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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

アイルランド民謡「詩人トマス」

サンザシやイバラが小暗く茂る
 かなたに細い道が見えるでしょう?
たずね行く人は稀だけれど
あれこそは正義の小道。

そしてかなたのユリの花咲く野原をよぎる
 広い、広い道が見えるでしょう?
天国への道と呼ぶ人もいるけれど
 あれこそは邪悪の道。

そしてまた、シダの茂るあの丘を巡って
 美しい道が見えるでしょう?
あれこそは、今宵あなたとわたしがともに行く
美しい妖精国への道なのです。

―アイルランド民謡「詩人(うたびと)トマス」より

※トマス=13世紀ごろのスコットランドの預言者、詩人。妖精の国の女王に愛されて、妖精国に滞在、預言の能力を得たという。


妖精国の魔法は魔法のための魔法ではない。魔法の効き目が大事なのだ。たとえば人間のもっとも深い願望を満足させること。時空の底知れない深みを知りたいとか、あとで述べるように人間以外の生きものと話したいという願い。機械や魔法を使っても使わなくてもいいが、そのような願いをうまく満たしているかどうかが、妖精物語としての良さと味わいの決め手になるのである。

わたしが、旅人の物語の次に除外したい、あるいは規定外としたいのは、夢物語だ。不思議な出来事ははっきりとあるのに、それは人が眠っていて見た夢だったと説明するような夢の仕掛けを利用した話はすべて規定外だ。たとえその夢の話が妖精物語の諸条件を満たしている場合でも、わたしはどうしようもない欠陥品だと断じたい。不細工な額縁がせっかくのよい絵をだいなしにしているようなものだからだ。

たしかに夢は妖精国と無関係ではない。夢のなかでは人の不思議な力が解放される。ほんの一瞬、人は妖精国の魔力を持つことがある。すると物語が生まれ、形や色が生命を帯びて目に見える。実際に眠っていて見る夢がまるで魔法のようにそのままうまく妖精物語になることがある。しかしちゃんと目を覚ましている物語の作者が、この話は睡眠中に夢見ただけのものです、などといったら、それは妖精国の核心にある願い、(夢をつぶぎだした人の心とはまた別に)夢に見た不思議な世界が本物であってほしいと願う人の深い思いを、わざわざごまかすことになるではないか。

妖精が人間に幻覚や幻想(ファンタジー)を与えてだますという(嘘かまことかわからない)報告がたくさんあるが、これは人間の夢とは越に、妖精側の問題である。たしかに妖精にだまされたという物語はあっても、物語のなかに限りこの妖精自身は本物であって幻覚ではない。そしてこのような想像の背後に、実は人間の思いや意図とは別の、真の意思と力が存在するのである。

ともあれ、本物の妖精物語は、くだらない目的で作られた夢物語とはっきり違っていて、大事なのは、それがほんとうのこととして示されることである。(後略)

物語作者は、読者の心が入って行ける〈第二世界〉を創った。作者が物語ることは、その世界の法則に照らす限り「ほんとう」なのだ。読者はその世界の内側にいる限り、その世界がほんとうだと信じる。「不信」が頭をもたげたとたん、呪文は解ける、というより、芸術という魔法は失敗したのである。読者は再び第一世界に戻って、外側から、失敗に終わったちっぽけな第二世界を眺めることになる。

『妖精物語の国へ』J.R.R.トールキン、杉山洋子・訳(ちくま文庫2003年)

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制作プロットのメモ「東奔西走」

第二部タタシマ@第十章「東奔西走」プロット

日付は全てストーリー上の架空の旧暦のもの

■08/30■

カモさんからの情報連携の緊急の文書を預かった渡辺津のベテランの船長、渡辺津へ到着。大沢加湾では先着の物流の船が入っているが、船長は渡辺津の重要メンバーとして、割り込み権を発動。他の船がコースを譲る。

同時に到着した物流の船の中に、坂崎一家が乗り込んだ船があった。瀬都も柚羅と共に同乗し、大阪湾の賑やかなラッシュ状況を見物。坂崎一家を乗せていた物流の船の船長は、残念なことに、渡辺津の重要メンバーでは無いため、ベテラン船長にコースを譲る形に。ベテラン船長の操舵技術に感心して見せる。

