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制作日誌/深森の帝國

〝認識が言語を予感するように、言語は認識を想起する〟・・・ヘルダーリン(ドイツ詩人)

リーメンシュナイダー小話

★ティルマン・リーメンシュナイダーという中世ドイツの神秘主義彫刻家★

ヨーロッパ中世の神秘思想を論じた各種文献をつらつらとめくっていると、気になる名前に出会いました。

中世ドイツの彫刻家、ティルマン・リーメンシュナイダー(1460-1531)。

彼は神秘主義に生きた芸術家であり、彼の彫刻はいずれも、深い観照の体験から来る稀有の完成度に達している作品なのである…と、評価されています。ロマンチック街道沿いに多くの作品を残しておられるそうです。

特にリーメンシュナイダーの神秘主義思考がよく表現されているといわれる作品が、「ロザリオの中のマリア(薔薇の花冠の中のマリア)」と呼ばれる作品だという事です。

ドイツ語では多分、「Maria im Rosenkrantz」と綴られている作品。この作品で扱われている薔薇の象徴性は、うっすらと、錬金術的-宇宙思想における薔薇の象徴性とも、微妙につながっているような…という気配が感じられるのだとか…^^

ちょっと驚いたのが、あの井筒俊彦氏が、中世ヨーロッパの神秘思想にも踏み込んで論じておられる事でした。

今後の勉強のために、気になるくだりをメモ:

〝歴史的概念としての《Mystik》は、イオニアの自然体験および密儀宗教に端を発するヘレニズムと、旧約聖書に端を発するヘブライズムの二大宗教思潮が基督教を通じて相合流し、中世カトリック教会の盛時を経て近世に入り、ついに16世紀スペインのカルメル会的神秘主義に到って絶頂に達する観照精神の長くかつ複雑な伝統である〟

呪術的・魔術的な色彩はむしろ、神秘主義そのものにとっては邪道であるらしいのですね^^;

〝・・・西欧の神秘主義に関する限り、プラトニズムはギリシアにおいてはついに完結せず、かえって基督教の観照主義によって真に窮極の境地にまで到達するものである・・・〟

…もし、こういったものが西洋人のミスティックの伝統だったのであれば、今の魔術的色彩の濃い西洋文明のありさまは、いったいどういう訳であるのか…はなはだ疑問に思えてまいります。

この辺りは、自分でも整理しきれていませんし、大した結論は出せておりませんが…;^^ゞ

(ご紹介)アムゼルくんの世界(Die Welt des Amselchens)-2010.1.25エントリ「内と外」に、リーメンシュナイダーの弟子と言われている人の、彫刻作品の写真が載っています。リーメンシュナイダーの芸風がよく継承されていると思います…^^

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