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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

古代ヨーロッパ考・補遺篇

《歴史の断層を駆け抜けた物語》

――あとは、当方の趣味で、アレクサンドロス大王のその後、物語世界への波及について

アレクサンダー・ロマンスと言う、巨大な物語群が生まれました。

「アレクサンダー・ロマンス(アレクサンドロス大王伝説)」は、当時としては世界最大の流布エリアを達成した物語群で、加筆・改ざん・牽強付会・誤訳を経て、1400年もの間、ヨーロッパ・アフリカ・中近東イスラム世界・東南アジアの24ヶ国語、80種以上(別説:35ヶ国語、~200種)にわたる空想的・夢幻的な伝奇物語群となりました。

アレクサンダー・ロマンスのネタ本は、3世紀のアレクサンドリアで流布した大衆本です。偽カリステネス(御用史家ということだが、実在しない人物。)の「マケドニア人アレクサンドロスの生涯」(現在は紛失)。

ちなみに、無頭人の国とか、巨人の国とか、託宣する双樹とか、『ハリー・ポッター』もビックリのオカルト・ファンタジー要素満載。

現存する最古の写本はアルメニア語、5世紀後半。最後の訳本はアラム語~トルコ語訳、17世紀後半。

中世ヨーロッパにおいては、アレクサンドロス大王は、騎士、宣教師、神の啓示の英雄、求道家、占星家、錬金術師などの姿で語られています。

中近東バージョンでは、ユダヤ教徒あるいはイスラムの戦士となっており、エルサレムやメッカに巡礼し、凶族ゴグ・マゴグ討伐に出向くというシナリオも。

コーランもアレクサンドロス大王をドゥルナルカイン(双角の人)と讃えており、イスラムの宣教者というシナリオ・バージョンさえもあるのです。

双角の人、という表現は、当時流行していた牡牛信仰が下敷きになっているそうです。コーラン以前のアラブも、多神教・偶像崇拝の彩り豊かな世界で、面白いのです

ゾロアスター教・ミトラ教もまた、牡牛信仰としての側面を持っていたそうです。これは星辰(ゾディアック)信仰とのからみで、金牛宮の時代(?)だったという話も…ちなみに、ちょっと前までは白羊宮&双魚宮の時代でしたが、現在は宝瓶宮の時代に突入中だそうです。(ここはオカルトです。)

中世ペルシア詩人ニザーミー(1141~1209年)著、「イスカンダル・ナーメ(アレクサンドロスの書)」では、彼はついにチベットを越えて、中国に押し寄せるまでに及ぶ……

以上、こんなに多くの伝奇的なエピソードを世界中に振りまいた人は余りいないので、調べていてビックリものでありました。(中国の歴史逸話集にも、「これってアレクサンダー・ロマンスの焼き直しでしょ」というようなお話が結構入っています。

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