坂崎一家、ようやく下船し、港町を歩いて、丸頭の僧形商人(無欲庵の仲間)の詰めている番屋を目指す。以前の海賊襲撃(正体は欠き眉)によって港町は破壊されており、その後、新しく建て替えられた部分が多いため、多少の記憶のある瀬都も戸惑い。人に道を聞き、番屋へ。

丸頭の僧形商人(無欲庵の仲間)の詰めている番屋の前で、坂崎一行と、先着していたベテラン船長から派遣された飛脚とが、出会い頭に衝突事故。柚羅と瀬都が運悪く、身体が小さかったので衝撃をまともに食らい、掘割のドブの中へ沈没。周りの人々が驚き慌てながら、協力して引き上げる。

坂崎一行とベテラン船長、仕切り直し、丸頭商人の道連れとなって伏見稲荷の常陸宮邸へ直行。

常陸宮、ビックリしながらも歓迎。夕星御前たちが柚羅と瀬都がドブまみれな状態であるので、さっそく風呂に入れて洗濯するなど世話。着物のほうは、ドブで使い物にならないので、燃料などとして燃やすしかない。早速、風呂などの燃料に。

常陸宮は、ベテラン船長からの報告を面白おかしく聞き&銅鐸盗難事件の深刻な要点を分析。呪術を知る忍者たちを、鈴鹿峠~坂下宿へ派遣して状況を見る必要あり、急遽、派遣。ついでに、瀬都が伊勢暴動の際の怪異な星の呪術に巻き込まれた中心人物と察知、こちらも注意深く観察。

瀬都は風呂に入れられた際、夕星御前や召使女たちに裸を見られた。身体には、雪森郷事件で受けた、大きな呪術による傷がある。色の濃いアザという感じの、ぞっとするような傷痕。あとで、召使女が常陸宮にそっと教える。常陸宮「興味深い!」と、ますます瀬都に注目。

夕食の後、柚羅と瀬都は、好奇心でもって、常陸宮の不思議なコレクションをそっと見て回る。海外から持ち込まれた古代趣味の神像などの不思議な品々。エジプト・セト神につながる文物も。豹神について改めて話題。

坂崎一家を改めてコレクション部屋に招待。常陸宮、ベテラン船長、居合わせた鹿深氏、無欲庵の全員で、伊勢暴動や朝熊山の騒動の際の怪異な現象について、坂崎一家から詳しく聞き取り、興味深く分析。

深夜、瀬都、大きな夢遊病を久し振りに発生。

■09/01■

未明、近畿地方一帯に、怪異な地震。大きな流星「アマツキツネ?」と騒ぎに。

夢遊病を発した瀬都、注意のため、柚羅と手首どうしでつないでいた紐を引っ張り、歩き出す。柚羅、引きずられながらも「夢遊病」と気付く。瀬都を止めようとするが、できない。屋敷の者を起こすべく、柚羅、大声で騒ぎだす。

瀬都、なにかに導かれるままに柚羅を引きずりつつ、池の前まで来ると、水の上を歩き始める。怪異な現象。そこに、常陸宮や鹿深氏、無欲庵、ベテラン船長たちが来て、目撃して仰天。

正確に新月の刻。夕星御前が、怪異な現象にも対応できる特別な薙刀(五瀬の刃)を持ち出し、池に入る。程なくして、不思議なポーズ(天へ向けて祈る姿勢)をとる瀬都と対峙。

夕星御前、気配の切れ目を見出し、薙刀を振るう。タッチの差で、瀬都の着物を斬り飛ばす羽目になったが、みごと、邪気調伏。邪気が切れたため、瀬都の身体は浮遊する力を失い、柚羅を巻き込みつつ、池へざぶんと落ちる。

2人の少女を池の中から救出。ベテラン船長、瀬都が何かを持っていたことに気付き、池の中を探る。すぐにブツが見つかる。コレクション部屋の中にあった、怪異なセト神像。

セト神像は、変形していた。豹神像そのもの。有翼の豹神の像、紫金の翼。

柚羅と瀬都はそろって発熱で寝込む、水の上を歩いていた事は覚えていない。坂崎父兄は、翌日09/01には上京して諸々の手続きを済ませる必要があり、無欲庵に少女たちのお世話を依頼して出発する形になる。

夜明け前、常陸宮、鹿深氏、無欲庵、ベテラン船長、夕星御前で、取り急ぎ、検討会議。有翼の豹神の変形像の謎について。瀬都の姿勢は「オランテ」と呼ばれる古い祈りポーズ。現人神に関わる何かか、という議論になる。

