていた」。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1416160055108456457
かかる自然観がそのまま保持されることは難しい。例えば樹木を伐採する際に行われる「鳥総立(トブサタテ)」が好例である。
[1]伐採してよいかどうか神に伺いを立てる。
[2]許しが得られたら、遷移していただくためトブサを立てる。
[3]これを他所へ遷脚して後に伐木する。

https://twitter.com/Prokoptas/status/1416162489599856642
しかるに今やその意味が忘れられ、伐木後に、それも申し分け程度に立てられる。これを平林章仁は「神々の没落」として跡づける(『鹿と鳥の文化史』)。人の営為の妨げとなるような神は祟り神・偽りの神として速やかに他所へ遷却・追放されなければならないというわけである

https://twitter.com/Prokoptas/status/1416164033837809665
「なんじら日本人知らずや、われら昔、この列島の大地に年ふる土蜘蛛の精霊なり。われら地のそこに沈められた呪いを忘れず、いまこそ時を得て、君が代を討ちほろぼし、千数百年のとしつきを越え、われらが世を打ち立てんとよみがえりきたり」
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/yaziuma/kowa1.html

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2019.04.27ホームページ更新

『シド・フィールドの脚本術』

脚本を書く前に考えることは、
(1)エンディング
(2)オープニング
(3)プロットポイントI
(4)プロットポイントII
――の4つで、しかもこの順番である。プロットポイントとは、ストーリーのアクションを加速させ別の方向へと行き先を変えるような事件、エピソード、出来事のことである。

随分と間が空いてしまいましたが、以下のページを更新しました。

★《特設セクション§物語ノ傍流》コーナー
http://mimoronoteikoku.tudura.com/astrolabe/x_uranote.html

▽目次ページを若干編集
▽コミック版『宿命の人 運命の人―雪白花風信―』完成(最終ページまで掲載&閲覧可)


《時事メモ》

【リュウグウ表面にクレーター確認 はやぶさ2、衝突実験に成功】

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は25日、探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウへ金属の衝突体をぶつける実験で、リュウグウ表面にクレーターができていることを確認したと発表した。はやぶさ2がリュウグウの高度1.7キロから観測した結果、直径10メートル以上にわたって穴のように地形がへこんで変形していることが分かった。小惑星へ人工的にクレーターを作ることに成功したのは世界初。
はやぶさ2は24日、高度20キロから降下を開始し、25日午前11時16分から約1時間半にわたり、高度1.7キロから衝突装置がぶつかったと考えられるリュウグウ表面の領域を観測した。その結果、計画で衝突体をぶつける予定だった地点から十数メートル程度離れた地点に、地形が大きくくぼみ、黒っぽく色が変化している場所があることが明らかになった。津田雄一・プロジェクトマネジャーは「まさに衝突装置で狙った地点に明らかな地形変化が確認された。衝突実験は大成功だ」と話した。
JAXAなどは事前にリュウグウのような小惑星に衝突装置をぶつけた場合にできるクレーターの大きさや形状を予測してきたが、実際は、予測の中で最も大きなサイズのクレーターが作れたとみられるという。事前のクレーター予測の研究に取り組んできた荒川政彦・神戸大教授は「7年間この日を待ちわびていた。想像以上に、はっきりとくっきりと立派な穴を確認することができ、人生最高の日だ」と話した。
はやぶさ2は今月5日、重さ約2キロの銅の球をリュウグウへ秒速2キロで撃ち込み、はやぶさ2から分離された小型カメラが衝突によって物質が飛び散る様子の撮影に成功していた。今年2月の着陸に続き、衝突実験もすべて計画通りに成功させた。今後、クレーターやその周辺への着陸を検討する。
小惑星表面は、太陽や宇宙線の影響によって、小惑星ができたころとは変質していると考えられる。表面を覆う物質の下には、影響を受けていない「生」の物質があるとみられ、はやぶさ2は衝突実験によって「生」の物質を露出させ、それを採取することによって、太陽系の初期の状況を解析することを目指している。
衝突実験は、約5キロもの爆薬を詰めた衝突装置をリュウグウの上空500メートルで分離し、タイマーによって40分後に爆発させ、その勢いで銅の球をリュウグウへぶつける。爆発などの破片にぶつからないようにするため、はやぶさ2は起爆までの間にリュウグウの陰へ隠れるという極めて高度な運用が求められた

