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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

深森イラスト遊戯・初夏版

・・・☆一つ目の作品は、タイトル「初夏の宮廷の或る一日」。

童殿上(わらわ-てんじょう)というスタイルが古代から中世の宮廷にはあったそうで、宮殿の回廊の上に、童殿上の少年2人を配置。

子供に出来ることは限られていたようですし、伝言とか文の使いとか、そんなものだったのでしょうか。女の子の場合は、行儀見習いという側面もあったかも知れません。昔の子供は、割と早くから大人扱いされていたようですが…(『源氏物語』の場合、男の子は、12才から13才くらいで元服してしまっていたらしい)

当サイトの感覚では、「そりゃ早過ぎるだろう」というのがありましたので、間を取って、17才から18才で元服というような感覚である…という設定をしてあります。中世も末期になってくると、だいたいそういう感じが広がっていたようですし、ちょっと苦しいですが、それなりに妥当であろうと思案しております(笑)

…少年たちの視線の先には、どうやら壮年と見える年代の重臣クラスの殿上人(てんじょうびと)が2人。扇に隠れて、何かをささやきあっておられます。もしかしたら、いわゆる「宮廷政治の陰謀」を相談しているところかも。うーむ。何だかアヤシイ。(…という感じが出ておりますでしょうか?^^)

背景は、京都御所に観光に行った時のケータイ写真を使いました。人物イラストに合わせるために、強烈に遠近法を歪めてあるので、超時空・要塞的・奇妙な建物になっているかも知れませんが(アセアセ)…^^;

・・・☆二つ目の作品は、タイトル「紫の小姫」。

成長したら、目の覚めるような絶世の美女になるのだ、という設定…(笑)

手に持っている花は、カキツバタでもアヤメでも、どちらでも(=モデルにしたのは、カキツバタですが…)。着物の文様は「小葵文様」とか言うものです。昔は良く使われていたそうで、それなら「こういった状況でも、それほど不自然では無いだろう」ということで。

資料で昔の色合わせを見ると、昔の人は「紫」を気にしていたみたいだなと言う印象です。『枕草子』に、「薄紫に白の薄物を着ている少女が良い」とか書いてあります。

他には、例えば、衣冠ですけれども。一位から四位の貴族は「黒の衣冠」だと言うことでしたが、よーく調べてみると、どうも「濃紫」をどんどん濃くしていって、ついに「黒」と言っていいほど黒くなったのを仕立てていたらしく。正確に言ってみれば、「黒紫」でしょうか…

うーむ。本当に「黒」で作ってしまったら、それこそお葬式の色ですし、その辺は流石に、昔の貴族は敏感だったのかも知れません。「縁起でも無い」とか、そんな感じで。

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深森イラスト&雑談

…絵巻物で、昔の男性スーツなど眺めてみて、気が付いた点が一つ。

衣冠装束などのスタイルは、工事現場の人のツナギ・スタイルによく似てるなあという事でした。特に下半身の幅広ズボンの部分。

その筋の政治家というのは、国を壊したり立て直したりする立場の人なので、工事現場の人とファッションが似てくるのは必然なのか…と思案してしまいました。

…元々、神話でも、イザナギ&イザナミの国土工事から、国づくりが始まってますから…

…それなら、さしずめ烏帽子は、工事現場の必需品=安全ヘルメットに違いない…

だから、次の選挙では、誇大広告詐欺やリフォーム工事詐欺、次々販売詐欺、なりすまし詐欺…などなど…に引っかからないように、注意しなければ…と、キマジメに思うのでありました…

…イラストを少しばかり(=実はこれが、本題)。

素材的なものですが、「亀甲地臥蝶の丸」とかいう複雑な模様を有職文様の資料で見かけまして、どうも少年のズボンに使われるスタンダードな模様らしいと言う事で、「そのうち使うチャンスもあるだろう」と、作ってみたものであります(=えらく時間がかかった)

資料写真を見る限り、ズボンの表面積は狭いので、この面積で十分、場面描写に使えるだろうと期待していたのです。

あとで、十五歳以下の「限定の文様」らしいと言う事を知って、「使えないわっ(使うとしても、非常に稀)」と、ショックを受けましたが…^^;

でも、女性の唐衣にこの模様が出てくることはあるみたいですね。そちらで思案中です。

とは言え、「せっかく作った模様なので」と言う事で、イラスト担当、超がんばり。

小さなカラーイラスト作品ひとつ、公開です。タイトルは「悩める王子」とかでしょうか。「亀甲地臥蝶の丸」を使ってるから、間違い無く、十五歳以下の少年王子であります。

宮廷政治か何かで、超・複雑怪奇な事情があって、それが少年を悩ませている図…という事になるかも。宮廷政治すなわち閨閥政治なので、それも、年若い者たちにとっては、ストレスになったかも知れません。

調べてみると、何かの年次儀式で宮廷に行くような時は衣冠スタイルだったそうなのですが、そのとき、元服前の少年たちは、衣冠に相当するスーツとして、どうも脇の空いた赤い上着(小葵文様)を着ていたらしい…という文章を見つけたので、まあ、こういう不思議な格好になりました。