(時間をさかのぼる)

鈴鹿峠~坂下宿。坂下宿の廃寺にあった本来の像は、紫銅の行列によって交換されていた。豹トーテムと思われる、動物の豹の像。

近畿地方の一帯が怪異な地震で揺れた瞬間、坂下宿の廃寺の像が爆発現象を起こして変形、同じくらいの大きさの有翼の豹神像になる。(瀬都が持っていた変形像と完全な相似)

目撃者となったヤマイヌの忍者たち、そろって仰天。豹神像はとても頑丈で、かつてのオリハルコン金属みたいに、魔性を切る五瀬の刃でもっても、歯が立たない。動かそうとしても、最大最強の安置の術が掛かっているため、動かせない。ユツ・イオツ魔法陣の基点として固定されたのは明らか。

明け方、ヤマイヌの忍者たち、急遽、常陸宮へ報告のため伏見へ。伏見稲荷の界隈に到着したところで、坂崎の父兄と行き逢う。2人の少女たちが居ない事で首を傾げるが、すぐに事情を察する。

常陸宮、鈴鹿峠からの報告を受けて、同席していた鹿深氏や無欲庵と共に仰天。ベテラン船長に、怪異事件の概要をまとめた文書を託し、カモさんへ送り届けるよう依頼。ベテラン船長も、連続する怪異でハッスルしており、即刻、承知。

(舞台の変更、時間もさかのぼる)

未明、近畿地方の一帯で地震、揺れは淡路島でも大きく感じる。夜空に大きな流星アマツキツネが流れ、カモさん一行、いぶかしむ。特別な現象「星下り」に気付く。カモさん一行、夜中ではあるが急遽、出発、星下りを追う。

近くに、イザナギ神宮がある。ほどなくして、その門前町に入る。元々、翌朝の早い頃に、この界隈へ入る予定だったので、距離は近い。

イザナギ神宮の門前町は夜も明るく、多くの活動がある。やがて、カモさんの目当ての家に到着する。五瀬の刃を鍛錬する刀鍛冶の家。この刀鍛冶もまた、鏡さんと同じ「金目(カナメ)」の異能を持っていた。

漫才コント応酬でもめた後、カモさんと刀鍛冶、話し合う。星下りについて追及。刀鍛冶、しぶしぶながら、星下りにバッチリ気付いていた事を白状、その現場へ案内する。イザナギ神宮の近くに現場がある。

刀鍛冶の本名は「五瀬(イツセ)・織姫(オリヒメ)」(女性の名前)なので、本人はコンプレックスがある。「織姫」は、刀の銘としては刻みにくい。そのことで、再び漫才コント。

カモさん、現場調査の末、真相に気付く。刀鍛冶が「星下り」の星を隠し持っている。しばらく、また漫才コントした後、刀鍛冶の家に戻る。

刀鍛冶がマッドサイエンティスト根性を発揮して、紫銅の伝説の武器に対抗できる薙刀を研究のため制作していた。星下りの星は、その薙刀の上に隠されていたため、薙刀の刃の金属と同化、薙刀の刃を、神話伝説にしかない特別な金属に換えていた。天下取りも狙える武器。星の錬金術。

鏡さんは薙刀を眺め、刀鍛冶と同じように、色々と不思議な特徴に気付く。この薙刀を扱えるのは忍者ハイタカではないかと意見。カモさん納得、イオに、ハイタカへの運搬を任せる。

■09/02■

星下りの特殊事情により、しばらく、刀鍛冶の家に滞在。その間、刀鍛冶の家事を手伝ったりしながら、特別な金属を奪いに来る勢力が無いかどうか、警戒。刀鍛冶は、魔性を祓う武器を作っているだけあって、怪異に対して常人より理解がある。カモさんと漫才コント。

欠き眉の勢力が来ない事を確認。イオは、ふと小耳に挟んだ内容が気になり、鉄と水銀の関係について鏡さんに質問。鏡さんも金属の専門家なので、正確に答えられる。「鉄は水銀に溶けない」=水星・水銀(合金~金融~融解/神話の交錯で生じる)呪術や妖異の現象に対して重要な示唆。