【やはり宇宙は加速している。より正確なハッブル定数の数値が判明】

こちらの画像は、ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された輝線星雲「LHA 120-N11」(単に「N11」とも)の姿。N11は地球から16万2,000光年先の「大マゼラン雲」に存在します。
今からおよそ138億年前のビッグバンによって始まったとされるこの宇宙は、現在も膨張を続けていると見られており、膨張する速度は「ハッブル定数」という値で示されます。名前の由来は、遠方の天体が地球から遠ざかっていることを見出したアメリカ合衆国の天文学者エドウィン・ハッブル。ハッブル宇宙望遠鏡もまた、彼にちなんで命名されました。
今回、ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡を使ってハッブル定数の再計算を行いました。チームを率いるのは、宇宙の膨張速度が加速していることを発見した功績によって2011年にノーベル物理学賞を受賞したAdam Riess氏です。
今回の計算を行うために、大マゼラン雲のなかにある70個の「ケフェイド変光星」がハッブル宇宙望遠鏡によって観測されました。ケフェイド変光星は明るさが周期的に変化する恒星で、絶対等級(恒星本来の明るさ)が明るいほど恒星の明るさが変化する周期も長い、という特徴があります。
そのため、変光周期から求めた絶対等級と地球から見た実視等級(恒星の見かけの明るさ)を比較すれば、地球からの距離を導き出すことができます。ケフェイド変光星のなかには別の銀河にあっても明るさの変化を識別できるものがあるため、銀河間の距離を測定する際にもケフェイド変光星は利用されます。
今回の観測による再計算で、ハッブル定数は74.03km/s/Mpcと算出されました。これは「1メガパーセク(=326万光年)あたり毎秒74.03kmずつ膨張している」ことを意味します。1光年あたりに換算すれば毎秒およそ22mmとごくわずかですが、宇宙は膨張しているのです。
ところが、他の観測によって求められたハッブル定数は、今回の数値とは異なります。欧州宇宙機関が2013年まで運用していた天文衛星「プランク」の観測データをもとに計算されたハッブル定数は、67.4km/s/Mpcでした。
プランクの任務は初期の宇宙の名残である「宇宙マイクロ波背景放射(CMB:Cosmic Microwave Background)」を観測することでした。先に触れた約138億年という宇宙の年齢も、プランクの観測データをもとに算出されたものです。つまり、宇宙の初期の時代と現在に近い時代を比較すると、膨張速度がおよそ9パーセント速まっていることになるわけです。
膨張速度が加速していること自体はすでにRiess氏らによって発見されていましたが、その原因を探るためには、過去と現在における膨張速度の差をなるべく正確に求める必要があります。「ハッブル定数の謎に挑むことは、今後数十年の間で最も興奮する取り組みかもしれません」と語るRiess氏は、定数と同じ天文学者の名を冠したハッブル宇宙望遠鏡による観測を、今後も継続していくとしています。

2018.08.31ホームページ更新

物語ノ傍流》にて

★小説版『天球のアストラルシア―瑠璃花敷波―』
★コメディ推理小説:妖怪探偵・猫天狗シリーズ(4編、うち1編は書下ろし)

以上、2つの小説版のシリーズ作品を公開しました。目次&詳細は以下。

*****

『天球のアストラルシア―瑠璃花敷波―』目次

◆part.01「水のルーリエ*1」

(1)見知らぬ噴水
(2)疑惑と恫喝
(3)地下牢
(4)陰謀めいた話
(5)魔法使い治療師
(6)今、起きている事

◆part.02「水のルーリエ*2」

(1)変身魔法を目撃す
(2)総合エントランス
(3)中庭広場
(4)髪の下にある謎は
(5)微妙に気になる噂
(6)青いドレスと少女

◆part.03「密室の謎と謎の襲撃*1」

(1)朝の会話:王子と王女
(2)再びの噴水広場にて
(3)偶然の取っ掛かり
(4)宮殿ゲートを通過する
(5)王妃の中庭:密室の中の姫
(6)三尖塔の見える回廊にて