本当はどうだったのかは知りませんので、このイラスト限りのファッションであります。

靴はよく分かりませんでした。「雨が降ったときはどうするんだろう」とは思いましたが。もしかしたら、あのナップザックみたいな白い布靴は室内専用で、外を歩くときは、小さな浅沓を履いたのかも知れません…^^;

で、この年齢なので、多分ミズラを結っておっただろう、と言う事で、ミズラをくっつけてみる。

背景は、観光で京都御所に行ったときのケータイ写真の加工です。

…今回は、このあたりで…^^ゞ

深森イラスト習作

これまでにお勉強した装束の知識を元に、制作委員会でアレコレ衣装を組み立てており、今回はエントリのタイミングが遅くなりました(知らない事ばかりだったので、1日がかりでした・汗)

看板キャラに色々着せてみた習作(=ちょっと自信のある力作=)を、3つ公開です。イラスト担当いわく、描いてみないと分からないことも色々あるし、描いてみてからの方が気が付くことが多かったと言う事で、習作を公開です。

★第1の習作は、有名な架空の人物キャラ風。

毛が無かったり(=禿げているわけでは無い=)、ピースしていたりするのはご愛敬。うむ。束帯に似てるけど、これは布袴(ほうこ)ですね。

※「笏」の漢字が間違ってるッ…^^;;;;;;;;;;;;;

…それにしても、至高の冠をしげしげと観察してみて、大人しくて目立ちたがりでは無い普通の男性の場合、至高の地位と言うのは、結構ゴウモンに近かったのでは無かろうか…と、想像してしまったのでありました…^^;;

★第2の習作は、若い女性に見立てて細長を描いてみたもの。

ウサちゃんなのは「ウサギ年」という事で、ご愛敬。

イラスト担当いわく、「細長って本当に細長かったのね」との弁。着物の帯として、細長の帯を締めるということが、普通に行なわれていた筈、と想像。この時代には珍しく、スッキリした雰囲気の装束だったのでは無かろうか…

これはイラスト担当氏の考察なのですが、細長というのは、おそらく、宮廷出仕の可能性があろう若い女性向けに、裳唐衣(=十二単=)スタイルの練習バージョンとして活用されていたんではあるまいか…

と言うのは、裳の扱いというのは、実際はかなり大変らしいのです。

イラスト担当氏いわく、自分では裳を着用した事が無いので、バスタオルを腰に結び付けて、ある程度立ち回ってみた結果という事で…(=大きなタイプのバスタオルは、幅も長さもあるので、裳に見立てることが出来る=)

立ち居振る舞いで、正式の長袴と一緒に、長い長い裳をさばくのは、かなり大変だった筈。相当練習しないと、いざと言うときに優雅にさばけないし、クルリと方向転換したときに裳を踏みつけて転んだりする可能性があるらしい…^^;;;

※実際に、自分も、裳に見立てた掛け布団(薄物)でこけて、青あざを作ったというのがあるので、一応リアルな可能性ではあるのですね。でもお蔭サマで、裳が実際にどのようにさばかれていたのか?を想像出来たような。これは後の物語の場面で、美しい姫君と一緒に、ドラマチックに演出してみたいと思います。

御所が火事になった時などは、家財道具を抱いて逃げるのも一苦労だったのでは無かろうか…と、昔の女性に同情してしまいました。

★第3の習作は十二単で、かぐや姫サマ風。

紅の表着に、「萌黄の匂い」風の五衣に、赤い単に、紫の袴と、ブルーのパターン模様っぽいのを入れた裳(唐衣はイラスト習作の都合上、省略。この感じだと多分、紫か白の唐衣が合いそうです)。

紅(赤系統のカラー)が入ると華やかになる、と言うのがよく理解できた…とイラスト担当氏の弁。

能衣装のジャンルで、うら若い女性を表現する場合は「紅入り(いろいり)」の衣装を使う、年のいった女性を表現する場合は「紅無し(いろなし)」の衣装を使う…というのがあって、赤系統カラーの有無が、役柄の演出方法を選ぶ上で重要な区別になっているそうですが、このたびの習作で、「なるほど」と納得したものでありました…^^;

昔は、「赤(紅)=色」というくらい、濃い赤系統の色は目立つものであったらしいです。

紅の色に関わる詩歌と言えば、万葉集の歌が連想されます*^^*

  • 春の苑-紅にほふ-桃の花-下照る道に-出で立つ乙女・・・(万葉集19巻4139-大伴家持)
  • 物思(も)はず-道行く行くも-青山を-ふりさけ見れば-つつじ花-匂え娘子(をとめ)-桜花-栄え娘子-汝れをぞも-我に寄すといふ-我をもぞ-汝れに寄すといふ-荒山も-人し寄すれば-寄そるとぞいふ-汝が心ゆめ・・・(万葉集13巻3309-柿本人麻呂)