■09/03■

刀鍛冶の家を出発し淡路島を南下~門崎へ到着。聖麻のゴタゴタで居の津が危うくなった鏡さんの父親が、都で保護された後、門崎の村の小屋に移され生活している。

鏡さんの父親=鏡麿呂。小屋の中で情報交換。今までの旅の話など。

鏡父の話=05/16朝、息子の出奔に気付いて呆然だった。聖麻の私兵がうろついて身の危険を感じた。忍者の器物屋に連れ出され、都の小さい路地に潜伏、ひっそりと鏡研磨の仕事を請け負いつつ生計を立てていた。七夕を過ぎた頃、聖麻鏡を、器物屋が持って来てビックリした。(鏡さんが伊勢で朝ノ君に依頼していた内容)

鏡父の話=つづき=鏡父は、聖麻鏡の修復状態を観察し、息子の仕事だとすぐに分かり、感心。聖麻王国の国宝でもあった神鏡なので、これを聖麻氏に持って行けば、息子に対する妙な嫌疑なども晴れるのではと思い、聖麻王子のユカルに連絡を取った。

鏡父の話=つづき=だが、事情はすっかり変わっており、逆に鏡父は居場所をつかまれ、聖麻の私兵に始末されるという状況になっていた。直前に器物屋が気付き、無事に救出された。その後、鏡父は本当に恐ろしく思い、ここ淡路島の門崎でひっそりと暮らしていた。なお、聖麻王子のユカルは、向こうでは、国宝の神鏡を取り戻した英雄として扱われているようだ。

鏡父の話が終わる。色々と複雑な気持ちになったが、聖麻の前王が生きていた頃とは全く変わってしまったのだという事で、皆で納得する。

カモさんが、聖麻の闇について解説。その闇が、鏡母の死をもたらしたと推理。雨竜島経由で入って来た財宝でいっぱいだった蔵があり、それは、よろしくない呪術も含むため、機密扱いだった。鏡母は、偶然にも蔵を開いて秘密を知ってしまい、口封じで殺されたのではないかと言う推理。よって、聖麻王室としては、鏡一家に全滅していて欲しいのが本心。

なお、都で鏡父が隠れ住んでいた路地裏の方は、忍者の工作が入っていて、鏡父の死体の替え玉が用意されていたので、しばらくは誤魔化せる。当分の間は安全な筈。

ここまで説明して、カモさんは、鏡父子に「これから、どうしたいのか、父子でよく相談して決めてほしい」と推奨。どのような結論になっても、ヤツマタとしては、その決断を尊重する。

改めて、カモさんと鏡父で、海岸に出て、ゆっくりと考えながら話。鏡父、今までは上層部に言われるままに動いて来た身なので、すぐには思考パターンを変えられず。

カモさん「権力の庇護のもと、家業に集中して打ち込める時代は終わっている。自分で世間をよく見聞きして、自分でどうしたいのか、対応を決める必要がある」と指摘、教授。鏡父、「どうするのか」ではなく「どうしたいのか」について、違和感を覚えるが、考えてみると返す。

やがて夜になる。海に近く、鳴門の渦潮の音が響く。鏡さんは初めて聞くのでビックリ。鏡父も、最初の時はビックリしたと答える。就寝。

■09/04■

淡路島、門崎の海岸。鏡父子、早朝の散歩。偶然ながら、この日は鏡母の月命日。

門崎から鳴門海峡の方向を眺める。対岸に四国の大地。

鏡父、持っていた巻物を息子に見せて、聖麻鏡について詳しい説明をする。神鏡とされるのは、反射パターンに緻密な細工があって、時代によって不思議な反射像を見せるため。

代々の鏡職人としては、国宝の神鏡を平常状態に保つ必要があり、鏡研磨の際にひと手間入れる必要があった。だが、鏡は、それを知らずに「正確に」修復したため、異例状態で現れる、特別な神意を受けた反射像が現れた。幾何学的で、広げられた両翼の形。呪術者が見るなら、「押し羽振る」と表現するパターン。

(伏線が入る:この幾何学的な両翼の反射像は、有翼の豹神の像に生えた翼と相似)

■■■【第二部タタシマ】ここで終了する。【第三部マレヒト】へ続く。

制作プロットのメモ「八重潮」

第二部タタシマ@第九章「八重潮」プロット

日付は全てストーリー上の架空の旧暦のもの

■08/27■

叡都王、京極家へ戻っていた明日香姫へ、贈り物を持った使者を届ける。その贈り物は、大尊教の施設の宝の山から出て来た一部で、土佐産の高級カツオブシ。使者が帰って行った後、ひっそりと見張っていたネコマタ・ハイネが、ついに我慢できなくなり、カツオブシに飛びつく。