◆part.04「密室の謎と謎の襲撃*2」

(1)不意打ちのような襲撃
(2)事件の後の長い夜(前)
(3)事件の後の長い夜(中)
(4)事件の後の長い夜(後)

◆part.05「不穏な昼と眠れない夜*1」

(1)涙ながらの相談と検討
(2)持ち込まれて来た奇妙な噂
(3)雨天決行なブラ下がり
(4)血みどろの点と線
(5)たまゆらの銀の夜を過ぎて
(6)偶然と必然の場外乱闘
(7)閲兵式の表と裏(前)

◆part.06「不穏な昼と眠れない夜*2」

(1)閲兵式の表と裏(中)
(2)閲兵式の表と裏(後)
(3)物思う夜、すずろなる朝のひととき
(4)半可通たちの急展開(前)
(5)半可通たちの急展開(後)
(6)微妙に尾を引く決着

◆part.07「可能性と選択肢*1」

(1)夕食会を兼ねた報告会(前)
(2)夕食会を兼ねた報告会(後)
(3)遠き記憶の夜の底(前)
(4)遠き記憶の夜の底(後)
(5)城下町へ繰り出して
(6)過ぎ去りし日の面影

◆part.08「可能性と選択肢*2」

(1)結婚式と公園のパーティー
(2)変態な魔法道具トラブル
(3)モンスター襲撃の夕べ(前)
(4)モンスター襲撃の夕べ(後)
(5)謎は続く、どこまでも

◆part.09「因縁の発生せし処*1」

(1)夜明け前の地下牢より
(2)天球《暁星(エオス)》の空の下
(3)容疑者たちの証言
(4)紫金の色のファム・ファタル
(5)秘密会談な昼食会

◆part.10「因縁の発生せし処*2」

(1)謎と黙示のスクランブル(前)
(2)謎と黙示のスクランブル(後)
(3)ささやかな突破口
(4)正解と誤解が行き違って決闘
(5)もうひとつの過去の情景

◆part.11「深く沈める謎の通い路*1」

(1)けぶり降りしきる雨が下
(2)違和感に満ちた光景
(3)ランチトーク:噂話を小耳に挟む
(4)予期せぬ遭遇そして尾行
(5)怪しき行き先を突き止めて
(6)大暴走と大脱出

◆part.12「深く沈める謎の通い路*2」

(1)謎の少年、遂に現る
(2)地上の騒動、地下の路道
(3)不意打ちの衝撃と疑惑
(4)事実と真実の地下迷宮
(5)汝が心いずこに在りや
(6)表面化した事しない事
(7)最初の、かの日の目撃談

◆part.13「もつれた意図と謎の追跡*1」

(1)手術、或いは高難度クエスト
(2)宿業の縁は今も巡りて
(3)魔法使いと魔法道具
(4)中庭広場、再会と奇遇と困惑と
(5)アンティーク魔法道具のミステリー

◆part.14「もつれた意図と謎の追跡*2」

(1)晴れた昼下がりの笑劇(前)
(2)晴れた昼下がりの笑劇(後)
(3)追憶は夕べの風と共に(前)
(4)追憶は夕べの風と共に(後)
(5)星に願いを、裏の高難度クエスト

◆part.15「予兆:風雲、急を告げる」

(1)目下の問題点の提示と検討
(2)古代遺物《雷撃扇》
(3)窓の外には怪しい人影
(4)ラウンジ:もうひとつの邂逅(前)
(5)ラウンジ:もうひとつの邂逅(中)
(6)ラウンジ:もうひとつの邂逅(後)

◆part.16「かく示された連鎖*1」

(1)朝の会話:選択と行動が分けたもの
(2)容疑者たちの証言のおさらい
(3)王妃の中庭:密室の答え
(4)再びの地下牢
(5)地下牢:前哨戦(前)
(6)地下牢:前哨戦(中)
(7)地下牢:前哨戦(後)

◆part.17「かく示された連鎖*2」

(1)今ひとたびの邂逅と分岐
(2)追いつ追われつ(前)
(3)追いつ追われつ(後)
(4)大広間:右や左の緒戦展開(前)
(5)大広間:右や左の緒戦展開(後)
(6)入れ替わり立ち替わり(前)
(7)入れ替わり立ち替わり(後)

◆part.18「凶星乱舞曲」

(1)怪しすぎる控え室
(2)注文の多い曲がり角(前)
(3)注文の多い曲がり角(後)
(4)尾行する者、問答する者
(5)にわか裂け目を分け出でし
(6)天窓の上と下、四方(よも)の対決(前)
(7)天窓の上と下、四方(よも)の対決(後)

◆part.19「敷波の行方*1」

(1)対決の後のミッシング・リンク(前)
(2)対決の後のミッシング・リンク(後)
(3)移動は捕り物を添えて(前)
(4)移動は捕り物を添えて(後)
(5)捕り物の残りと、その後
(6)表と裏の時系列(前)
(7)表と裏の時系列(中)
(8)表と裏の時系列(後)

◆part.20「敷波の行方*2」

(1)奪い、また与えしもの(前)
(2)奪い、また与えしもの(後)
(3)虚実の狭間の結節点(前)
(4)虚実の狭間の結節点(後)
(5)暮れなずむ二重の情景(前)
(6)暮れなずむ二重の情景(後)
(7)それぞれの岸辺
(8)名も無き補遺

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【妖怪隠密・猫天狗が笑う!~ウサミミ地蔵の不可思議を起こせし事】

道照(どうしょう)は、豪雪地帯の山腹にポツンとある寺社で修行する青年僧だ。師匠と兄弟子は、お国のお殿様からの急な仕事の依頼で山を降りており、道照が一人で留守番をしている。静かな留守番の日々…の筈だったが、その日、吹雪の夜が明けると――山の方からデカい雪玉が転がって来て、お堂に突っ込んで来たのだ!その雪玉の正体は…そして、続いて寺社の居候となった謎のウサミミ少女の背後には、何やら不穏な事情があるようで…?!

【妖怪探偵・猫天狗が飛ぶ!~波打ち際の"禊"事件】

「あなたの死亡原因は?」と聞かれた。しかも死亡報告書によれば「不明ながら殺人の可能性あり」なる追記項目があるそうだ。この事実に納得できない古代博士は、99歳の老体にむちうって自分の死亡原因の解明に乗り出した。霊体になった古代博士の協力者は、妖怪変化・6本の尾を持つ猫天狗。猫天狗は、古代博士を助けて、八面六"尾"の大活躍をする!

【妖怪探偵・猫天狗が走る!~ご近所様の殺人事件】

目暮啓司(めぐれ・けいじ)は天才プロフェッショナルな空き巣だ。今日のターゲットに定めたのは、閑静な住宅街。いつものように人通りが少なくなる時間帯、目暮啓司はサラリーマンに変装し、住宅街に乗り込んだ。ふとしたことで、ある会話をこっそりと見聞きする目暮啓司。その後ろでは、奇怪な灰色ネコが金色の目をピッカピカと光らせていた!次々起こる想定外の出来事の末に、何故か目暮啓司はカレーをご馳走になったが…その時、近所の家から叫び声がした。「人殺しだ!」殺人事件発生か?!

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《おまけ》

ラテン語の格言で、気に留まったものをメモ。

Omnia fert aetās,animum quoque. 歳月は全てを奪い去る、そして記憶をも。―ウェルギリウス「牧歌」
Bonī improbīs, improbī bonīs amīcī esse nōn possunt. 良き人々が不正なる人々の友人であること、不正なる人々が良き人々の友人であることはありえない。―キケロー「友情について」

井筒俊彦氏の、気になる文章をメモ。

いつ、どこからともなく、これという理由もなしに、突如として吹き起る風のように、こころの深層にかすかな揺らぎが起り、「念」すなわちコトバの意味分節機能、が生起してくる、という。「念」が起る、間髪を入れず「しのぶのみだれかぎりしられ」ヌ意識の分節が起る、間髪を入れず千々に乱れ散る存在の分節が起り、現象世界が繚乱と花ひらく。意識分節と存在分節との二重生起。―井筒俊彦『意識の形而上学』

以上であります