カツオブシの包み紙に、四国の方で盛り上がっている神学論争の論文内容が記載されてあった、ほか、豹尾神の御札も混じっている。欠き眉が目指しているモノっぽい(実際に、欠き眉の通称が「欠き眉の豹」で、海外・大陸の豹トーテム異民族であろうか、と推測されている)

ネコマタ・ハイネの相棒を務めるタスキ、明日香姫に今後の方針の説明。除目の結果、坂崎柚羅の父親と兄が、宮廷へ配属と言う形になったので、柚羅と瀬都が上京して来る。必要があれば、2人を女童として使う。侍女・峰のアシスタントとしても。(妙に呪術に対抗できる人材なので)

坂崎尚房(柚羅の父)=図書寮の部長クラス、坂崎尚通(柚羅の兄)=図書寮スタッフ(史生)。坂崎家の住居については、カモさんの方で援助。

深夜~綾敷太政大臣の内閣が解散。総辞職。菊理宮は役職維持。その息子・御影王は、政争の結果に不満。父親に食って掛かるが、たしなめられる。前・太政大臣の綾敷老人が「菊理宮と同じくらい短気じゃのう」と面白がる。

賀茂大納言=カモさん、業務整理や引継ぎを済ませて帰宅。カモ邸では、お抱えの忍者たちタスキや亮、ネコマタ・ハイネが既に旅立ちの準備を済ませ、先に出発している。訳知り顔の澄江御前「悪い結果では無かったようね」と理解を見せる。

■08/28■

鳩屋敷の政権がスタート。鳩屋敷太政大臣。鳩屋敷邸にて、初日、除目確定の宴が行なわれる。不破縄将軍も昇進していて、列席。

鳩屋敷顕貴=太政大臣、鳩屋敷顕輝=中納言、聖麻王=次官から長官へ昇進、叡都王の教育を務めていた成城氏=右大臣、白川家当主=中納言据え置き、不破縄将軍=内大臣、叡都王は親王宣下の予定。

伏見・常陸宮邸では、昨夜、武者修行で滞在中の忍者ハイタカと、常陸宮の侍女・夕星御前の間で訳あり。早朝のカラスの文使いがあり、鳩屋敷政権が発足した旨、知らされる。鏡さん「急な変化だ」と驚く。まだ頭が付いて行かない。

鳩屋敷の宴会の方では、綾敷老人が忍者の犬上と共に、出入りの清掃業者にまぎれて事情を窺う(綾敷老人は太政大臣だったが、元々、活動的な面白い老人)。

菊理宮邸では、御影王が、母親に婚約話を振られ、意中の姫の存在などを突っ込まれて、従者の良基と共にアタフタ。

■08/29■

御影王と良基、早朝の早駆け(乗馬)。途中でカモさんと行き逢い、そのまま旅立ち。御影王の持つ「甕星(ミカボシ)」としての霊威が、今回の旅では必要になる見込み。鹿深氏と分岐の所で合流、共に伏見稲荷の常陸宮邸へ。

伏見稲荷・常陸宮邸へ到着。忍者ハイタカは、大げさに包帯を巻いている(得体の知れない武者修行で満身創痍)。カモさんたち、ビックリ。鏡さんの方でも、夕星御前の薙刀のシゴキがすごかったという理解。

夕方から出発、伏見の桟橋に向かい、淀川の上流から下流へ川下り、大阪湾へ向かう。船頭は無欲庵の仲間の僧形商人が務める。

常陸宮、夕星御前、無欲庵、伏見稲荷の界隈の街道で、カモさん一行を見送り。夕星御前、ひそかに忍者ハイタカに思いを寄せて道中安全の歌を作っていたが、イタズラな文使いのカラスがそれをつかみ、うっかり落とす。常陸宮に見つかる。紙が破れてしまったので、常陸宮が直筆で書き直し。(夕星御前の歌の技量に感心したので、雇い主としての好意で)

夜が更け、淀川下りが進む。大阪湾=渡辺津の方では真夜中0:03頃に最大干潮となり、下りやすい。その後、満潮になるので、新しい船が港へ入り、停泊。次の干潮に合わせて出港するので、それまで待機。カラスの文使いが届き、常陸宮の道中安全の歌に皆で首をひねる。女歌っぽいので。

■08/30■

未明、船出を待つ間の宿で、カモさんと鏡さんの会話。瀬戸内海の事など。渡辺津へ船が次々入港しているのが見える。

夜明け、干潮が始まり、船が出港し始める。カモさん一行の渡航を担当するのは、荒事や妖異事件の扱いにも慣れているベテランの愉快な船長。伊勢の津の港の方でもお世話になっていたので、思わぬ再会となる。

タイミングの都合で明石海峡は荒れていたが、ベテランの船長は波の速度をつかみ、難なくこなす。ほぼ船長の見込んだタイミング、正午の頃、淡路島へ到着(松帆の浦)。
※08:00~09:00ごろに明石海峡を横断するのが早いのか?この辺りは良く分からないのでゴリ押しで、そのまま清書!

松帆の浦の市場(広場)には古い祠があり、そこに出土した古代の銅鐸が祀られているという話で、鏡さんは興味を持って、祠に近づいて見てみる。ところが、めぼしい大型の銅鐸は全て紛失しており、小さい銅鐸しか残っていない。

ほぼすべての銅鐸が失せた状態なので、船長が仰天して騒ぐ。カモさん「国家を揺るがす一大事」と検討。船長はカモさんが考古学に詳しいので、ついでに銅鐸のミステリー含めて詰め寄る。古代の銅鐸を使った国家を成立させる魔法陣の説明あり(仮説>大量の銅鐸を地下に埋めるのは?出雲の例など)。

残されていた小さい銅鐸を、鏡さん、持ち前の金目衆(カナメ)としての異能で、素材を読み取る。古代にはオリハルコンとも呼ばれた、理想的な配合比率の硬質&高品質な青銅。製造された当時は、伝説のとおり、黄金よりもまばゆく輝いていた筈。

やがて鏡さん、記憶に気付く。坂下宿の廃寺の謎の銅像も、同じ金属で作られていた。カモさん、鏡さんの眼力に感心する。ともあれ、銅鐸の紛失(盗難の疑いもあり)については、常陸宮にすぐに知らせる必要があり、船長に注文。船長「トップクラスの皇族じゃねえか」と驚きながらも承知。

次の潮流に合わせて、船長たち、淡路島・松帆の浦を出港し、渡辺津へ戻る。カモさん一行、淡路島に留まり、それを見送る。

しばらく歩き、旅人イオと合流。日没の頃、宿泊予定の一時の宿へ落ち着く。ちょうど収穫期にあたっており、稲刈り労働を提供しながら渡る労働者たちが、相当数、宿泊している。簡易な宿でゴザの上に雑魚寝というような状況だが、御影王と良基は伊勢暴動などで、すごく鍛えられたので、あまり気にならない。(夜もあまり寒くない季節)

夕食しながら、古代の銅鐸が関わる魔法陣「ユツ・イオツ」について少し検討。イオの疑念など。朝熊山で交わされた謎の会話とつながる部分あると指摘。(伊勢暴動~熊野の神託~那智滝事件から出ている伏線をつなぐ)

(場面変換、舞台は都、深夜)

廃太子・叡仁王の邸宅。別荘と言うような簡易な邸宅だが充分に大規模で、召使が相当数。「殺生石の女」と噂されている胡蝶公主すなわち胡蝶御前が、叡仁王をたぶからしつつ、自身の手先・工作員と共に滞在している。大銭屋も、胡蝶御前の有力な手先。

胡蝶御前(絶世の美女)は、さながら西洋の天使のように羽が生えている。羽人。古代には鳥巫とも呼ばれていた異能の人々。実は、イオも同じ=祖先が鳥巫、羽人。

胡蝶御前は、大陸に居た頃(胡蝶公主だった頃)と同じように、手下たちの間で、巫王として絶大な権力を振るう立場。裏の光連衆の真の教祖。表の教祖は、伊勢暴動に関わっていた天角と呼ばれる男。現在は、伊勢道での呪術の返り討ちを食らって片目になっているところ(タスキと亮・当時はカロウが、初の一騎打ちをしたときに、呪術の返り討ちがあった)。

那智滝の妖異事件で、こちらの事情が、相当にカモさん一行のほうに知られたのは大いなるミスとして、胡蝶御前は、天角の責任を追及・弾劾する。(欠き眉の勢力は、胡蝶御前に対してさほど忠実では無い、と知られるのは意外にマズイ。隙を突かれるため)

胡蝶御前、大陸の強力な呪術でもって、天角を始末。周りに居た部下たちは、あらためて胡蝶御前の霊威を恐れ、忠誠を誓う。